心無いブリキ~セツナイ紙飛行機~

桜薫

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日常

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チャイムが鳴り、今日も何の意味があるか解らない授業が全て終わる。つまり放課後である。
「終わったな。今日はどっか寄ってくか?」
 いつもの様に俺に話掛けてきたのは、大神智也(おおがみ ともや)俺の唯一の友達と言っても問題無い男だ。
「おっいいね。テストも終わったし久々にパァーと」
 その隣に居るのは、藤崎茜(ふじさき あかね)智也を主人公にした物語のベタベタな幼馴染みメインヒロイン。最近その手の人気は下がり気味だが頑張れ。
「俺パス。二人で楽しんできてくれ」
 二人とはガキの頃から一緒で、よく遊んだりもする。俺はいい加減二人の邪魔だと、かなり前から思っているのだが、全然くっつく気配が無い。色々手を回してはいるんだがな……
「ちょっと何変な気使ってんのよ? あっ、ありがたいけど、今日は皆で――」
 俺は基本的に、昔からの知り合いと言うことで、事あるごとに茜に協力してやってる。いつものそれだと思い、茜は智也に聞こえないように、小声で話し掛けてくる。
「残念だが今日は本気で用事だ。まだ学校でやることがある」
「用事って何よ? 万年無気力のアンタが学校に用事なんてないでしょ」
 凄い言われようだな。コイツは俺に対しては基本的に歯に衣を被せない。この素直さを智也に向けたらどうかね。
「生徒会の仕事があるんだよ」
「「……」」
「じゃあな」
「「ちょっと待て」」
 理由を告げたので、無言を肯定と受け取り教室から出ようとしたら二人に止められた。
「今日は三人でどっか遊び行くんだよな?」
「だから生徒会でいけねぇって」
「久々にカラオケとか? それともボウリング?」
 コイツ等人の話を聞かない人種だったか? 茜はそうだった気がするが。
「だから生徒会――」
「「嘘だ!!」」
「二人同時に同じネタやんじゃねぇよ」
「そんなに遊ぶのが嫌なのか? 嘘なんか吐かなくてもそう言えば無理に誘わないのに」
「流石にこれは信じないよ」
「嘘じゃねぇよ。ホラ」
 俺はポケットに入れて置いた生徒会の証である黒ネクタイを出して見せる。
「うわぁホントだ」
「ホントに生徒会入ったんだな」
「アッサリ信じるんだな」
 コイツ等の事だから「どうせ拾ったんだろー」とか言うと思ってたんだが。
「考えてみれば当然だなって。アンタ静先輩ラヴだもんね」
「先輩に頼まれたらお前は断れないもんな」
「たしかに静はラヴだが、静の誘いは再三断ってから入ったから最近静の機嫌が悪くてな」
 俺と同じ中学だった二人は必然的に静とも同じ中学になるわけで、二人が静を理由に俺が生徒会に入ったと思うのは無理も無いが、残念ながらセツナの奸計に嵌まっただけである。別にあえて言いはしないが。
「じゃあそういう事だから今日は二人で楽しんできてくれ」
「おう。じゃあな」
「折角だから決めてこい」
「何が折角なのよ。別に何も無いんだから」
 耳打ちをしてやったが、茜にチャンスを最大限活かす気は無いようだ。どうやら今日も何も無く遊んで終わるんだろう。



 生徒会に行くと言って二人と別れたが、勿論素直に生徒会室に行って仕事をする気などは無い。今向かっているのはいつもの特等席である屋上。生徒会の仕事はそのままやり過ごすつもりだ。俺以外には使ってないであろう階段を登り切り、さらに先に行くためにドアを開けた。
――そして閉めた。今一瞬俺を陥れた魔女が笑顔で手を振っていたような気がした。気のせいだ。うん。「今日の放課後生徒会室に来い」と行っていた本人がこんな所に居る筈が無い。何より彼女が笑顔で手を振る事など無い。
 思考を一度整理して深呼吸をする。そしてもう一度目の前のドアを開ける。そこに広がっていたのは見慣れたいつもの屋上でイレギュラーは存在しなかった。
 安心して。息を吐く。やはり見間違いだったのだ。最近何かと狂わされていて、うなされているのか?
「それともここに居て欲しかった? 会いたかったとか?」
 定位置に腰を下ろして、疑問を口に出してみる。俺は無意識に求めているのか?
「誰に会いたかったんだ?」
 隣を見ると我らが生徒会長様が何食わぬ顔でいた。
「もしかしてアレ? 呼吸を止めている間だけ気配を完全に消せるカメレオン飼ってたりする?」
「私は別に蟻討伐に参加してないから安心しろ。そんな物飼っていない。それで誰に居てほしかったんだ?」
「アンタなんでココにいんの?」
「お前こそなんでココに来た? 放課後は生徒会室に来いと言っただろう」
「アンタも居るじゃねぇか」
「お前が生徒会サボってココに来ると思ったからな」
 読まれていると。やっぱり欠陥品では勝てないのかね? 
「読まれているのでは無くて。通じ合っているのだよ」
 やっぱり俺の思考読んでるじゃん。でもそれを言うなら――
「それを言うならアンタにはいつも分かり合える幼馴染みが居るじゃねぇか」
 そう。俺何かじゃどうやったって追いつけない素敵な彼氏が。
「勘違いしてるな? それとも妬いてくれているのか?」
「……行こうぜ。生徒会室。やることあんだろ?」
「ん? ああ」
 俺は答えられなかった。たぶん俺は嫉妬していて、でもきっと勘違いはしていなかったから。
「今のは何気に答えて欲しかったんだが」
 そう言っていつもの無表情に少しだけ寂しさを見せたセツナに、別に励まそうとした訳でもなんでもなく、只素直に伝えた。
「さっきの質問には答えないが、只俺だけに向けられた笑顔は嬉しかった」
「勘違いするなよ。私はお前にしか笑顔を見せないんだからな」
「新手のツンデレ? 100%デレ?」
「ああ。100%デレだ」
 そう言って慣れてない笑顔を見せてくれる人に俺はきっと惹かれて行っているのだろう。それが間違いだと理解しながらも。



 セツナからはどうやっても逃げられないと感じ始めてきたある日、生徒会室に行くと来ていたのは、静だけだった。
「あら? 今日は素直に来たのね」
「どうも行動が読まれてるみたいでな。上手く逃げられん」
 皆が集まるまでとは言わず、今日の生徒会が終わるまで寝ようと思いソファに腰を下ろす。そこで思い出した事を静に告げた。
「て言うかお前、張り出し見たぞ。確かに学年トップクラスだったけど満点じゃねぇじゃん」
「当たり前でしょう。全教科満点なんて取れるの貴方か会長ぐらいのものよ」
 確かにそうかもな、満点なんて普通の人は取れないかも知れない。セツナはリッミットブレイクしていたが。
「この前の勝負俺が勝ちじゃねぇか」
 別にコレと言って静にして貰いたい事が有るわけでは無いのだが、不正を訴える。すると静はパソコンから離れ、俺の隣に座ると頭を撫で始めた。
「じゃあお詫びに今度の休みにデートしてあげる」
「デート?」
「そう。今良さそうなお店を見つけたのよ。ほら」
 と言ってさっきまで自分がいじっていたパソコンのモニターを指さす。そこには小洒落た喫茶店らしき店が表示されていた。
「お前が行きたいだけじゃんかよ」
 と言うか、生徒会の仕事とかじゃなくて休日のオススメスポット調べてたのかよ。
「良いじゃない付き合ってくれても。夜はお友達の所に泊まるって事にするわ」
 と静が俺の耳に顔を近づけて囁くように言った所で生徒会室の扉が開いた。
「テストの点数で負けたのなら休みの日を使って勉強でもしたらどうだ?」
「あら? 今日も二人で同伴出勤なんてお熱いですこと」
「僕と雪那はスタートもゴールも同じ場所だからね。一緒になることも少なくないよ」
「コイツが勝手に付いてきているだけだ。気持ち悪い」
「あてられちゃって嫌ね。ね、七海」
 何今の静!? ブリッ子? 深く考えずにメモリーから消去しよう。うんそれがいい。そんな事よりサボる良い口実を見つけたので乗っかる事にしよう。
「そうだな。二人の邪魔しちゃ悪いし帰るとしよう」
 完璧に二人の事を応援している後輩の演技で抜け出そうとしたが今日は、ポジショニングが悪かった。今入ってきたばかりの二人は当然出入り口であるドアの前に居る。俺がドアを通る為にセツナとすれ違った瞬間、腕をがっしり掴まれていた。
「お前にそんな気が利くわけが無いだろう」
「俺ほど他人の為に生きている人間を捕まえて言うのか?」
「さっきから全部感情の無い棒読みだ」
「それにお前、人に、自分が生きている世界に、興味無いじゃ無いか」 
 聞かせるつもりは無かったのだろう。その証拠に俺以外の皆には聞こえてない。俺は「そうだな」と短く肯定して席に着いた。
「あっ、いや、そういうつもりじゃあ……」
「大丈夫」
 分っていると首を振って伝える。それでも空気は少し重くなってしまった。
「なぁに? 何言われたのか聞こえなかったけど、会長に虐められたの? お姉ちゃんが慰めてあげる」
 俺の首に手を回しながら静が言う。でもこれはセツナを責めてるわけでは無くて、場を和ませようとしてくれていて。そうゆうのには敏感な人だから。でも俺は無意識に出たのであろうその言葉にまだ慣れずに居て。今日はとてつもなく居心地が悪かった。
「なんの話をしていたんだったかな?」
「私とこの子が週末のデートは何時に待ち合わせにしようかって言う話よ」
「ちょっと待て、いつの間にデートは決定事項になった?」
「最初からよ。どうせこの子休日は予定無いし」
「今度の休日は生徒会に入った歓迎会が入っている。残念だったな」
「ちょっそんなの僕の時無かったけど」
「歓迎してないからな」
「確かに私の時もして貰ったけど。そんなイキナリ」
「黒川はして貰ってたの!?」
「イキナリじゃない前から考えていたことだ。それにシズカの時同様、会長の私と二人っきりでだ」
「そんなのデートじゃない。ダメよ」
「シズカがどうしてもと言うならダブルデートでも良いぞ」
「成る程。私とこの子をダシに先輩とデートするのが本当の目的なんですね会長」
「違う! 私とナナミお前はハズレとだ」
「ハズレってもうちょっと言い方あるよね?」
「残念だけどあの子は人に懐かないの。私だって休日に連れ出すのに苦労したんですからね」
「可哀想に懐かれていないんだな。私は懐かれているから大丈夫だ。なぁナナミそれでいいよな?」
「えっ? ああ、うん」
 イキナリ話を振られて適当に返事をする。今まで全く話を聞いてなかった。思考を止めていた? いや他のことを考えていたんだな。
「ちょっと。私より会長のが好きだって言うの?」
「え? 何が? 好きだよ静」
「まぁそうよね。 フフフ、もう可愛いんだから。やっぱり私に一番懐いてるわよね」
 今回も脊髄反射のオウム返しで返したが、静が顔を赤らめて喜んでいるから問題無いんだろう。なんかブツブツと言っているが。
「ちょっと待て! 今のは疑似誘導尋問だろう。無効だ。ダブルデートは私とがいいだろ?」
「ダブルデート? それならアンタは幼馴染みの旦那との方がお似合いだろう」
 気になる単語があったので反応してやっと正常に答える。
「決まりね。私と七海。市川、清美夫婦のペアね」
「休日は東条七海君の歓迎会をします。会長命令です。意見は認めません」
「ちょっとズルイわよそんなの」
「意見は認めません」
「歓迎会とかダルイんでいいです」
「意見は認めません」
「ちなみに僕の歓迎会は?」
「……」
「無視!?」
 無表情のセツナに全員が押し切られて休日の予定を強引に決められてしまった。



「では気を取り直して今日の生徒会活動は部活動を回り、意見や要望などを聞きます」
 生徒会で唯一生徒の為に動く副会長様が一度は荒廃した会議を仕切り直す。
「と言うわけで、皆さんこれから部活動を回りますよ。はい動いて動いて」
 パンパンと手を叩くのを合図に皆が席を立ち行動を共にする。
「すまない二人は先に行っててくれ。私はさっきの事をナナミに謝らなきゃならない」
 生徒会室を出ようとしていた二人はセツナの言葉に振り返る。
「頼む……私はさっきナナミに非道いことを言ってしまったんだ」
「先に行っているから早めに追いついてくるんだよ」
「七海、会長に誘惑されちゃダメよ」
 そう言って二人は生徒会長室から出て行った。その背にセツナは「ありがとう」と小さくつぶやいていた。
「それで、なんか話でもあんのか?」
「だからさっきの――」
「別に謝る必要なんてねぇよ。本当の事だしな」
「だろうな。私も別に謝る気など最初から無い」
 じゃあなんで引き留めたんだよ。
「用が終わったのなら行くぞ」
「待て、用はまだある」
「なんだよ?」
「お前は本当に私を見ているようだよ」
「自分が嫌いだって話か?」
 ならその自分に似ている俺の事がさぞお嫌いなんでしょうよ。
「いちいち口を挟むな」
「これはすいません」
 もの凄く不愉快さを表に出したので謝っておく。
「お前は昔の私と同じで人が、世界が嫌いだ」
 喋りながら俺の近くに来る。
「だから」
 そして座ったままの俺を抱き締めて言った。
「私に興味を持て。全ての人に興味を持てと言わん、世界の全てを好きになれと言わん。だがな、私を好きになれ。……いや、好きにさせてみせる。お前が思っているほど周りはつまらなくないよ」
 俺はその言葉を聞いても抱き締めてくれているセツナに身体を預けられずに居た。
「そんな事言って良いのかよ?」
「ああ」
「取り返し付かなくなるぜ?」
「ああ」
「俺、アンタに惚れちゃうぜ?」
「ああ」
「奪い取っちゃうぜ」
「それは誤解だ。私はアイツの物などでは無い」
 何も言ってないのにそのセリフが出る時点でどうかと思うのだが、まぁいいか。俺は自分を抱き締めてくれている細い身体に頭を預けた。
「ちょっと……だけ、頑張ってみる」
「ああ。私に惚れて私を惚れさせろ」
 もう話は終わっていたのだが、もう少しだけこの腕の中に居たくて、このまま動かないでいた時、それを受け止めてくれたのが嬉しかった。



「それで今日はどこから回るんだ?」
 先行していた二人に追いついてセツナが目的地を聞く。俺は俺で追いついた途端に静に捕まっていた。
「七海、会長に誘惑されなかった?」
「んー? されたと言えばされた」
「あの性悪女、情けを掛けてやれば抜け駆けしやがったわね」
「今日は運動部から――」
「フッ、ナナミはもう私にメロメロだぞ残念だったな」
「君から聞いたんだから僕の話も聞こうよ」
「なっ、そんな事ないわよ私の方が好きよね?」
「ナナミは私に惚れているよ。な?」
 そんな事聞かれても選ばなかった方に殺されるの目に見えてるじぇねぇか。そんな事を思いながら答えを出さずにいる俺に対して二人はさらなる行動を取る。
「私の方がおっぱい大きいわよ」
 と言いながら俺の腕に胸を押し当ててくる静。
「私は魅力的な年上のお姉さんだぞ。それに私だって胸ぐらいある。そっちは意味も無くデカイだけだ」
 と言って俺に腕を絡ませるセツナ。
「私だって年上のお姉ちゃんよ。この子は大きければ大きいだけ幸せなのよ」
「それこそ年がより上の方が好きだ」
「はい到着。皆さん仕事しましょうね」
 助かった。ナイス爽やかボーイ。このままでは俺に変な性癖を勝手に付けられる所だった。
「剣道部か?」
「そう今日は剣道部からだ」
 たどり着いた場所は剣道場。体育館とは別の場所にある建物だ。そこで練習してるのは勿論剣道部。剣道部だって知ってたら今日の生徒会はバックレたんだがな。さてどうやって逃げるか……
「部員が居ないじゃ無いか」
 剣道場を覗いてみると、そこには練習をしている部員は一人も居なかった。唯一いた女子生徒がこちらに気付き駆け寄ってくる。
「生徒会の皆さんですね」
「そうだけど君は?」
 こうゆう事の対処は決まってウチの爽やか君の担当です。
「私は剣道部の人に伝言を頼まれましてですね」
「伝言?」
「はい。急遽近隣の学校との合同練習が入ったから、今日来る予定の生徒会には申し訳ないけど後日にしてくれ。と伝えてくれと言われました」
「そうか確かに承ったよありがとう」
「では私はこれで」
  本来剣道部とは関係無いのであろう女子生徒は他の予定があるのか、用件を伝えると行ってしまった。
「って事は今日の生徒会は終わりか? じゃあ帰るぞ」
「まぁ待て」
 さっさと退散を決めようかと思ったが、セツナにがっしり肩を掴まれてしまった。
「なんだよ? 肝心の剣道部が居ないんじゃ話にならんだろう」
「折角だから男二人で勝負してみたらどうだ?」
「それは面白いね」
 そう言ってセツナは剣道場にあった竹刀を二本取ってこちらに投げてくる。
「やなこった」
 幼馴染み様は受け取ったようだが、俺は無視をしたので竹刀は床に落ちる。
「やっぱり会長には懐いてないのね」
「そんな事無い反応出来なかっただけだ。すぐ拾うさ」
「拾わねぇよ」
「ちなみに勝った方には私がキスしてやろう」
「「勝負だこの野郎!」」
 竹刀を拾って向かい合う。
「最初会った時から」
「薄々感じてたんだよね」
「アンタは」
「君は」
「俺の」
「僕の」
「「敵だ!」」
 お互い全速力で突進してぶつかった所で竹刀を交合わせてつばぜり合いになる。
「俺は剣道とかよくわかんねぇからよ、ルール無しの真剣勝負でいいか?」
「賛成だね。勝負はどっちかが動け無くなるまでやってこそだからね」
 何度が切り結ぶが、お互い一歩も引かない一進一退の攻防が続く。
「罪な女ですね会長」
「何がだ?」
「この人も鈍感体質なのね」
「私はお前に嫉妬しているがな」
「嫉妬?」
「どう見てもお前に惚れてるじゃ無いか」
「あれは違うわ。私の片思い。自分でも分るのよ私は最低な女だって。私は彼にだけは愛される資格は無いわ……」
「訳ありか。私も似たような物だがな」
「お互い大変ですね」
「みたいだな」
 戦ってみて分ったけどコイツ色んな意味で完璧に強い。天敵だな。苦手なタイプだ。
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 一瞬で間合いを詰められて持っていた竹刀を弾かれてしまった。
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「武器が無くなった以上僕の勝ちかな?」
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「しゃあねぇーか」
「降参かい?」
「約束され○勝利の剣」
「え!?」
 咄嗟に反応して竹刀で防がれるが、竹刀をそのまま両断して柄だけにする。
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「真剣勝負って言っただろ―が」
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「こんなのパチモンだよ只の土木機材だ」
「僕だってこんなの修学旅行で手に入れたんだ。君も来年行けばきっと貰えるよ」
 よく見ると修学旅行のお土産の木刀宜しく『銃刀法違反』と掘られている。まぁ俺のチェーンソーも平仮名で『えくすかりばー』って書いて有るけどさ。
「まぁいいや、んじゃこっからは本気で行くぜ」
「こっちこそ。まだ解放していないしね」
「お前等そろそろ終わりにしよう」
 これからって時にセツナから水を差す声が掛けられる。
「なんだ、幼馴染みがバラバラになんのが怖いのかよ?」
「かわいい新入生が死後の世界に旅立つのが心配なんだね」
「「あぁん?」」
 お互いガンを飛ばし合う。
「私もシズカもぶっちゃけ飽きた。最初から剣道じゃないし」
「コイツが負けを認めたら終わってやるよ」
「ほら、先輩の胸を借りられて光栄ですって言ってごらん」
「「あぁん?」」
 再びガンを飛ばし合う。
「今日の生徒会はコレで終わりだ。シズカさっきお前が調べてた店行って見ないか?」
「良いわね。これから行って見ましょう」
 セツナのコークスクリューブローを受けた死体が二体転がっていたが、この日剣道部は剣道場を使わなかったので誰も知る事は無かった。



「ん? 今日はセツナ一人か?」
 授業が全て終わり、生徒会室に行くとセツナが一人応接用のソファに座って居るだけだった。
「ああ。きっとホームルームが長引いているのだろう。シズカのクラスにはよくある事だ」
「ボンクラは? アレは同じクラスだろ?」
「アレはクラス委員もやっているんだよ。そっちの用件で遅れるらしい」
 殊勝なことで、マネはしたくないね。陽当たりの良い人気者は辛いねぇ。
「暇なのか?」
 セツナは何をする訳でも無く、ソファの上で暇を持て余していた。
「今日の仕事は皆集まらんと仕事にならん」
 成る程。仕事も始められず他にやることも無い、と。
「セツナ耳掃除して」
「は!?」
「だから耳掃除。何かおかしい?」
「いや、お前の口からまさかそんな甘えたようなセリフが出て来るとは」
「別に甘えてるつもりは無いんだけどな、今日は授業中にあんまり出来なかったから結構キツイ」
「別に構わないが、生徒会室に耳かきなど無いぞ」
「俺が持ってるから問題無い」
 適当な返しをしてソファに倒れ込み、セツナの膝の上に頭を置く。
「ちょっ膝枕なのか!?」
「普通こうでしょ?」
「まっ、まぁそうだよな」
 セツナがなんだか焦ってる様だが気にしない、もう誘惑に耐えるのも辛くなってきた。
「……」
「……」
「おい。耳かきは何処にある?」
「そんな物は無い。オヤスミ」
「オヤスミじゃない。まだ私にする事があるだろう?」
 一度眠る事に脳を切り替えたので、もはや眠くて脳が働かない。寝ぼけていると言うのだろうか? すでにまともな思考はしていない。もはや考えるのは止めてしまおう。
「何? オヤスミのチュウ?」
「そんな筈無いだろう。甘え過ぎだ」
「セツナは冷たいなぁ」
「ちょっと待て。セツナは? 『は』ってなんだ? 他はオヤスミのチュウをしてくれると言うのか? シズカか? そうか? そうなんだな」
「ごめん。もう無理、限界」
「貴様只寝たかっただけだな?」
「そうだけど」
「今日は授業中にあんまり眠れなかったから、丁度良く暇そうにしていた私の膝枕で寝たい、と?」
「正解。指で髪を梳いてくれると良く懐きます。オヤスミ」
「うぅ、反則だろう。なんで今日はこんなに可愛いんだ?」
 セツナの細い指が髪を梳いてくれるのが気持ち良かったからなのか、セツナの膝枕が温かかったからなのか、単に睡魔の誘惑に抵抗するのが限界だったのか、俺はすぐに眠りに落ちた。



「それにしても髪を梳いているだけで、普段の無表情から考えられないくらい、目を細めているな」
「会長遅れてスミマセ――」
「なっ、なんだシズカか。遅かったな」
「今凄い音しましたけど?」
「そうか? きっ、気のせいじゃないか?」
「明らかに目の前でしましたけど」
「何か凄い高所から落ちる夢を見た。……ん、静ー。眠い」
「ハイハイ。何だ貴方が寝ぼけてたのね」
「ナナミはその寝起きが悪いのか?」
「寝起きが悪いと言うか、この子眠いと幼児退行というか、妙に甘えん坊になるのよ。会長もなんかされませんでした?」
「わっ、私は特に何もされなかったぞ。うん。非道いと膝枕をさせられたり、髪を梳いてくれとか言うのか?」
「それぐらいは基本ね、むしろ軽い方。人が居るところでも、胸枕をねだってきたりするわ」
「そうか……シズカ、ソイツをしっかり抑えて離すなよ」
「あらぁ」
「何だ!?フェザー級のベルトを賭けて戦ってる夢を見たぞ」
 それに凄い衝撃とダメージ憶えている。それとたいして寝ていないのに眠気も吹っ飛んでいる。何が起こった!?
「貴方、大丈夫?」
「静来てたのか。気付かなかった」
 そう言えば静が来た時に一度目を覚ましたような気がするが……夢か?
「起きたか。おはようナナミ」
「ん?ああ。セツナおはよう……なんか顔引きつってない?」
「何を言っている。私はいつも通りだぞ」
「明らかに普通じゃ――ゴフッ」
「私はいつも通りだろ?」
「ハイ。イツモドオリデス」
 静でもたまに思うけど、美人って怒ると普通より怖いよね。特にセツナなんてダーク系美人だから余計――
「やだな~ナナミったら、私は別に怒ってないよ」
 そんな事を棒読みで良いながら容赦なくコークスクリューブローを放ってくるセツナ。めっちゃ怒ってるじゃん。
「だ・か・ら怒ってないよ~」
 じゃあなんで必殺技を放つの? って言うかなんで声に出して無いのに解るの?俺、口に出してた?
「うんぶつぶつと。私、チリバツで聞いちゃいました」
 貴方は何処の学園のアイドルですか? 折角生徒会長なら甘甘お姉ちゃんが良かったと思ってみたり。
「何だお前は弟くんって呼ばれたいのか?」
 今日の俺がおかしいのか? それとも今のセツナが最強なのか?
「私はきっとお前に対してだけ全て100%出せるんだ。私を怒らせない方が身のためだぞ」
 今日はエンペラータイムですか。セツナにと言うより他の所から怒られそうで怖いわ。
「遅れてすまない。……どうしたんだい? フェザー級チャンピオンとでも戦った様な顔をして?」
「気をつけろ。なんだか今日はセツナの機嫌が悪いんだ。誰かにセクハラでもされたんじゃないか?」
「ナ・ナ・ミくぅ~んもう一発いく?」
 その時のセツナの顔は見たこともないような素晴らしい笑顔だった……
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