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第5話・歪な鳥籠②
しおりを挟むーーカチャン、とテーブルに温かい紅茶が置かれた。
「どうぞ」
「…です」
久城の口癖で礼を述べるも、出された紅茶に手を付けれずにいた。
「毒なんて、入れてませんよ」
「話がしたい」
「中川さんは、せっかちさんなのです」
久城が一口、紅茶を含んで微笑んだ。
「なんで姉さんに近付くんだ?」
「…お姉様は同じ本のーー」
「違うだろ?」
顔を近付けると、久城の瞳に自分を映させた。
「流石です」
「お前、一体何?」
ーー暫しの沈黙の後、彼女は口を開いた。
「中川さん、自分は貴方と取り引きがしたいのです」
(取り引き?)
「自分には解ります、貴方のお姉様に向けているソレは姉弟愛では有りませんよね」
「ーッ!」
久城の言葉に目を見開く。
「お姉様から連絡が来た時、自分はてっきり〝恋人〟からだと誤認しました。ですが、貴方は…」
紅茶が注がれたカップをテーブルに置く。
「〝姉〟からだと仰いました」
「ぇ、だから?」
震える唇で言葉を紡ぐ。
「どう考えても、オカシイのですよ」
「だから、何が?」
久城は真っ直ぐと俺を見て答えた。
「貴方の、視線は、ソレは、常軌を逸してるのです」
今まで誰にもバレていなかった、姉さんに対する感情を。
久城は、たった1日で見抜いたのだ。
「…は、はは…何言って…」
「中川さん、自分と取り引きをしませんか?」
久城は、ゆっくり立ち上がると寝室に繋がる扉を開けた。
そして再度、俺に問い掛ける。
俺は、俺はーー
開かれた寝室の扉。
俺は、俺は、俺は俺は俺は俺は俺はッッッ!!!
*****
「ただいま」
その日、俺は夕方過ぎに帰宅した。
「唯衣!心配したのよ!」
姉さんが慌てて玄関までやって来る。
「ぁ、ごめん、トモダチと遊んでて…」
「友達?」
「…ん」
「唯衣?なんか元気ーー」
姉さんが手を伸ばして俺の頬に触れようとした時だった。
ーーパシンッ。
「え?」
俺は無意識に姉さんの手を払い退けていた。
「ぇ、あっ!ごめん!姉さん!」
「ぅうん、大丈夫だよ。ちょっとびっくりしちゃったけど」
姉さんは眉を下げながら笑う。
「……ごめん」
そう残して階段を勢い良く上り、自分の部屋に閉じ籠もった。
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