たかが、恋

水野七緒

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第7話

5・ギリギリの後夜祭

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 後夜祭は、予定時刻より少し遅れてはじまった。
 まずは全員参加の表彰式。クラス新聞、合唱コンクール──クラス展示上位3クラスの発表と、総合点の表彰は、特に3年生がおおいに盛りあがっていた。
 私は、その間ずっと体育館の古びた床の目を見ていた。そうでもしなければ、今にも「ああっ」とか「ううっ」とか叫びだしてしまいそうだった。

(間に合え……どうか間に合って)

 いつもは長すぎる校長先生の挨拶も、今日は心なしか短めだ。
 なんでこんなときだけ? いっそ、30分くらい話してくれてもいいのに。
 館内の雰囲気が、次第にソワソワしはじめる。実行委員長からの「閉会の言葉」が終わり、司会者のアナウンスが流れた。

「このあとは自由参加のフォークダンスです」

 とたんに館内はざわめきに包まれ、一部の生徒たちが早くも動き出した。
 フォークダンスに参加しない人たち──そのまま教室に戻って下校する人もいれば、後夜祭のジンクスに胸を高鳴らせている人もいるんだろう。
 私は、本来なら前者だ。間中くんのことがなければ、さっさと教室に戻って「つまんない文化祭だったなぁ」なんてボヤきながら帰り支度をはじめていたはずだ。
 でも、今は違う。
 くだらないジンクスのために、必死に廊下を走っている。
 向かう先は第二玄関。昨日サッカー部はそこで集合してマイクロバスに乗っていたから、帰りも同じところに戻ってくるはずだ。

(早く……お願い、早く……!)

 上履きのまま、外に飛び出す。
 けれども、バスが到着した気配はない。文化祭の片付けなどでにぎやかな正面玄関とは違い、第二玄関は静まりかえったままだ。

(どうしよう)

 当初の予定では、先に間中くんに図書室に向かってもらって、私があとから結麻ちゃんを連れていくことになっていた。
 それが難しくなったので、急きょ結麻ちゃんに「図書室前に来て」とお願いしていた。閉会式のあと、すぐに体育館を出ていたとしたら──とっくに図書室前で待っていてもおかしくはない。

(どうしよう、いったん図書室に向かう?)

 それで「ごめん、しばらくここで待ってて」ってお願いしてこようか。
 でも、その間にサッカー部のバスが戻ってきたら? 間中くんは「図書室で待ち合わせ」ってこと、ちゃんと覚えているだろうか。
 迷いに迷っている私の耳に、車のエンジン音らしきものが届いた。ハッと振り返ると、裏門からマイクロバスが入ってきた。
 乗降口が開き、おそろいのジャージを着た人たちが下りてくる。そんななか響いた、よく通る大きな声。

「すんません! すんません!」

 転がる勢いでバスを下りてきた間中くんに、私は周囲の目も気にせず駆け寄った。

「行くよ、間中くん!」
「へっ、佐島なんで……」
「いいから! 走って!」

 よかった──間に合った!
 ソフトバックを抱えなおした間中くんは、玄関で外履きを脱ぎ捨てた。

「図書室だよな!?」
「うん!」
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