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第7話
6・走れ、走れ
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靴下であることをものともせず、間中くんは渡り廊下を駆け抜ける。
その勢いのまま階段へ。まさかの二段飛ばし。これには、さすがについていけない。
「佐島……」
「いいから! 走って!」
結麻ちゃんは、きっともう到着している。
私にかまっている場合じゃない。
先に3階までのぼりきった間中くんは、息を弾ませ立ち止まった。
図書室は、踊り場を左に曲がった先の突き当たりにある。そこに、約束どおりひとりたたずむ人影があった。間違いない、結麻ちゃんだ。
「行こう」
ようやく追いついた私は、間中くんの背中を叩いた。
結麻ちゃんは、すでにこちらを向いていた。たぶん、階段を駆け上がる足音とか全部聞こえていたんだろう。
「ごめん、結麻ちゃん。待たせて」
「ううん──ええと……」
結麻ちゃんの目が、私の背後に向けられる。
もしかしたら、それでいろいろ察してくれたかもしれない。
「あのね、私の用事ってこれなの」
間中くん、大事な話があるんだって。
だから、どうか聞いてあげて。
私は、力いっぱい間中くんの背中を押し出した。
間中くんの背中は、ジャージ越しでもわかるくらい汗でじっとり濡れていた。
ここまで走ってきたせいもあるし、それ以外の理由もあるのかもしれない。でも、そんなの今はどうだっていい。
「じゃあ、私、行くから」
「えっ、佐島……」
「私ができるのはここまで」
あとは間中くんが自分でがんばるだけだ。
わかった、と彼が力強くうなずいたのを確認して、私は走ってきたばかりの廊下を戻りだした。
すごいぞ、私。
えらいぞ、私。
階段を下りる足取りが軽い。
まあね、途中どうなるかと思ったもんね。
でも、ちゃんと間に合った。間中くんは戻ってきてくれた。
あのとき、結麻ちゃんに「こっちを優先して」っておねがいしてよかった。
協力者としての役目、きっちり果たせてよかった。
渡り廊下にさしかかったあたりから、ポツポツ誰かとすれ違いはじめた。
私と同じ、フォークダンスに参加しなかった人たち。これから告白するのかな。実はもう結果が出たあとだったりして──
「トモちゃん……?」
向かいから来た子に、呼び止められた。
綾だ。まさかの。
「なんでここにいるの」
「あ、その……ちょっと用事があって……」
綾は困ったように視線をさまよわせたあと、小さな声で訊ねてきた。
「トモちゃんは……どうして泣いているの?」
バカ、そんなこと訊くな。
こっちは必死で平気なふりをしているのに。
最悪だ。レッドカードで一発退場ものだ。
なのに自分でもびっくりするほど大きな声が出た。「うわあああん」とか「ああああん」とか、恥ずかしいくらいのひどい声。
「ご、ごめん、トモちゃん……落ち着いて……泣かないで……」
綾が、オタオタと慌てふためいている。
ざまあみろ、これは綾のせいだ。
綾がよけいな指摘をしたせいなんだから。
──その日の夜、結麻ちゃんから電話がかかってきた。
その勢いのまま階段へ。まさかの二段飛ばし。これには、さすがについていけない。
「佐島……」
「いいから! 走って!」
結麻ちゃんは、きっともう到着している。
私にかまっている場合じゃない。
先に3階までのぼりきった間中くんは、息を弾ませ立ち止まった。
図書室は、踊り場を左に曲がった先の突き当たりにある。そこに、約束どおりひとりたたずむ人影があった。間違いない、結麻ちゃんだ。
「行こう」
ようやく追いついた私は、間中くんの背中を叩いた。
結麻ちゃんは、すでにこちらを向いていた。たぶん、階段を駆け上がる足音とか全部聞こえていたんだろう。
「ごめん、結麻ちゃん。待たせて」
「ううん──ええと……」
結麻ちゃんの目が、私の背後に向けられる。
もしかしたら、それでいろいろ察してくれたかもしれない。
「あのね、私の用事ってこれなの」
間中くん、大事な話があるんだって。
だから、どうか聞いてあげて。
私は、力いっぱい間中くんの背中を押し出した。
間中くんの背中は、ジャージ越しでもわかるくらい汗でじっとり濡れていた。
ここまで走ってきたせいもあるし、それ以外の理由もあるのかもしれない。でも、そんなの今はどうだっていい。
「じゃあ、私、行くから」
「えっ、佐島……」
「私ができるのはここまで」
あとは間中くんが自分でがんばるだけだ。
わかった、と彼が力強くうなずいたのを確認して、私は走ってきたばかりの廊下を戻りだした。
すごいぞ、私。
えらいぞ、私。
階段を下りる足取りが軽い。
まあね、途中どうなるかと思ったもんね。
でも、ちゃんと間に合った。間中くんは戻ってきてくれた。
あのとき、結麻ちゃんに「こっちを優先して」っておねがいしてよかった。
協力者としての役目、きっちり果たせてよかった。
渡り廊下にさしかかったあたりから、ポツポツ誰かとすれ違いはじめた。
私と同じ、フォークダンスに参加しなかった人たち。これから告白するのかな。実はもう結果が出たあとだったりして──
「トモちゃん……?」
向かいから来た子に、呼び止められた。
綾だ。まさかの。
「なんでここにいるの」
「あ、その……ちょっと用事があって……」
綾は困ったように視線をさまよわせたあと、小さな声で訊ねてきた。
「トモちゃんは……どうして泣いているの?」
バカ、そんなこと訊くな。
こっちは必死で平気なふりをしているのに。
最悪だ。レッドカードで一発退場ものだ。
なのに自分でもびっくりするほど大きな声が出た。「うわあああん」とか「ああああん」とか、恥ずかしいくらいのひどい声。
「ご、ごめん、トモちゃん……落ち着いて……泣かないで……」
綾が、オタオタと慌てふためいている。
ざまあみろ、これは綾のせいだ。
綾がよけいな指摘をしたせいなんだから。
──その日の夜、結麻ちゃんから電話がかかってきた。
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