姉弟日和

我妻 夕希子

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第4話・手操る思案②

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「どうして、あんな事をしたの?」

帰り道、姉さんは一言だけ俺に問い掛けてきた。

「…今日は、俺にとって大事な日だったから」

姉さんは黙っている。

「一緒に帰ろうって言ったのは、姉さんじゃないか…」

ボソリと呟いた俺の文句を、姉さんは黙って聞いていた。



*****



自宅に着くと姉さんは、振り返る事なく急ぎ早く自室へと向かってしまった。

「はぁ…」

(ーーー怒ってる)

姉さんは凄く怒ってる。

そんなに〝依くん〟が大事か?

〝依くん〟じゃなきゃダメなのか?

玄関で靴も脱がずに立ち尽くしていると、階段をタンタンタンッと降りて来る音がした。

「唯衣!いつまでそんな所にいるのよ!」

俺の前には、私服に着替え終わった姉さんが立っていた。

「……」
「はぁ…わかった、わかったわよ」

姉さんが一歩、俺に近付く。

「今日のは姉さんが悪かったわ」

ぎゅっと抱き締めると、子供を様に俺の頭を撫でる。

「だから、そんな悲しい顔をしないで」

その時、自分が泣きそうな顔をしていたのだと気付いた。

「だって…」
「はいはい、ごめんって」
「俺より、依くん選ぼうとした」
「あんた、何歳よ」
「…16…歳」

「もう」と姉さんは呆れるも、俺を撫でる手は止めない。

「いい加減、姉離れしなさいね」

姉さんの言葉が刃となり俺を刺す。

〝姉離れ〟?

ーー姉さん、それは出来ないよ。


「姉さん、ありがとう、着替えて来る」

そう言いながら、姉さんから離れると靴を脱いで、階段を上った。


自室へと入ると、真新しい制服を脱いでハンガーへと掛ける。

部屋着に着替えた後、ベッドに横たわった。


(アレが依くん、あの男が)





先程の男が脳裏に過ぎる。

チラリとしか見ていなかったが、黒髪の男は、穏やかそうで、そしていてそうな感じであった。


(あと、悔しいけど俺より身長は高い…)


どうやって姉さんを奪うかを考えていた時だった。

「ねぇ!唯衣!唯衣!!」

姉さんがノックもせずにドアを開けて入ってきた。

「姉さん…ノックくらいしなよ」
「そんな事より!早速、#理玖____#ちゃんから連絡が来たのよ!」
「ーーは?」

時間が止まる音がした。


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