7 / 14
Day33ー⑦ ファシラ・ヴェンコ
しおりを挟む
どこかへ行きそうになるイオタを、カールとテレンスは慌ててその腕を捕らえる。
「ちょっと待て! こっちにはこっちの予定が有るんだ。変に引っ掻き回されちゃ困る!」
「そう? 寧ろ楽になると思うけど。今みたく」
「別にお前の助けが無くても、こっちには勝てるだけの準備がしてある。大人しくしてろ!」
テレンスがそう言って何気無く廊下の窓を見た所、ブカブカな服をベルトで絞め込んだ一人の女が、真っ逆さまに落ちて行った。
「えっ!」
「どうした?」
驚いたテレンスに、カールが訝しむ。
「今……、女が一人落っこちてった……。一瞬だったが、標的の青龍の様だったが……。目が合っちまったよ、気味悪い」
「青龍!? まずい! アイツの超能力は……!」
カールが警戒するや否や、窓の外にドラゴンの頭が現れた。
それは、巨大化且つ、骨格だけがワイバーンの物に変化した青龍の姿であった。変身した事により、服のサイズがマッチしている。羽ばたきもせずに滞空し、薄ら笑いを浮かべる。
「ヤツの前に立つな!」
誰かの忠告を合図にしたか、青龍はバーナーの様に細長く伸びる、青白い炎を吐き出した。
当たった者は居なかったが、炙られた壁は次々に溶かされ、5秒も掛からずに市役所を貫通した。
炎を吐き終えた青龍は顎で上を指すと、上空へと飛び去って行った。
『誘ってるのか……。こちらの思い通りだ。少し時間を稼げ、すぐに援軍を向かわせる!』
「了解!」
ミリエラの指示に返事をしたのは隊員達ではなく、イオタである。
勢いそのままに向かおうとするが、カールがその肩を掴んだ。
「……って、お前は行かなくて良いんだ! ホワイトとここで待ってろ!」
「ヘイ」
一人の隊員が玄武を連行し、残ったカール達が青龍を追って行くのを見届けると、イオタは椅子に腰掛けた。
「デイブレイクさん、お返しします」
ホワイトはイオタから預かった銃を返そうとするが、イオタは手で制した。
「いや、それはもう暫く貸しておきます」
「え」
イオタが指差した方をホワイトが見ると、銀色のミドリガメが部屋の入り口に現れていた。
「ま、まさか第四生物!」
「そのまさか。私共は、あれを『猪苗代』と呼んでます」
「イナワシロ……?」
イオタは悠然とそのカメを拾い上げると、見つめ合う。
「シャー……!」
「シャー!」
猪苗代の威嚇に、イオタも威嚇し返す。
直後にイオタが猪苗代を上に向けた為、猪苗代は、首を伸ばしての噛み付きを空振りする事となった。
間髪入れずに、イオタはフリスビーの要領で、猪苗代を窓の外に放り投げた。
「これで良し」
「でもまた戻って来ますよ?」
「でしょーね。でも戦うなと言われてるし。なあ勇示?」
『イヤミも程々にしておけよ?』
言った側から銀色の液体が窓から侵入し、カメの形態を取る。
「来なくて良いのに」
イオタは『一壊の歯車』と銘打たれた自分の戦鎚を手に取ると、素早く床を這い回る猪苗代を捉え、ゴルフのスイングで外に追放した。イオタは突撃銃を手に取る。
また猪苗代が戻って来ると、今度は大きく跳び上がって体を針状に伸ばし、イオタを突き刺そうとした。
「チャンス!」
イオタはその針の先端を銃口に噛ませて受け止め、突撃銃を手にした腕を伸ばす。
直後、突撃銃を片手撃ちでのフル・オート射撃が始まる。
「ダララララ……!」と言う銃声と火花による明滅の中、銃弾は猪苗代を片端から削り飛ばし、銀色の飛沫に変えた。
「これでは時間の無駄にもならん」
イオタは、猪苗代の破片が寄り集まって行くのを待ち、一固まりになった所でハイパー・アシッディティーを吐いた。結果、猪苗代は形を整える事もままならず、その場から立ち去ろうとした時点で酸の2撃目を受け、沈黙した。
「戦うなって言われてたんじゃ?」
「戦ったんじゃなくて殺したんですよ」
ホワイトのツッコミに、イオタはニヤけて返した。
「さて、カール達は生きてるかな……」
イオタは天井を見上げて呟いた。
「ちょっと待て! こっちにはこっちの予定が有るんだ。変に引っ掻き回されちゃ困る!」
「そう? 寧ろ楽になると思うけど。今みたく」
「別にお前の助けが無くても、こっちには勝てるだけの準備がしてある。大人しくしてろ!」
テレンスがそう言って何気無く廊下の窓を見た所、ブカブカな服をベルトで絞め込んだ一人の女が、真っ逆さまに落ちて行った。
「えっ!」
「どうした?」
驚いたテレンスに、カールが訝しむ。
「今……、女が一人落っこちてった……。一瞬だったが、標的の青龍の様だったが……。目が合っちまったよ、気味悪い」
「青龍!? まずい! アイツの超能力は……!」
カールが警戒するや否や、窓の外にドラゴンの頭が現れた。
それは、巨大化且つ、骨格だけがワイバーンの物に変化した青龍の姿であった。変身した事により、服のサイズがマッチしている。羽ばたきもせずに滞空し、薄ら笑いを浮かべる。
「ヤツの前に立つな!」
誰かの忠告を合図にしたか、青龍はバーナーの様に細長く伸びる、青白い炎を吐き出した。
当たった者は居なかったが、炙られた壁は次々に溶かされ、5秒も掛からずに市役所を貫通した。
炎を吐き終えた青龍は顎で上を指すと、上空へと飛び去って行った。
『誘ってるのか……。こちらの思い通りだ。少し時間を稼げ、すぐに援軍を向かわせる!』
「了解!」
ミリエラの指示に返事をしたのは隊員達ではなく、イオタである。
勢いそのままに向かおうとするが、カールがその肩を掴んだ。
「……って、お前は行かなくて良いんだ! ホワイトとここで待ってろ!」
「ヘイ」
一人の隊員が玄武を連行し、残ったカール達が青龍を追って行くのを見届けると、イオタは椅子に腰掛けた。
「デイブレイクさん、お返しします」
ホワイトはイオタから預かった銃を返そうとするが、イオタは手で制した。
「いや、それはもう暫く貸しておきます」
「え」
イオタが指差した方をホワイトが見ると、銀色のミドリガメが部屋の入り口に現れていた。
「ま、まさか第四生物!」
「そのまさか。私共は、あれを『猪苗代』と呼んでます」
「イナワシロ……?」
イオタは悠然とそのカメを拾い上げると、見つめ合う。
「シャー……!」
「シャー!」
猪苗代の威嚇に、イオタも威嚇し返す。
直後にイオタが猪苗代を上に向けた為、猪苗代は、首を伸ばしての噛み付きを空振りする事となった。
間髪入れずに、イオタはフリスビーの要領で、猪苗代を窓の外に放り投げた。
「これで良し」
「でもまた戻って来ますよ?」
「でしょーね。でも戦うなと言われてるし。なあ勇示?」
『イヤミも程々にしておけよ?』
言った側から銀色の液体が窓から侵入し、カメの形態を取る。
「来なくて良いのに」
イオタは『一壊の歯車』と銘打たれた自分の戦鎚を手に取ると、素早く床を這い回る猪苗代を捉え、ゴルフのスイングで外に追放した。イオタは突撃銃を手に取る。
また猪苗代が戻って来ると、今度は大きく跳び上がって体を針状に伸ばし、イオタを突き刺そうとした。
「チャンス!」
イオタはその針の先端を銃口に噛ませて受け止め、突撃銃を手にした腕を伸ばす。
直後、突撃銃を片手撃ちでのフル・オート射撃が始まる。
「ダララララ……!」と言う銃声と火花による明滅の中、銃弾は猪苗代を片端から削り飛ばし、銀色の飛沫に変えた。
「これでは時間の無駄にもならん」
イオタは、猪苗代の破片が寄り集まって行くのを待ち、一固まりになった所でハイパー・アシッディティーを吐いた。結果、猪苗代は形を整える事もままならず、その場から立ち去ろうとした時点で酸の2撃目を受け、沈黙した。
「戦うなって言われてたんじゃ?」
「戦ったんじゃなくて殺したんですよ」
ホワイトのツッコミに、イオタはニヤけて返した。
「さて、カール達は生きてるかな……」
イオタは天井を見上げて呟いた。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
あるフィギュアスケーターの性事情
蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。
しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。
何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。
この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。
そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。
この物語はフィクションです。
実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。
上司、快楽に沈むまで
赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。
冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。
だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。
入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。
真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。
ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、
篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」
疲労で僅かに緩んだ榊の表情。
その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。
「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」
指先が榊のネクタイを掴む。
引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。
拒むことも、許すこともできないまま、
彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。
言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。
だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。
そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。
「俺、前から思ってたんです。
あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」
支配する側だったはずの男が、
支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。
上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。
秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。
快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。
――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。
ちょっと大人な体験談はこちらです
神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な体験談です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる