贖罪公爵長男とのんきな俺

侑希

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第二部

ライラとフレドリック

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「本当は、お兄様が公爵になって、私とリオが結婚してカレッジ領に、って話も出たんですのよ。リオは優しくて頭もよくてよく遊んでくれましたから、私はそれでも良いと思っていたんですけれど」


「は?」


 そんな話題が出たのは、夕食後、父親の執務室でだった。公爵とフレドリック、ライラが執務室にあるソファセットにつき、近況報告を交わしていたらライラがそんなことを言い出した。


「お兄様が継ぎたがらない原因をお父様とお母様から聞いたのが八歳の時ですわ。その時にそういう案を出したのですけど、リオに直接断られてしまって」


「ああ、そういえばそうだったな。ライラは随分リオに遊んでもらっていたから。リオに断られて大泣きしてたな」


「いやだわお父様ったら。まあ実際ショックでしたけど。――ずっと私と仲良しでしたのに、お兄様とリオが仲良しで、私少し嫉妬してしまいます」



 それはどっちに嫉妬しているのだろう、とは聞かなかった、フレドリックは賢明なので。
 しかしそんな案が持ち上がったとは気づきもしなかった。リオとフレドリックの接触は避けられていたのだし知らせようもないが、少し疎外感だ。そもそもライラの婚約者候補の選定にフレドリックは関わっていない。ただリストを見せられてフレドリックの方に変な噂がないか聞いてくるのみだった。勿論リオが候補に挙がっていてもフレドリックに見せられることはなかったとは思うが、今まで無関心でいたので藪蛇に会話を広げることもなかろうとフレドリックは口を噤んだ。


「本当に、リオも学園に通ってほしかったですわ」


「しかし、少し考えないといけないかもしれないな。特一級機密とはいえ、あそこにはそれなりに人がいたから、秘密裏にリオに接触して絡めとろうとする人間も出てくるかもしれない」


「カレッジ領、いいところですものね」


「――カレッジ領は今後も新たな貴族を入れずに?」


 本来ならばウォルターズ領に入れてしまうか王領にしてしまうか、といった事案だ。国も公爵家も頑なにカレッジ領というくくりにこだわっているように思える。


「ああ、リオはカレッジの名を捨ててしまったが、その名を残したいと思っているのは明らかだからな。学園に入っていないが、リオにはそれに準ずる教育を受けさせている。将来的にカレッジ領の代行官として立たせたらどうか、と王は言っていた」


 リオは貴族など一人で継ぐことは出来ない、と言っていたが、客観的に見てリオの地頭はそれなりによく、かつて大人だった記憶もあるため、周りの大人たちにはこのまま勉強を続けていれば継いでも問題ないと判断されていた。ライラが八歳、リオが十二歳の時にライラとリオを将来的に結婚させ、カレッジ家の復興をしてもよかろう、という提案が王宮から出たのだ。けれどもそれをすっぱりと断ったのがリオだった。五歳の時の決断を十二歳のリオは覆すことはなかった。けれどもカレッジ領はリオにこそ治めてほしい、というカレッジ家とリオをよく知る人はみな思っていた。――それならリオは代行官を手伝いながらカレッジ領にいたいと言っていたのでリオを代行官にしてしまえばいいだろう、という大人の思惑である。

 カレッジ子爵家はこの国の食糧庫として農地を守り続けてきた。子爵家の長男とウォルターズ公爵、また国王も学園の在学がかぶり、血縁関係や婚姻関係において繋がりがあり、私的に仲が良かった、とフレドリックも聞いている。国政の中心にいる年配の者たちの中にはリオの祖父である子爵と親しかったものも多いのだろう。だから彼らの愛し守ってきた土地を、民を、その名を掲げて残して守ろうと決めたのだ。

 そんなわけでリオには普通の勉強だと言って貴族並みの教育を受けさせているのである。リオの教育は順調だったが、今回の件でリオがカレッジ家の末裔だということが今までの比ではない人数の前で明るみに出た。国の中枢に関わるものの中には農耕関係で安定して収益を上げているカレッジ領が魅力的に感じ、野心を持つものも多いだろう。国の今までのカレッジ領の扱いと、リオが今いる立ち位置を鑑みて、国が将来カレッジ領をリオに任せたいと思っていることを推察するのは容易だ。そんな将来を持つリオに近づいて親交や婚姻に持ち込めば将来カレッジ領を手中に出来るかもしれない、と考える者も出てくる。


「ただ、騎士の人数を増やしたからと言ってリオについて回るわけにはいかないからな。公爵家から新たな使用人を代行官邸に派遣する準備はしているが……」


 問題はリオにどうやって説明するか、である。公爵は未だ結論は出ていないと顔をしかめる。

 そんな父を見てフレドリックが手をあげた。


「リオがカレッジ領で領の統治の仕事に従事していくならばこんな案はどうでしょう?」



「――ふむ。それはそれで悪くないな。それならばカレッジ領に護衛を増やしても自然だ。王宮に提案してみよう」



「もう!!お兄様ばっかり!!次の長いお休みには領地に帰りますから、その時は私もリオと遊ばせてくださいませ!!」


 フレドリックの提案を聞いた公爵は、少しだけ考えて一つ頷き、ライラは頬を膨らませたのであった。


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