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閑話/報酬は君②
しおりを挟む姉さんに送ったメールの内容は至って簡単なモノだ。
『この間、恋人ごっこで入ったカフェのパフェ無料券を貰ったよ』
姉さんからの返信は何故か、直ぐにきた。
『やったーーー!あそこのパフェ大好きーー!よくやったー!我が弟よーーー!』
文面からでも喜んでいるのが良く解る。
その文面を読みながらクスッと笑みが零れた。
『でもね、条件があるんだ…。姉さん、聞いてくれる?』
そろそろ本題に入ろうか…
『えー…条件ってなぁに?』
ほらほら、ちょっと警戒してる
『その券をくれた奴がさ、漫研所属なんだけど…俺達にモデルやって欲しいって言ってきてるんだ』
本題を送ると少しの間が流れた
『モデルって?変なモデルは嫌よ』
姉さんからは不安を露わにした内容のメールが届く。
俺は歪んだ口元を引き締めながら、姉さんに返事を打つ。
『俺達を恋人同士だと思ってるみたいでさ、絡みのモデルをして欲しいんだって』
送信ボタンを押す手を止め、俺は考えた。
(いや、一気に畳み掛けようか)
『ここで、姉弟だってバレたら、もう次から行けなくなるよ?
ねぇ、姉さん、無料券の為に俺と恋人ごっこ、しよ?』
送信ボタンを押す。
姉さんはどう思うかな、俺の文を見て
あぁ早く返信を返して、返して、姉さん。
ブブッとバイブが鳴る。
俺はメールの内容を確認した。
『…わかった』
「ははっ、はは…っ!姉さん!あそこのパフェ大好き過ぎでしょ!」
姉さんからの返信画面を開いたまま、俺は携帯を額に当てると笑った。
きっと苦渋の選択をしたのだろう、その返信を心の底から噛み締めたのだった。
『了解、待ち合わせはいつもの喫茶店で良いかな?友達の家で描くらしいから』
姉さんの気が変わらないうちに話を詰める。
『わかったわ』
姉さんから来た返信を見ると、すかさず近藤の方へと足を運ばせた。
*****
そして先程まで、愛する姉さんは俺に組み敷かれていた。
こんな合法的に姉さんを組み敷けるなんて…!
「にしても、彼女ちゃん、可愛いよねぇ」
珈琲を手に近藤はマジマジと姉さんを見遣る。
「ナンパ?殺すよ?」
「うわ、目が怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い!!」
近藤は苦笑いしながら、姉さんから視線を逸らした。
そして「あ、そうだ」と思い出した様にバッグから〝例の無料券〟を取り出した。
「はい、彼女ちゃん、今日はありがとう」
近藤は笑顔で、その無料券を姉さんに差し出す。
姉さんは瞳をキラキラさせながら、無料券を受け取った。
「近藤くーーーん!!ありがとうーーーー!!嬉しいよぉぉぉ!!」
満面の笑みとは、まさにこの事なのだろう。
「彼女ちゃん、ホントにうちの店のパフェ好きなんだね」
「特にこの間みたいな限定品に目が無いみたいなんだ」
「またやるみたいだから、その時は来てよ、別れてなかったらね、サービスしてあげる」
「別れないよ!!また絶対行く!!」
近藤の言葉に、俺よりも姉さんが先に身を乗り出して息巻いた。
「良かったな、中川、愛されてるじゃん」
「…まぁね、俺も愛してる」
「…!!」
俺のセリフに姉さんは顔を真っ赤に染めた。
「彼女ちゃんは?」
「おい、近藤」
「…好きだよ!当たり前じゃない!じゃなきゃ一緒にいないもん!」
思いも寄らない姉さんのセリフに、俺の目は見開く。
「中川~今の気持ちは?」
茶化す様に近藤が俺の肘を突いた。
「嬉しいに決まってるだろ…」
嬉しい、例えソレが〝姉弟愛〟だとしても。
「へーへー、お熱いですね」
近藤はニヤニヤしながら俺達を交互に見遣った。
「この本が出来たら、2人にプレゼントするからな」
そう嬉しそうに言って見せてくれたラフには小さく〝成人向け〟と記載されていたのは見なかった事にした。
(姉さんには見せれないな)
「楽しみだね」と朗らかに笑う姉さんに相打ちを打つと俺は出された珈琲を口に含んだ。
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