姉弟日和

我妻 夕希子

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閑話/風邪を引いた日

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とある日曜日。

ピピッと鳴る体温計の数値を見る。

(38.5度…はぁ、やっぱりか)

俺は全身が鉛のように重く感じた事に納得した。

風邪だな…。

具合の悪さに吐き気を感じる。

ーーートントン

控え目にドアをノックする音。

「唯衣?」

俺の名前を呼びながら、ドアが開けられる。

「ねぇ、さん」
「起きてこないから、心配してーーーって!唯衣っ」

俺の状態を見ると、姉さんは慌てて駆け寄ってきた。

「風邪引いたかも」
「熱は?」
「38度」
「濡れタオル作ってくる!」

そう言うと姉さんは、足音荒く部屋を出て行った。

暫くして姉さんは、お盆に水が入った器とタオルを乗せて重い空気でやってきた。

「ゴホッ、ね、ぇさん?」
「…お母さんが出掛けちゃっていなかった」

そんな些細な事を、この世の終わりの様に嘆く姉さん。
俺は何となく察すると、姉さんを見ながら呟く。

「俺、1人でも大丈夫だよ」

姉さんの顔が強張る。

「大丈夫だよ!」

お盆を机に置くと俺を見つめる。

「私、頼りないけど、お姉ちゃんだもん!!唯衣の事!ちゃんと!」

「看病出来るよ!!」と胸に手を当て力説する姿に瞳が細まる。

「じゃあ、お願い、

(お姉ちゃん、本当はこんなシガラミを壊してやりたいのに…)

俺は狡い。


姉さんは、持ってきたタオルを濡らすと、キツく絞り俺の額に乗せる。

「冷たくて、気持ちい…」
「後で、おかゆ作ってあげる」

ラグマットを敷いた床に座りながら、姉さんは優しく呟く

そして時折、俺の額からタオルを取ると、水で濡らして絞っては額に乗せるを繰り返してくれた。

額に当たる姉さんの手は凄く

「心地良い…」
「そ?ほら、寝なさい…お姉ちゃんがずっと側にいてあげるから」
「…ん、俺から…離れちゃ、ダメだよ…」

次第に薄れていく意識の中。

「大丈夫よ」

姉さんの優しい声が聞こえてくる。

「姉さん…」

「おやすみなさい、唯衣」


瞼にそっと触れる手に、俺は意識を手放した。

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