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第一章
1-4 魔法は才能
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「羨ましいなぁ……」
俺は六男であるフォーカス兄さんが、練習をしているところをじっと見つめていた。
兄さんが行っているのは自然界や体を気流のように流れる魔力を感じて操作し、事象に変更を加える魔法という技術。
コーラム家では比較的戦士や武道家、騎士などの近接戦闘力が多く魔法を使える素質を持つ者は少ない。
フォーカス兄さんと二女のアマンダ姉さん。あと俺の一個上である十男ヘルマイヤ兄さん。
ヘルマイヤ兄さんはもっとも歳が近いのだが、腹違いなので俺の事をあまりよく思っていないのだ。
俺はそんなこと気にしないのだが、やはりというかそういったわけにはいかないんだろう。
上の兄弟、特に長男のエディ兄さんと次男のラージ兄さんが冷たく当たっているのを見たことがある。
もっとも調合師という素質の事もあるし、色々な理由からかもしれないが。
アマンダ姉さんは仲的には普通だが、歳が離れすぎているし既に結婚して家にいないので無理なのだ。
ということで、フォーカス兄さんに魔法を見せてもらっている。
フォーカス兄さんは貴重な魔法師として将来が有望視されているため、俺の事を見下したりする必要がないのだろう。
むしろその能力をエディ兄さんに疎まれているくらいなんだから。
ここだけの話だがエディ兄さんは自分も才能があるくせに、人の事を気にしすぎだと思う。
絶対誰にもそんなこと言えないけれど。
「ま、こればっかりは仕方ないんだよ。僕だってなんで魔法師として素質を受けたのか分からないんだから」
魔法師として将来有望の上に金髪が輝いていてルックスも決まっている。
俺だけなぜかこげ茶色の髪の毛なんだよな。両親二人とも金髪だっていうのに。顔立ちも……似てはいないし。
もしかして捨て子なのかもしれない、という可能性を考えて聞いたことがあったが、こっぴどく怒られてしまったのを覚えている。
素質が分かった今、同じように聞けば……、いや、むしろ父上と母上も本当に自分の子か怪しんでいるのではないだろうか。
考えていると悲しくなりそうだったので、その気持ちを飲み込んで兄さんに尋ねかける。
「兄さんは王都に行って冒険者になるの?」
「正直どうしようか迷ってるんだよね。王立魔法研究所に入れたら入りたいとは思うんだけど……」
「おおっ! そこって物凄く難しい試験があるとこでしょ!? いや、でも、兄さんならいけると思うな」
「そ、そうかな……? いけるといいんだけど……。ちなみにディルはどうするつもりなんだ?」
「うーん……。冒険者になれたらいいなって思ってたんだけど。調合師だからねぇ」
兄さんは案山子に向かって炎を投げつけていた――ファイアボールという魔法らしい――のをやめて俺の肩に手を置いて首を振った。
真剣な面持ち。俺のことをまともに相手してくれる数少ない人だ。
「僕は他の兄さんたちみたいにディルを見下したりしないぞ? 調合師、何が駄目なんだ? ディルがいつも読んでる本って無茶苦茶難しい内容だろ?」
「あ、あれ……。なんで俺が読んでる本のこと知ってるの……?」
兄さんは頭を掻きながら少し照れ臭そうに口を開く。
俺は何かを言われるのが嫌で、いつもこっそりと屋敷の書庫で本を読んでいる。
自由に入れるし使えるんだけど、こそこそしないといけないのはなんとなく嫌だ。
「あ、ははは。実はディルがどんな本読んでるのか気になって見てみたんだ。実はそれを見て王立魔法研究所に行こうかと思ったんだったり……。ディルに負けたくないと思ってさ!」
「え、ええ!? 負けって……。スタート地点で負けてるってのに、兄さんが努力したら俺の立場ないじゃんか」
「いや、そうか? ディルが読んでる本ちんぷんかんぷんだったんだけど。父さんだって趣味で集めただけの読めないような本だと思うぞ」
「そうなのかな? ま、誰も来ないから自由に書庫を使わせてもらえてんだけどね」
「なんというか大物って感じがするな、ディルは。意外と歴史に名を残すような大人物になったりして……」
「ないない。あるわけないよ、そんなこと。俺は今を必死に生きてるだけ。兄さんこそ魔法で凄く有名になるかもよ?」
「どうだろうなぁ……。素質ってのは確かに大きいけど、おそらく井の中の蛙というかなんというか……」
「俺なんか井の中のおたまじゃくしにもなってるか怪しいんだけど……」
話していて何となく心が沈み、二人して大きくため息をつく。
それが何となく可笑しくて、二人でその後大笑いした。
再度、魔法の練習を見て、兄さんが頑張ろうとしていることを聞いて俺ももっと頑張らなきゃと思う。
才能。
それをいかに努力で埋められるかが凡人の目指すべき到達点なのだから。
俺は六男であるフォーカス兄さんが、練習をしているところをじっと見つめていた。
兄さんが行っているのは自然界や体を気流のように流れる魔力を感じて操作し、事象に変更を加える魔法という技術。
コーラム家では比較的戦士や武道家、騎士などの近接戦闘力が多く魔法を使える素質を持つ者は少ない。
フォーカス兄さんと二女のアマンダ姉さん。あと俺の一個上である十男ヘルマイヤ兄さん。
ヘルマイヤ兄さんはもっとも歳が近いのだが、腹違いなので俺の事をあまりよく思っていないのだ。
俺はそんなこと気にしないのだが、やはりというかそういったわけにはいかないんだろう。
上の兄弟、特に長男のエディ兄さんと次男のラージ兄さんが冷たく当たっているのを見たことがある。
もっとも調合師という素質の事もあるし、色々な理由からかもしれないが。
アマンダ姉さんは仲的には普通だが、歳が離れすぎているし既に結婚して家にいないので無理なのだ。
ということで、フォーカス兄さんに魔法を見せてもらっている。
フォーカス兄さんは貴重な魔法師として将来が有望視されているため、俺の事を見下したりする必要がないのだろう。
むしろその能力をエディ兄さんに疎まれているくらいなんだから。
ここだけの話だがエディ兄さんは自分も才能があるくせに、人の事を気にしすぎだと思う。
絶対誰にもそんなこと言えないけれど。
「ま、こればっかりは仕方ないんだよ。僕だってなんで魔法師として素質を受けたのか分からないんだから」
魔法師として将来有望の上に金髪が輝いていてルックスも決まっている。
俺だけなぜかこげ茶色の髪の毛なんだよな。両親二人とも金髪だっていうのに。顔立ちも……似てはいないし。
もしかして捨て子なのかもしれない、という可能性を考えて聞いたことがあったが、こっぴどく怒られてしまったのを覚えている。
素質が分かった今、同じように聞けば……、いや、むしろ父上と母上も本当に自分の子か怪しんでいるのではないだろうか。
考えていると悲しくなりそうだったので、その気持ちを飲み込んで兄さんに尋ねかける。
「兄さんは王都に行って冒険者になるの?」
「正直どうしようか迷ってるんだよね。王立魔法研究所に入れたら入りたいとは思うんだけど……」
「おおっ! そこって物凄く難しい試験があるとこでしょ!? いや、でも、兄さんならいけると思うな」
「そ、そうかな……? いけるといいんだけど……。ちなみにディルはどうするつもりなんだ?」
「うーん……。冒険者になれたらいいなって思ってたんだけど。調合師だからねぇ」
兄さんは案山子に向かって炎を投げつけていた――ファイアボールという魔法らしい――のをやめて俺の肩に手を置いて首を振った。
真剣な面持ち。俺のことをまともに相手してくれる数少ない人だ。
「僕は他の兄さんたちみたいにディルを見下したりしないぞ? 調合師、何が駄目なんだ? ディルがいつも読んでる本って無茶苦茶難しい内容だろ?」
「あ、あれ……。なんで俺が読んでる本のこと知ってるの……?」
兄さんは頭を掻きながら少し照れ臭そうに口を開く。
俺は何かを言われるのが嫌で、いつもこっそりと屋敷の書庫で本を読んでいる。
自由に入れるし使えるんだけど、こそこそしないといけないのはなんとなく嫌だ。
「あ、ははは。実はディルがどんな本読んでるのか気になって見てみたんだ。実はそれを見て王立魔法研究所に行こうかと思ったんだったり……。ディルに負けたくないと思ってさ!」
「え、ええ!? 負けって……。スタート地点で負けてるってのに、兄さんが努力したら俺の立場ないじゃんか」
「いや、そうか? ディルが読んでる本ちんぷんかんぷんだったんだけど。父さんだって趣味で集めただけの読めないような本だと思うぞ」
「そうなのかな? ま、誰も来ないから自由に書庫を使わせてもらえてんだけどね」
「なんというか大物って感じがするな、ディルは。意外と歴史に名を残すような大人物になったりして……」
「ないない。あるわけないよ、そんなこと。俺は今を必死に生きてるだけ。兄さんこそ魔法で凄く有名になるかもよ?」
「どうだろうなぁ……。素質ってのは確かに大きいけど、おそらく井の中の蛙というかなんというか……」
「俺なんか井の中のおたまじゃくしにもなってるか怪しいんだけど……」
話していて何となく心が沈み、二人して大きくため息をつく。
それが何となく可笑しくて、二人でその後大笑いした。
再度、魔法の練習を見て、兄さんが頑張ろうとしていることを聞いて俺ももっと頑張らなきゃと思う。
才能。
それをいかに努力で埋められるかが凡人の目指すべき到達点なのだから。
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