第四の生命体#1 遭遇

岬 実

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Day33ー⑧ ガイヌ・テンポ

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 イオタ対猪苗代いなわしろの戦いが終わった時、カール達は青龍との戦闘に突入していた。
 加えて、空に新手がもう一体。頭、腕と胸部、尻尾以外が編んだ有刺鉄線で出来た竜である。

「おいおい、『ワイヤー・バーン』まで居るのか」
「大丈夫。時間稼ぎだけで良いんだ」

 カール達は合図も無しにそれぞれが自発的に動き、四つのグループに分かれる。対するワイヤーバーンからは、鱗がひとりでに剥がれ落ち、その金属箔が雪の様に宙をヒラヒラと舞った。

「情報通りのチャフか。俺達にはミサイルの類は無いのにな」
「有ったとしても、アイツ等には勿体無いしな」

 カール達は一斉に突撃銃を構えて、一人と一体に弾の雨を見舞う。
 しかし、ワイヤー・バーンは長い体をくねらせて、青龍は急浮上して銃弾を避けた。
 反撃として青龍は火炎を吐こうと息を吸い込む。その様子を見て隊員の一人が、手榴弾を安全ピンも抜かずに投げ付けた。

「!」

 青龍が反応したのは、既に炎を吐き出した後。手榴弾が破裂し、打ち上げ花火の様に火が押し広げられた。
 その爆発で怯んだのは青龍だけで、ワイヤー・バーンはくちからトゲ付きの金属球をショットガンの様に多数吐き出し、カール達に降り注ぐ。

「うぐ!」

 玉の一つが一人の隊員の腹部に、防弾ベストを突き抜けて深々とメリ込む。他の当たらなかった玉も、床に刺さった。

「悪い! 離脱する!」

その隊員は玉を抜かずに傷口を押さえながら、ヨロヨロと屋内に退避した。

「隊員一人が負傷した! 救護も寄越してくれ!」
『分かった。援軍共々、後2、3分程でそちらに着く』

 ワイヤー・バーンと共に滑空する事でカール達からの射撃を避けながら、青龍は語る。

「頭上を取れば、誰が相手でも勝ったも同然!」

 青龍は一旦遠くまで離れ、Uターンして、急加速した上で向かって来る。

「火を吐く他にも、こんな技も有る!」

 カール達の上空を飛び去る瞬間、青龍は大きく羽ばたいた。
 飛行による助走も加わったその一撃は、台風並の暴風を発生させ、カール達を木の葉の様に吹き散らした。

「屋上から落とされるなよ!?」

 床を転がる一人の隊員が忠告し、カールやテレンスは柵に掴まって耐え、親指を立てた。

「隙有り!」

 青龍はそう指摘すると、床と同じ高さに顔が来る位置に降下し、炎をくちに含んで頭を横に向けた。

「火炎の薙ぎ払いが来る!」

 テレンスは叫ぶと共に柵の上に飛び乗り、カールは柵に逆立ちする。手近に高所が無い者達は揃って手榴弾を転がし、すかさず防御姿勢を取る。
 一瞬遅れて、青龍は首を振るって炎を吐き出す。しかし先程と同様、熱せられた手榴弾はその瞬間に爆発し、隊員達を炎の直撃から守った。
 それでも火の粉の様に僅かな火は届いてしまい、それだけで一人の衣服を炎上させた。

「あ~っ! あづーっ!」

 その隊員は慌てて、火から遠ざける為に装備を投げ捨て、屋内に退避しながら引火した服を脱ぐ。

「また一人やられたか!」
「こらえろ、もう少しだ!」

 テレンスの励ましと同時に、無線が入った。

『Bチーム、待たせたな! 奴等からなるべく離れろ!』

 カール達は適度に発砲しながら敵から距離を取る。
  青龍達が足を止めて一瞬目を奪われたその時、上空から大きな網が幾つも投下され、青龍とワイヤー・バーンに覆い被さった。
 次の瞬間、二人の体から火花が盛大に舞い散り、重石を兼ねた大型バッテリーの重さも相まって、成す術無く墜落した。

「上を取れば勝ったも同然、とか言ってたっけなあ」
「確かに『同然』だな」

 下を見下ろして、カールは回想し、テレンスは皮肉を言った。
 ワイヤー・バーンは地上で待機していた応援からのロケット弾の集中攻撃を受けてバラバラになり、青龍はガスを浴びせられて気絶した。
 カールはふと空を見上げて、ネットを投下した複数のドローンに向かってサムズアップした。
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