第四の生命体#1 遭遇

岬 実

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Day33ー⑤ インヴィティー

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「ホントホント。現実なんて所詮はこんなもんだ」
『!?』

トワイライトが、ミリエラとマーティンの背後にいつの間にか現れていた。

「もっと言えばーー」

 トワイライトが何かを言い掛けるや否や、2発の銃声が室内に響いた。
 ミリエラとマーティンが振り向き様に、短銃から銃弾を放ったのだ。
 トワイライトを、ミリエラの弾が眉間を、マーティンの弾が心臓を貫いた。
 トワイライトは腰から崩れ落ちて倒れ、薬莢が床を打つ金属音が鳴る。

「敵襲!」

 ミリエラの号令により、職員達が銃を抜いてその場に殺到して来る。加えて、警報が鳴り出した。

「司令室に侵入者在り! 警備の者は急行せよ!」
「例のトワイライトだ! 一度に3人ずつ、遠慮無く弾を撃ち込め!」

 警備を呼ぶ放送の脇で指示を下すミリエラに従い、職員達は自発的に3列に並び、次々に引き金を引いた。
 機銃の様に絶え間無い発砲音が鳴り、トワイライトに弾の雨が降り掛かる。

「リロード!」
「こっちもリロード!」

 弾切れになった職員は順次それを申告し、再装填しながら、素早く列の最後尾に回る。
 それを繰り返していく内に、トワイライトの体は見る見る内にバラバラになり、そして粉々になっていく。
 手足がもげ、腹は裂け、頭が砕ける。
 肉片はひき肉になり、骨は粒と化し、脳や内臓はシェイク状になり、血溜まりさえ焼け焦げる。

「……よし、全員、弾を撃ち切ったな?」

 ミリエラが質問し、総員がそれを肯定する。足元には、擦り下ろされた様なトワイライトの死体。
 だがミリエラは、職員達を死体に近寄らない様に手で払う仕草をする。

「皆、御苦労だった。だが油断するな、全能の超能力だとかだから、まだ生きているかも知れん」
「その通り……」

 ミリエラが視線を下ろすと、既にトワイライトの頭は再生されており、おもむろに宙に浮く。
 その首から下に、飛び散った肉や血が寄り集まり、ものの数秒でトワイライトの体は元に戻った。

「やはり、そう簡単には死なないか」
「そう言う事。しかし、いきなり殺そうとすーー」

 その時、司令室の入口のドアが蹴破られ、各々が大型銃を装備した警備員達が雪崩れ込んで来た。

「ん?」

 トワイライトがそちらに目を向けた瞬間、ミリエラがトワイライトの両膝を撃ち抜く。間髪入れず、マーティンが拳銃の銃把で口元を殴り付けた。
 数本の歯が、血の糸を引いて床に散らばった。

「うぶ……」

 呻いて口を押さえるトワイライトを、ミリエラは指差す。

「コイツを撃ち殺せ!」

 ミリエラとマーティンはトワイライトから飛び退き、すかさず警備員達は散弾銃や突撃銃をトワイライトの脚に連射する。

「おいちょっと、俺の話を聞いて……」

 またしても脚を破壊され跪くトワイライトの訴えにも耳を貸さず、警備員達は撃ち続ける。しかし今回、銃弾はトワイライトの体を素通りするばかりであった。

「撃ち方、やめ!」

 ミリエラの号令で発砲は止み、トワイライトは立ち上がる。

「何か有るとすぐに殺そうとする。軍人てのはいつもこうだ。いい加減にしないと怒るぜ、ホント」
「こっちは既に怒っている」
「落ち着け。それに、俺が興味有るのはデイブレイク兄貴の方だ」
「ミスターに……?」
「そう。中々戦場に出て来ないから迎えに来たのさ。場所は……、娯楽室か……」

 トワイライトはモニターを見る。その映像では、警報が鳴る中ゲームをやり続けるイオタが映っていた。

「彼は民間人だ。危険事には関わらせない」
「いや、人の話を聞かないアンタ等の意見は聞いてない。早速、戦地に招待しよう」

 そう言うと、トワイライトは霧状になって姿を消した。


 その頃、イオタ達はーー。
 立ち上がって警戒するホワイトを尻目に、イオタはゲームに熱中している。
 が、イオタの両肩が若干持ち上がった。

「ん? あれ?」
「どうしました?」

 警戒しているホワイトが、イオタの方を見る。

「何だか、引っ張る力が……」

 異常を訴えるイオタ。その背後の窓が自動的に開いた。

「これは!」

 ホワイトは、イオタの体を押さえ付けるが力及ばず、二人もろとも空を飛び始めた。
 と同時にイオタの衣服と装備も飛来し、夜空を舞うイオタに服が着せられ、武器や通信機器が装着された。

「お、洗濯中だったのが、もう既に乾燥までされてる。こりゃ仕事が早いな」
「言ってる場合ですか!」
 
 行き着いた先は、市役所の屋上。そこでトワイライトが待ち構えていた。

「待ってたぜ、デイブレイク兄貴。戦いたくってウズウズしてたんだ」
「殺す」
「え」

 トワイライトが返事をするより早く、イオタは眼前に迫っていた。
 突進からの右ストレート。それをギリギリでかわしたトワイライトは、イオタにアッパーを仕掛ける。
 が、振りかぶった時点でイオタに拳をキャッチされ、鼻に頭突きを受ける。
 それではトワイライトはひるまず、ナイフを抜いて突き刺そうとするが、イオタが振り上げたキックで蹴り落とされ、逆にイオタの左手に収まる。
 イオタはジャブをトワイライトの両目にくらわし、目を押さえた隙を突いて、軽く跳ねて側頭部に回し蹴りを命中させた。

「あっ」

 ホワイトが驚いたが早いか、トワイライトは蹴り飛ばされて尻餅を突いた。
 トワイライトは立ち上がり、体の埃を払う。

「俺を殺すんじゃなかったのか?」
「もう殺したよ」
「何い?」

 イオタは両手をヒラヒラさせ、続いて自身の左側頭部をつつく。

「えっ? まさか?」

 トワイライトは恐る恐るそこに手を伸ばし、異変を察した。

「うっ! この感触……!」

 トワイライトは、屋上の出入口ドアのガラスを見る。そこには、頭にナイフが突き刺さった自分の姿。

「ああ! なん……、何てヤツだ! くそ……!」

 トワイライトはナイフを抜くと鞘に収め、屋上から飛び降りた。
 イオタとホワイトはその下を覗き込むが、トワイライトの姿は無い。

「逃げた?」
「なら、探しに行きましょ」

 イオタは戦鎚の入ったケースを拾うと、スキップしながらホワイトを引き連れ、その場を後にした。
 
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