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第一章
1-14 ディルの旅立ち後のコーラム家 その①
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ディルレアンとの別れを終えたフォーカスは、彼が千切り取ったズボンの端を握りしめた。
その表情は晴れやかであり、後悔などは欠片ほども見て取ることはできない。
家に帰れば当然叱咤されるのは目に見えているというのに。
「これで良かったんだろうな……」
小さく呟きもう見る事は敵わないディルレアンが旅立った方向に目を向ける。
自分がディルレアンと最も仲がいいと言った言葉は本心からのものだった。
もっとも男兄弟の中では、ということも思っていたのだが。
才能を持って生まれたフォーカスは、単純にディルレアンのことを疎ましい目で見る兄弟たちの事が好きではなかったのだ。
ならその疎まれている当人の方が好ましい。
当然だろう。
だがやはり、いや、だからこそ寂しいという気持ちも非常に強い。
それは家でどうこうといった事よりもよほど彼にとって重要なこと。
「僕も頑張らないとなー。ほんと、ディルは次に会う時は物凄いことになっているような予感がするんだよね」
自分を鼓舞するように呟き、ディルレアンの将来に期待を向ける。
この先ディルレアンががどうなっていくかなんて当然知る由もない。
それでも何かやらかしてくれるんじゃないかということを、一緒に生きてきてずっと感じていたのだ。
そんなことを考えている間にフォーカスは屋敷の前まで辿り着いていた。
フォーカスが開けた穴周辺で燃え盛っていた炎は鎮火されていたが、人々が集まり様子を見に来ている。
そんな中、フォーカスの姿をいち早く見つけたエディが声をかけた。
「おい、フォーカス……! ……その布切れは?」
「エディ兄さん。ディルは魔法で燃やし尽くしてしまったからね。逃がさなかった証拠として落ちていた布を持ってきたんだ」
「ふん……、そうか、ご苦労。だが、屋敷を壊した罪は重いからな」
腕を組みながらの尊大な態度に尊大な口調。フォーカスは心の中で毒づいていた。
伯爵家の家長となろう人間があまりにも狭量が過ぎる。
それは今に始まった話ではない。ディルが生まれる前からずっとの話。
幼いながらにも、兄の傍若無人っぷりに辟易して育ってきていた。
「ちゃんと弁償はしますよ」
「それでいい。俺や家に迷惑をかけるな。それが弟の責務だ!」
腹立たしいことこの上ないという気持ちが沸き上がる。
あなたは兄としての責務を果たしたことがあったのだろうか?と口を荒げたくなる。
けれどもそれは飲み込んだ。
おそらくこの家は衰退の一途を辿るとフォーカスは考えている。
エディもラージアも私利私欲が第一に来ている人間で、領内の治世などまともに行えるはずがないのだ。
現在は父親がいるから成り立っているコーラム伯爵領。
それもいつまで続くか分からない。
「さっさと準備して僕も早めに王都へ行くかなー」
なるべくであるならばディルと会った時に、驚かせることができるような立場になっていたらいいと思っている。
フォーカスはグッとこぶしを握りしめると、ディルレアンの部屋を眺めて自分を鼓舞しながら屋敷の奥へと入っていった。
その表情は晴れやかであり、後悔などは欠片ほども見て取ることはできない。
家に帰れば当然叱咤されるのは目に見えているというのに。
「これで良かったんだろうな……」
小さく呟きもう見る事は敵わないディルレアンが旅立った方向に目を向ける。
自分がディルレアンと最も仲がいいと言った言葉は本心からのものだった。
もっとも男兄弟の中では、ということも思っていたのだが。
才能を持って生まれたフォーカスは、単純にディルレアンのことを疎ましい目で見る兄弟たちの事が好きではなかったのだ。
ならその疎まれている当人の方が好ましい。
当然だろう。
だがやはり、いや、だからこそ寂しいという気持ちも非常に強い。
それは家でどうこうといった事よりもよほど彼にとって重要なこと。
「僕も頑張らないとなー。ほんと、ディルは次に会う時は物凄いことになっているような予感がするんだよね」
自分を鼓舞するように呟き、ディルレアンの将来に期待を向ける。
この先ディルレアンががどうなっていくかなんて当然知る由もない。
それでも何かやらかしてくれるんじゃないかということを、一緒に生きてきてずっと感じていたのだ。
そんなことを考えている間にフォーカスは屋敷の前まで辿り着いていた。
フォーカスが開けた穴周辺で燃え盛っていた炎は鎮火されていたが、人々が集まり様子を見に来ている。
そんな中、フォーカスの姿をいち早く見つけたエディが声をかけた。
「おい、フォーカス……! ……その布切れは?」
「エディ兄さん。ディルは魔法で燃やし尽くしてしまったからね。逃がさなかった証拠として落ちていた布を持ってきたんだ」
「ふん……、そうか、ご苦労。だが、屋敷を壊した罪は重いからな」
腕を組みながらの尊大な態度に尊大な口調。フォーカスは心の中で毒づいていた。
伯爵家の家長となろう人間があまりにも狭量が過ぎる。
それは今に始まった話ではない。ディルが生まれる前からずっとの話。
幼いながらにも、兄の傍若無人っぷりに辟易して育ってきていた。
「ちゃんと弁償はしますよ」
「それでいい。俺や家に迷惑をかけるな。それが弟の責務だ!」
腹立たしいことこの上ないという気持ちが沸き上がる。
あなたは兄としての責務を果たしたことがあったのだろうか?と口を荒げたくなる。
けれどもそれは飲み込んだ。
おそらくこの家は衰退の一途を辿るとフォーカスは考えている。
エディもラージアも私利私欲が第一に来ている人間で、領内の治世などまともに行えるはずがないのだ。
現在は父親がいるから成り立っているコーラム伯爵領。
それもいつまで続くか分からない。
「さっさと準備して僕も早めに王都へ行くかなー」
なるべくであるならばディルと会った時に、驚かせることができるような立場になっていたらいいと思っている。
フォーカスはグッとこぶしを握りしめると、ディルレアンの部屋を眺めて自分を鼓舞しながら屋敷の奥へと入っていった。
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