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第7話
4・結麻ちゃんからのおねがい
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結麻ちゃんの「おねがい」に、私はすぐには答えられなかった。
頭のなかを、いろんな言葉が駆けめぐっていた。「どうして」とか「本当に30分だけ?」とか「私が先に約束したのに」とか「結麻ちゃんがこんなお願いをするなんてよっぽどのことでは」とか。
でも、やっぱり一番頭を占めていたのは、
「もしかして、誰かに呼び出された?」
「あ、ええと……うん……」
結麻ちゃんは、目を伏せた。その顔は、困っているようにも微笑んでいるようにも見えた。
(どうしよう)
結麻ちゃんは、約束を「なし」にしてほしいといっているわけではない。単に「遅らせて」とお願いしているだけだ。
しかも、間中くんは時間どおりに戻ってくるとは限らない。お姉ちゃんからの情報だと、むしろ自由時間までに戻ってくる可能性は低そうだ。
(だったら……)
いいよ、と言うべきだ。もし間中くんが間に合ったとしても、ちょっと待ってもらえれば済む話だし。
正当な理由もちゃんとある。「間中くん、後夜祭に間に合いそうにないって聞いてたから」──
ただ、ひとつだけ気になることがあるとしたら、
「どうかな、トモちゃん」
この、結麻ちゃんの雰囲気。なんとなくソワソワしているような、くすぐったそうな──これをどう判断すればいいんだろう。
(たぶん、ダメな気がする)
結麻ちゃんの約束に応じたら、間中くんの告白が成功する確率はほぼ0%になる気がする。
もちろん、ただの勘違いかもしれないけれど。
絶対にそうとまでは言い切れないけれど。
「ええと……」
協力者としての私が「断れ」って忠告する。「応じたらダメだ」「これまでの作戦を台無しにするつもりか」って。
でも、恋する私は知らん顔だ。「間中くんには失恋してほしい」「そうすれば私にもチャンスはあるかも」──
それに「これは結麻ちゃんが望んだことだし」?
(……本当に?)
今度は、第三の私が訊ねてきた。
(あんたは、本当にそれでいいの?)
脳裏に、これまでの間中くんが浮かんだ。
モジモジした仕草、本気の怒り、はじめて作戦がうまくいったときのVサイン、一生懸命だったクール男子っぽいふるまい、熱を出したときのあれこれ──でも、やっぱりいちばん浮かぶのは、笑顔、笑顔、笑顔ばかりだ。
あの笑顔と、これからもちゃんと向き合いたい。
目を逸らすようなことはもうしたくない。
(そうだ、それだけは嫌だ)
私は、心を決めると結麻ちゃんに頭を下げた。
「ごめん。こっちを優先してほしい」
間中くんの告白を先に聞いてほしい。
彼に「遅かったんだ」って思わせないでほしい。
「ほんとごめん──ごめんだけど……!」
「トモちゃん、頭をあげて」
結麻ちゃんが、慌てたように私の肩を揺すった。
「そんな謝らないで。もしできたら──ってだけだから」
ああ、ごめん。ごめんなさい。
結麻ちゃんがそう言ってくれるのをわかっていて、私は今、その優しさを利用している。
「大丈夫。トモちゃんとの約束を優先するよ」
「ほんと?」
「もちろん。だからもう顔をあげて」
やれることはやった。
あとはもう神様に祈るだけだ。
(渋滞が、どうか解消されますように)
どうか、間中くんが後夜祭に間に合いますように。
頭のなかを、いろんな言葉が駆けめぐっていた。「どうして」とか「本当に30分だけ?」とか「私が先に約束したのに」とか「結麻ちゃんがこんなお願いをするなんてよっぽどのことでは」とか。
でも、やっぱり一番頭を占めていたのは、
「もしかして、誰かに呼び出された?」
「あ、ええと……うん……」
結麻ちゃんは、目を伏せた。その顔は、困っているようにも微笑んでいるようにも見えた。
(どうしよう)
結麻ちゃんは、約束を「なし」にしてほしいといっているわけではない。単に「遅らせて」とお願いしているだけだ。
しかも、間中くんは時間どおりに戻ってくるとは限らない。お姉ちゃんからの情報だと、むしろ自由時間までに戻ってくる可能性は低そうだ。
(だったら……)
いいよ、と言うべきだ。もし間中くんが間に合ったとしても、ちょっと待ってもらえれば済む話だし。
正当な理由もちゃんとある。「間中くん、後夜祭に間に合いそうにないって聞いてたから」──
ただ、ひとつだけ気になることがあるとしたら、
「どうかな、トモちゃん」
この、結麻ちゃんの雰囲気。なんとなくソワソワしているような、くすぐったそうな──これをどう判断すればいいんだろう。
(たぶん、ダメな気がする)
結麻ちゃんの約束に応じたら、間中くんの告白が成功する確率はほぼ0%になる気がする。
もちろん、ただの勘違いかもしれないけれど。
絶対にそうとまでは言い切れないけれど。
「ええと……」
協力者としての私が「断れ」って忠告する。「応じたらダメだ」「これまでの作戦を台無しにするつもりか」って。
でも、恋する私は知らん顔だ。「間中くんには失恋してほしい」「そうすれば私にもチャンスはあるかも」──
それに「これは結麻ちゃんが望んだことだし」?
(……本当に?)
今度は、第三の私が訊ねてきた。
(あんたは、本当にそれでいいの?)
脳裏に、これまでの間中くんが浮かんだ。
モジモジした仕草、本気の怒り、はじめて作戦がうまくいったときのVサイン、一生懸命だったクール男子っぽいふるまい、熱を出したときのあれこれ──でも、やっぱりいちばん浮かぶのは、笑顔、笑顔、笑顔ばかりだ。
あの笑顔と、これからもちゃんと向き合いたい。
目を逸らすようなことはもうしたくない。
(そうだ、それだけは嫌だ)
私は、心を決めると結麻ちゃんに頭を下げた。
「ごめん。こっちを優先してほしい」
間中くんの告白を先に聞いてほしい。
彼に「遅かったんだ」って思わせないでほしい。
「ほんとごめん──ごめんだけど……!」
「トモちゃん、頭をあげて」
結麻ちゃんが、慌てたように私の肩を揺すった。
「そんな謝らないで。もしできたら──ってだけだから」
ああ、ごめん。ごめんなさい。
結麻ちゃんがそう言ってくれるのをわかっていて、私は今、その優しさを利用している。
「大丈夫。トモちゃんとの約束を優先するよ」
「ほんと?」
「もちろん。だからもう顔をあげて」
やれることはやった。
あとはもう神様に祈るだけだ。
(渋滞が、どうか解消されますように)
どうか、間中くんが後夜祭に間に合いますように。
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