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第二章
2-14 調合材料コンプリート?
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地面に降り立ったフロードは目をパチクリパチクリさせた後、両手を握って確認する様子を見せた。
傘は剣と共にしまわれたままだし、毎度持った状態で現れるという訳ではないようだ。
「ふむ……。なんといえば良いでござるか…………。温かくて心地のよいゆりかごで揺すられているような、そんな感覚でござるな」
「そうなんだ。それなら休息になるってことでいいのかな?」
「そう考えてもらっていいでござる。しかも視ようと思えばご主人の周りを見ることができるようでござる。
これなら咄嗟の時でも御主人を守ることができそうでござるよ」
「へぇ、便利だね。それって俺の目を通して周りを見るような感じ?」
フロードは座禅を組むと軽く目を閉じる。
鎧があるというのに器用なもんだ。
「それとは違う感覚でござるな。遠くを見る事は敵わぬし。周りの状況が分かる程度でござる」
「ふむふむ。だからピギュンもガジュンも出現させたときに、慌てたり狼狽えたりしないわけだね」
「そういうことでござるな。では……そろそろ……」
フロードが目を向けたのは俺の膝上にずっと置いてある箱。
好奇心が疼いているのか僅かに肩が揺れ動いている。
確かに俺も気にはなる。
しかし、同時にどんなおっかない物が出てくるのかという恐怖もあった。
勿論開けるけどな。
箱はギギリと鈍い音を立てゆっくりと開いていく。
灰色の柔らかな布地が目に飛び込み、そのなかにはめ込まれるようにして入っている小瓶。
そして脇に挟み込まれていた折りたたまれている小さな紙片。
小瓶の中にはブレディアスドラゴンの魔漏結晶よりもさらに深紅の濃い液体。
ゴクリと喉を鳴らし思わずフロードと顔を見合わせる。
「まさか……でござるが……。そのまさかのような気がしてならんでござるな」
「そ、そうだね。本当にフェンリルの……」
全ての調合材料がもしここで揃うとするのであれば、それはとても偶然のものだとは思えない。
けれどそれを確かめる術を俺は持ち合わせていないし、ここで引き返すほどに軟弱でもない。……といいな。
ドキドキと脈打つ胸に一度手を当ててから、俺は折りたたまれた紙片を広げていく。
調合表の神がかった綺麗さを保っていたものとはまるで違い、色はくすんで端がチリチリとささくれている。
中に書かれていたのはやはりというべきか、この瓶の中身についてだった。
『フェンリルの血液』
コーラム家がフェンリル討伐連合に大々的に参加し、その功績を褒め称えられ賜ったフェンリルの血液。
全て飲み干すことにより不老長寿の効果があるとされていて、コーラム家の家宝であり秘宝中の秘宝である。
「そのまさかだよ……。いや、でも……なんで……って、あぁ!?」
「ど、どうしたでござるか? 御主人」
「そういえばコーラム家の成り立ちを勉強してた時に、フェンリルって文字が確かにあった! だから見覚えがあったんだ!
その時の功績で伯爵という爵位と領地を授かって今日まで運営してきたとか。なんで気付かなかったんだろ……」
俺は頭をぐりぐりと捏ねた。一度読んでいたことなのになぜ思い出せなかったのかと……。
同時に一つの疑問が沸く。
父上はこの箱の存在を知っていたのだろうか? ということだ。
加えて言えば俺がこれを勝手に持ち出してよかったのかということだが……まぁ餞別ということにして貰ってしまおう。
ありがとう父上、こんな良い物を頂けて感謝感激雨あられです。
終わり!
「これで調合表の材料は揃っちゃったわけか……。うわぁ、まじか! 揃わないと思ったのがこんなに簡単に揃っちゃっていいの?」
「かかかかか。運命と言うのはそういうものでござる。御主人はそれを手にする運命にあったでござるよ」
もうお馴染みとなった奇妙な笑い声もなんだか耳に心地が良く、フロードも嬉しそうな様相を見せているので俺の気分も右肩上がりだ。
これで全て材料がそろったわけだが、調合法からは得体のしれない雰囲気を感じているのも確か。
でも、できるならやるだろう?
山があれば登る。川があれば泳ぐ。橋があれば渡る。
当然だ。
俺は止まらない。ここまできて止まるわけがない。
そうなるとフロードに真魔飽和水を作って貰わなければいけないということだ。
「真魔飽和水ってすぐ作れるもの?」
「かかか。流石はご主人、怖気づかずに試そうというのでござるな! ……やったことがないので不明でござるが……ふん!」
フロードは座禅を組んだまま両手を盃のように構え、そしてその上に薄水色の球体が作りだした。
水は透明なはずなので防御膜の色が水色ということなんだろう。俺にはよく分からないが。
だんだんとフロードの顔つきが険しくなり、周りの木々がそれに反応するかのように揺れ動く。
ジジジジッと奇妙な音が耳に届き、そして球体内に雷のような光が渦巻くようにうねりだした。
空気は入っていないはずだが水流が激しく動き、まるで球体内で大嵐が起きているような様子。
中に入れば王国が所有している巨大船ですら10秒以内に沈むだろう。
そんなのがあるのかどうかは知らないけれど。
「おおお。すげー。そうやって作る物なの? なんかもの凄いことになってるな……」
「初めてでござるからな。ただこうやればできるのではないかと思ったのでござるが……どうやら正解のようでござる。
しかし、これはかなりの時間がかかりそうですな。防御膜は水は完全に遮断するでござるが魔力の漏れは防げないようでござる」
「分かった。じゃあ俺は実験器具の準備と……フェンリルの血液を血漿と血球に分けておこうかな」
俺はそう言ってから革袋を探って干し肉を取り出すと、フロードの口に放り込んでやった。
突然で僅かに驚いた様子を見せたが、もぐもぐと咀嚼するとゲロロと喉を鳴らす。
「御主人、心遣い感謝するでござる。それでは小生、しばらくこれに集中しますので」
「はいはい。あんま無理はしないでくれよ。…………ええと……」
俺は調合台から調合表を取り出してじっと目を向ける。
必要な道具を頭の中でイメージし組み立てていく。
幸いなことにどの道具がどういう意図のものかというのは記載されているので準備は簡単だ。
だが。
まずはフェンリルの血液を遠心分離器にかけるという作業を行わなければならない。
遠心分離という作業法は既に知っていたが、調合台の中から取り出した遠心分離機は意味不明なほどに高度な代物。
円型のフォルム。調合台から取り出したもの以外では見ることもできないような質感。
構造なんてまるで理解できないが、使い方だけは簡単だ。血液を入れてスイッチを押すだけ。
これを見たら本職の調合師が涙を流すこと請け合いだ。
(って俺も一応本職の調合師なんだけどな……。異端だけど……。はぁ~)
この道具を使い通常の調合が行えるのであれば、俺は国の重要機関にヘッドハンティングされる程の人材になれるような気がする。
そうなってしまえば冒険者として世界中を旅する夢は潰えてしまうわけだが。
(難しいところだな。俺にとって研究機関ってのはあんまり興味ないし)
そんなことを思いながらもフェンリルの血液を遠心分離器に入れてスイッチを入れた。
残像を追うこともできないほどの速度。同心円がいくつも見えるだけなので目が回りさえしない。
一体どれほどの速度で動けばこんな現象が起きるというのか。
そんな疑問が生まれ考えているうちに、遠心分離はいつの間にか終わっていた。
血液を分離させたい、と思いながらのためか、それ用に合わせられたものだったのだろう。
なんとも簡単。
簡単過ぎるほどだが終わってしまえばこっちのものなので、俺は魔力を注ぎ込み続けているフロードに目を向けた。
傘は剣と共にしまわれたままだし、毎度持った状態で現れるという訳ではないようだ。
「ふむ……。なんといえば良いでござるか…………。温かくて心地のよいゆりかごで揺すられているような、そんな感覚でござるな」
「そうなんだ。それなら休息になるってことでいいのかな?」
「そう考えてもらっていいでござる。しかも視ようと思えばご主人の周りを見ることができるようでござる。
これなら咄嗟の時でも御主人を守ることができそうでござるよ」
「へぇ、便利だね。それって俺の目を通して周りを見るような感じ?」
フロードは座禅を組むと軽く目を閉じる。
鎧があるというのに器用なもんだ。
「それとは違う感覚でござるな。遠くを見る事は敵わぬし。周りの状況が分かる程度でござる」
「ふむふむ。だからピギュンもガジュンも出現させたときに、慌てたり狼狽えたりしないわけだね」
「そういうことでござるな。では……そろそろ……」
フロードが目を向けたのは俺の膝上にずっと置いてある箱。
好奇心が疼いているのか僅かに肩が揺れ動いている。
確かに俺も気にはなる。
しかし、同時にどんなおっかない物が出てくるのかという恐怖もあった。
勿論開けるけどな。
箱はギギリと鈍い音を立てゆっくりと開いていく。
灰色の柔らかな布地が目に飛び込み、そのなかにはめ込まれるようにして入っている小瓶。
そして脇に挟み込まれていた折りたたまれている小さな紙片。
小瓶の中にはブレディアスドラゴンの魔漏結晶よりもさらに深紅の濃い液体。
ゴクリと喉を鳴らし思わずフロードと顔を見合わせる。
「まさか……でござるが……。そのまさかのような気がしてならんでござるな」
「そ、そうだね。本当にフェンリルの……」
全ての調合材料がもしここで揃うとするのであれば、それはとても偶然のものだとは思えない。
けれどそれを確かめる術を俺は持ち合わせていないし、ここで引き返すほどに軟弱でもない。……といいな。
ドキドキと脈打つ胸に一度手を当ててから、俺は折りたたまれた紙片を広げていく。
調合表の神がかった綺麗さを保っていたものとはまるで違い、色はくすんで端がチリチリとささくれている。
中に書かれていたのはやはりというべきか、この瓶の中身についてだった。
『フェンリルの血液』
コーラム家がフェンリル討伐連合に大々的に参加し、その功績を褒め称えられ賜ったフェンリルの血液。
全て飲み干すことにより不老長寿の効果があるとされていて、コーラム家の家宝であり秘宝中の秘宝である。
「そのまさかだよ……。いや、でも……なんで……って、あぁ!?」
「ど、どうしたでござるか? 御主人」
「そういえばコーラム家の成り立ちを勉強してた時に、フェンリルって文字が確かにあった! だから見覚えがあったんだ!
その時の功績で伯爵という爵位と領地を授かって今日まで運営してきたとか。なんで気付かなかったんだろ……」
俺は頭をぐりぐりと捏ねた。一度読んでいたことなのになぜ思い出せなかったのかと……。
同時に一つの疑問が沸く。
父上はこの箱の存在を知っていたのだろうか? ということだ。
加えて言えば俺がこれを勝手に持ち出してよかったのかということだが……まぁ餞別ということにして貰ってしまおう。
ありがとう父上、こんな良い物を頂けて感謝感激雨あられです。
終わり!
「これで調合表の材料は揃っちゃったわけか……。うわぁ、まじか! 揃わないと思ったのがこんなに簡単に揃っちゃっていいの?」
「かかかかか。運命と言うのはそういうものでござる。御主人はそれを手にする運命にあったでござるよ」
もうお馴染みとなった奇妙な笑い声もなんだか耳に心地が良く、フロードも嬉しそうな様相を見せているので俺の気分も右肩上がりだ。
これで全て材料がそろったわけだが、調合法からは得体のしれない雰囲気を感じているのも確か。
でも、できるならやるだろう?
山があれば登る。川があれば泳ぐ。橋があれば渡る。
当然だ。
俺は止まらない。ここまできて止まるわけがない。
そうなるとフロードに真魔飽和水を作って貰わなければいけないということだ。
「真魔飽和水ってすぐ作れるもの?」
「かかか。流石はご主人、怖気づかずに試そうというのでござるな! ……やったことがないので不明でござるが……ふん!」
フロードは座禅を組んだまま両手を盃のように構え、そしてその上に薄水色の球体が作りだした。
水は透明なはずなので防御膜の色が水色ということなんだろう。俺にはよく分からないが。
だんだんとフロードの顔つきが険しくなり、周りの木々がそれに反応するかのように揺れ動く。
ジジジジッと奇妙な音が耳に届き、そして球体内に雷のような光が渦巻くようにうねりだした。
空気は入っていないはずだが水流が激しく動き、まるで球体内で大嵐が起きているような様子。
中に入れば王国が所有している巨大船ですら10秒以内に沈むだろう。
そんなのがあるのかどうかは知らないけれど。
「おおお。すげー。そうやって作る物なの? なんかもの凄いことになってるな……」
「初めてでござるからな。ただこうやればできるのではないかと思ったのでござるが……どうやら正解のようでござる。
しかし、これはかなりの時間がかかりそうですな。防御膜は水は完全に遮断するでござるが魔力の漏れは防げないようでござる」
「分かった。じゃあ俺は実験器具の準備と……フェンリルの血液を血漿と血球に分けておこうかな」
俺はそう言ってから革袋を探って干し肉を取り出すと、フロードの口に放り込んでやった。
突然で僅かに驚いた様子を見せたが、もぐもぐと咀嚼するとゲロロと喉を鳴らす。
「御主人、心遣い感謝するでござる。それでは小生、しばらくこれに集中しますので」
「はいはい。あんま無理はしないでくれよ。…………ええと……」
俺は調合台から調合表を取り出してじっと目を向ける。
必要な道具を頭の中でイメージし組み立てていく。
幸いなことにどの道具がどういう意図のものかというのは記載されているので準備は簡単だ。
だが。
まずはフェンリルの血液を遠心分離器にかけるという作業を行わなければならない。
遠心分離という作業法は既に知っていたが、調合台の中から取り出した遠心分離機は意味不明なほどに高度な代物。
円型のフォルム。調合台から取り出したもの以外では見ることもできないような質感。
構造なんてまるで理解できないが、使い方だけは簡単だ。血液を入れてスイッチを押すだけ。
これを見たら本職の調合師が涙を流すこと請け合いだ。
(って俺も一応本職の調合師なんだけどな……。異端だけど……。はぁ~)
この道具を使い通常の調合が行えるのであれば、俺は国の重要機関にヘッドハンティングされる程の人材になれるような気がする。
そうなってしまえば冒険者として世界中を旅する夢は潰えてしまうわけだが。
(難しいところだな。俺にとって研究機関ってのはあんまり興味ないし)
そんなことを思いながらもフェンリルの血液を遠心分離器に入れてスイッチを入れた。
残像を追うこともできないほどの速度。同心円がいくつも見えるだけなので目が回りさえしない。
一体どれほどの速度で動けばこんな現象が起きるというのか。
そんな疑問が生まれ考えているうちに、遠心分離はいつの間にか終わっていた。
血液を分離させたい、と思いながらのためか、それ用に合わせられたものだったのだろう。
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