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今日は卒業式。当然の如く俺は式には参加していない。いつもと違うのは、
今日は例の桜の木の下に居るという所だろうか。
「お前は本当に出なくて良いのか?」
「卒業式よりもお前からの呼び出しの方が私には大事だよ。……最後だしな」
生徒会長で卒業生であるセツナと一緒に。
「代表挨拶は?」
「そんなの適任がいるだろう」
「それもそうだな」
あの後二人に何があったのかは分らないが、特に二人とも変わり無いところ
を見ると、全て話してもそのままの関係で居ることを選んだのかね? その辺
はさすがの一言に尽きる。旦那なら心配ないとは思って居たが。
「それで? こんな所に私を呼び出した理由は何なんだ?」
「あー。うん、告白」
「そうか」
「あんまり驚かないんだな」
「遅すぎる位だからな。待ちくたびれたよ」
「悪いな。あの関係が心地よくて、結局ここまで来ちまった。でも、最後だし
な」
「緊張してるのか?」
「告白ってなんて言ってすればいいのかな?」
「知るか! さっきのも告白と言えば告白だぞ。それでいいなら私も返事する
ぞ。早くしないと式が終わって皆来るぞ」
いや、やっぱりそこはちゃんとした方が良いよな。よしっ。軽く息を吐いて
気合いを入れる。
「セツナ。好きだよ。たぶん最初からずっと。でも、認めたくなくて、負けた
くなくて、ずっと逃げてたけど、だけどやっぱり重力みたいに惹かれていっ
た。大好きだよ。何も知らない俺に恋を教えてくれた貴女が。誰よりも」
セツナは俺の告白を受けて顔を赤くする。少し照れながら顔を近づけて、唇
を重ねる。
「ありがとう。コレは約束の私の初めてだ。私もお前が大好きだよ」
体育館から人が少しずつ出てくる。式が終わったんだろう。
「……でも、ゴメンな。お前の気持ちには応えられない」
「うん。知ってる。それでも、伝えたかったから、好きだったから」
「うん。ありがとう」
卒業生達の喧噪がココまで聞こえてくる。終わったんだな。
「早く行かないと無くなっちまうぞ。競争率高いんじゃ無い? 旦那の第二ボ
タン」
「大変だな。ウチはブレザーだから、第二ボタン無くなると、上着として致命
傷だから」
「何か不安?」
「私なんかでいいのかな?」
「さぁ? 俺はそのなんかな人にフラれたからな」
「うっ、ごめん」
別に俺の事なんか今気にする必要無いだろうに。ホントに俺には最強なの
に、旦那相手だとダメだな。
「わかんないけどさ。俺が好きになった人は、美人で完璧でたまに可愛くて、
とにかく凄い魅力的な人だったよ。だからさ少し勇気出してみたら? ダメだ
ったらフラれたモノ同士くっつく?」
「うん。ありがとう。そうだな、私には大好きなお前が居るしな。そっちの方
が良いのかも知れないしな。なんて言ってみたりして。行ってくるよ」
「おう。行ってこい!っとちょっと待って」
俺は自分の付けてるネクタイを外して、最初に会った時と同じ様に髪型をセ
ットしてネクタイをリボンの様に結ぶ。
「俺が知ってる最強のセツナ。今度こそ行ってこい!」
「……最後にこの前の奴やってくれないかな」
「頑張れ、セツナ!」
「うん、頑張る!」
今度は自分声に出してセツナを送り出してから、大の字に寝そべる。
「はぁ~かっこわりぃ」
フラれっちまったな。こうなるって分ってたのに、フラれるって分ってたの
に、この先は暗闇だって分ってたのに進んじまった。それ程に魅力的だったか
ら。
「負け戦はしない主義なんだけどな」
こんな所で何時までもこうやってても仕方無いな。生徒会で軽い後片付けの
仕事があったな。静を手伝いにでも行くか。そう思った時、丁度一組の男女が
来た。これから告白か?
「すんませんね。すぐ行くんで」
立ち上がり。桜の木を後にする。はぁ、かっこ悪。
特に探すこと無く静は体育館の舞台袖の奥の小部屋で作業をしていた。
「あら? 来てたの、珍しいわね。 てっきり貴方の事だから卒業式なんてサ
ボると思っていたわ」
「あぁ。生徒会の仕事があったからな」
「そう。会長にフラれて惨めな自分を私に慰めて貰いに来たのね」
話聞けよ。と、言う暇も無く、静は俺の事を抱きしめてくれる。
「俺はまたこうやって何かある度にお前に甘える。……最低、だな」
「私はいいわよ。只、貴方がずっと側に居てくれるだけで」
「側に居るよ。キミの夢が覚めるまでは」
「なぁにそれ? フフ、じゃあ新学期は二人で生徒会でも一緒にやりましょう
か」
「俺、次は生徒会やらないよ。元々やるつもり何て無かったし。静も生徒会な
んて辞めてさ、俺と放課後遊び行こうよ。そんでさ、思い出いっぱい作ろう。
忘れないように。……うんうん、忘れても、いいように」
「そうね。それも良いかもしれないわね」
俺と静はしばらくそのままで居た。今ままで通り、抱きしめてくれるのは静
だけで、俺は相変わらず、静を抱きしめる事は出来なかった。最初に会った時
から変わらない関係のまま。只俺は、受け止めて貰うだけだった。それに甘え
て依存していくんだ。これからも。
「そう言えば、生徒会室で待ってるから貴方に伝えてくれって、先輩から頼ま
れてたんだったわ」
「すさまじく行きたくねぇ」
「最後なんだから行ってらっしゃい。私はこれ片付けてもう帰るから」
静に言われて、仕方無く生徒会室の前に来る。ドアを開けると勿論、見飽き
た不愉快な爽やか顔がいるわけで。
「ご卒業オメデトウゴザイマス。あばよ」
「キミに祝って貰えるとは思って無かったよ。ありがとう。取りあえず座った
ら?」
「いや、帰るからいい」
「これでもキミには感謝してるんだよ。今日はそのお礼でもと思ってね」
ウルトラめんどくさいけど仕方無く椅子に座る。対面に座る男の制服のボタ
ンは何かに引っかけたのだろうか、ご丁寧に二番目だけが外れてる。
「なんだよ礼って? あの訳の分らん本刀ならいらねぇーぞ」
「!? それは困ったね」
マジでソレだったのかよ。超いらねーんだけど。
「冗談だよ。アレは僕の魂と繋がっていて、いつでも呼び出せるけど、決して
切り離せない物だからね」
「何その今更などうでも良い設定」
そんな雑談をしている間に旦那は自分のネクタイと校章のバッヂを外す。
「ネクタイは同じだけど、校章は会長と副会長のは違うんだよ。元々キミに渡
すつもりだったんだけど、結局役職は変わらずじまいだったからね」
「俺生徒会続ける気無いんだけど」
「構わないよ。次の役員には新しいのがいくしね。コレは僕のをキミに貰って
欲しいんだよ。受け取ってくれるかい?」
最後の最後まで勝てなかったのに、コレを受け取れってか? ホントにどこ
まで格好いいんだか。
「なぁ旦那。……いや、先輩。俺はこんな性格だしよ、今まで俺に先輩なんて
モンはいなかった。でも先輩は思いっきり、戦ってくれて。正反対にいる俺に
色んな事を教えてくれた。これは先輩から貰った色んな物を形として受け取る
よ。その、なんか、照れるけど、ありがとう、ございました」
「いや、僕の方もキミに色々助けられたよ。ありがとう」
「こっちもその、礼……いや、餞別かな?」
「コレは?」
俺は、カプセル状の薬と別の薬品の入った注射器の様な器具を渡す。例の近
い将来異常を起こすであろうセツナの身体に効く薬だ。
「まぁ詳しい説明は省くが、この先セツナに異変が起ったら使ってくれ。出来
れば先に俺に相談してからにして欲しいんだが、まぁ取りあえずなんかあった
ら使えば大丈夫だ」
「何故コレを僕に?」
「えっ? 何でって? 必要だろ?」
「確かに必要だけど、雪那に直接渡せばいいだろう? 異常が出るまでキミが
持ってても良いし」
確かに、なんで渡したんだろうな? セツナにはフラれたから関係無いと言
えばもう関係ない。いや、だからか。だからセツナじゃなくて旦那に渡したん
だ。コレまでの礼として。
「だから餞別だよ。セツナは関係無い。俺はアンタにソレを渡したんだ。後は
どう使おうがアンタの自由だ」
「分ったよ。ありがとう。確かに受け取ったよ」
「じゃあな。もう行くぞ。せいぜいお幸せに」
「あぁ。僕はもう少しココに居るよ。思い入れがあるからね」
生徒会室を後にする。ホントに最後の最後の最後まで勝てなかったな。
結局ココに来てしまう。何をするわけでも無く、何の用が有るという訳でも
無い。ココは落ち着く、だから好き。それは誰も居ないから?
「やっぱり俺は独りがお似合いなのかね」
いつもの様に紙飛行機を作る。コレでは飛べないと分っていながら飛ばす。
落ちると決まっているのに、それでももしかしたら結果が変わるかも知れない
と、希望を込めてあがく。
「まるで今の俺みたいだな」
せめて紙飛行機だけでも、そんな思いを込めて紙飛行機を飛ばす。
「紙飛行機を飛ばすと幸せも一緒に飛んでいくぞ」
例の如く飛ばせなかった。
「違うよ。きっと紙飛行機はその人の幸せで飛ぶんだ。だから紙飛行機を上手
く飛ばせる人は幸せな証拠」
「お前は上手く飛ばせるのか?」
「いつも落ちるよ。特に今はフラれたばっかだしね」
「お前には、なにもして上げられ無かったな」
「いや、スゲーたくさんして貰ったよ。ありがとう。ネクタイはそのお礼にや
るよ」
「じゃあ私はコレをやろう。生徒会長の校章だ。お礼というか、私の事忘れな
いでくれたら嬉しい」
「貰っとく。忘れないよ。きっと」
「なぁ。コレで満足か? 鏡の様な自分の姿を見せて、私の気持ちに気付かせ
る。自分の気持ちを犠牲にしてでも。……気づいてないと思ってたか? お前
にそっくりな私が」
「そんな格好いい物じゃないよ。只、本気で好きになっちゃっただけ。そした
らその人の幸せな顔が見たくなっただけ」
「本当にお前は私にそっくりだな。一目見たときから変わらず大っ嫌いだよ」
「俺も自分に似てるアンタが嫌いだよ。……だから、どうかお幸せに」
俺は紙飛行機を置いて立ち上がり、振り向かず屋上を後にする。
――サヨナラ。大嫌いで、大好きなセツナ。
紙飛行機を飛ばす――
僕はもう欠陥品じゃない。今日は遠くまで飛べそうだ。キミから貰った翼の
おかげで。でも本当はキミと一緒に飛びたかった。キミを飛ばせて上げたかっ
た。けど、僕だけが飛んでしまった。キミから貰った翼を使って。
僕は大空を飛ぶ――
あぁ、僕はどこまで飛んでいけるのだろうか? そしてキミは何時追いつい
てきてくれるのだろうか?
――アリガトウ。大嫌いで、大好きなナナミ。
Fin
今日は例の桜の木の下に居るという所だろうか。
「お前は本当に出なくて良いのか?」
「卒業式よりもお前からの呼び出しの方が私には大事だよ。……最後だしな」
生徒会長で卒業生であるセツナと一緒に。
「代表挨拶は?」
「そんなの適任がいるだろう」
「それもそうだな」
あの後二人に何があったのかは分らないが、特に二人とも変わり無いところ
を見ると、全て話してもそのままの関係で居ることを選んだのかね? その辺
はさすがの一言に尽きる。旦那なら心配ないとは思って居たが。
「それで? こんな所に私を呼び出した理由は何なんだ?」
「あー。うん、告白」
「そうか」
「あんまり驚かないんだな」
「遅すぎる位だからな。待ちくたびれたよ」
「悪いな。あの関係が心地よくて、結局ここまで来ちまった。でも、最後だし
な」
「緊張してるのか?」
「告白ってなんて言ってすればいいのかな?」
「知るか! さっきのも告白と言えば告白だぞ。それでいいなら私も返事する
ぞ。早くしないと式が終わって皆来るぞ」
いや、やっぱりそこはちゃんとした方が良いよな。よしっ。軽く息を吐いて
気合いを入れる。
「セツナ。好きだよ。たぶん最初からずっと。でも、認めたくなくて、負けた
くなくて、ずっと逃げてたけど、だけどやっぱり重力みたいに惹かれていっ
た。大好きだよ。何も知らない俺に恋を教えてくれた貴女が。誰よりも」
セツナは俺の告白を受けて顔を赤くする。少し照れながら顔を近づけて、唇
を重ねる。
「ありがとう。コレは約束の私の初めてだ。私もお前が大好きだよ」
体育館から人が少しずつ出てくる。式が終わったんだろう。
「……でも、ゴメンな。お前の気持ちには応えられない」
「うん。知ってる。それでも、伝えたかったから、好きだったから」
「うん。ありがとう」
卒業生達の喧噪がココまで聞こえてくる。終わったんだな。
「早く行かないと無くなっちまうぞ。競争率高いんじゃ無い? 旦那の第二ボ
タン」
「大変だな。ウチはブレザーだから、第二ボタン無くなると、上着として致命
傷だから」
「何か不安?」
「私なんかでいいのかな?」
「さぁ? 俺はそのなんかな人にフラれたからな」
「うっ、ごめん」
別に俺の事なんか今気にする必要無いだろうに。ホントに俺には最強なの
に、旦那相手だとダメだな。
「わかんないけどさ。俺が好きになった人は、美人で完璧でたまに可愛くて、
とにかく凄い魅力的な人だったよ。だからさ少し勇気出してみたら? ダメだ
ったらフラれたモノ同士くっつく?」
「うん。ありがとう。そうだな、私には大好きなお前が居るしな。そっちの方
が良いのかも知れないしな。なんて言ってみたりして。行ってくるよ」
「おう。行ってこい!っとちょっと待って」
俺は自分の付けてるネクタイを外して、最初に会った時と同じ様に髪型をセ
ットしてネクタイをリボンの様に結ぶ。
「俺が知ってる最強のセツナ。今度こそ行ってこい!」
「……最後にこの前の奴やってくれないかな」
「頑張れ、セツナ!」
「うん、頑張る!」
今度は自分声に出してセツナを送り出してから、大の字に寝そべる。
「はぁ~かっこわりぃ」
フラれっちまったな。こうなるって分ってたのに、フラれるって分ってたの
に、この先は暗闇だって分ってたのに進んじまった。それ程に魅力的だったか
ら。
「負け戦はしない主義なんだけどな」
こんな所で何時までもこうやってても仕方無いな。生徒会で軽い後片付けの
仕事があったな。静を手伝いにでも行くか。そう思った時、丁度一組の男女が
来た。これから告白か?
「すんませんね。すぐ行くんで」
立ち上がり。桜の木を後にする。はぁ、かっこ悪。
特に探すこと無く静は体育館の舞台袖の奥の小部屋で作業をしていた。
「あら? 来てたの、珍しいわね。 てっきり貴方の事だから卒業式なんてサ
ボると思っていたわ」
「あぁ。生徒会の仕事があったからな」
「そう。会長にフラれて惨めな自分を私に慰めて貰いに来たのね」
話聞けよ。と、言う暇も無く、静は俺の事を抱きしめてくれる。
「俺はまたこうやって何かある度にお前に甘える。……最低、だな」
「私はいいわよ。只、貴方がずっと側に居てくれるだけで」
「側に居るよ。キミの夢が覚めるまでは」
「なぁにそれ? フフ、じゃあ新学期は二人で生徒会でも一緒にやりましょう
か」
「俺、次は生徒会やらないよ。元々やるつもり何て無かったし。静も生徒会な
んて辞めてさ、俺と放課後遊び行こうよ。そんでさ、思い出いっぱい作ろう。
忘れないように。……うんうん、忘れても、いいように」
「そうね。それも良いかもしれないわね」
俺と静はしばらくそのままで居た。今ままで通り、抱きしめてくれるのは静
だけで、俺は相変わらず、静を抱きしめる事は出来なかった。最初に会った時
から変わらない関係のまま。只俺は、受け止めて貰うだけだった。それに甘え
て依存していくんだ。これからも。
「そう言えば、生徒会室で待ってるから貴方に伝えてくれって、先輩から頼ま
れてたんだったわ」
「すさまじく行きたくねぇ」
「最後なんだから行ってらっしゃい。私はこれ片付けてもう帰るから」
静に言われて、仕方無く生徒会室の前に来る。ドアを開けると勿論、見飽き
た不愉快な爽やか顔がいるわけで。
「ご卒業オメデトウゴザイマス。あばよ」
「キミに祝って貰えるとは思って無かったよ。ありがとう。取りあえず座った
ら?」
「いや、帰るからいい」
「これでもキミには感謝してるんだよ。今日はそのお礼でもと思ってね」
ウルトラめんどくさいけど仕方無く椅子に座る。対面に座る男の制服のボタ
ンは何かに引っかけたのだろうか、ご丁寧に二番目だけが外れてる。
「なんだよ礼って? あの訳の分らん本刀ならいらねぇーぞ」
「!? それは困ったね」
マジでソレだったのかよ。超いらねーんだけど。
「冗談だよ。アレは僕の魂と繋がっていて、いつでも呼び出せるけど、決して
切り離せない物だからね」
「何その今更などうでも良い設定」
そんな雑談をしている間に旦那は自分のネクタイと校章のバッヂを外す。
「ネクタイは同じだけど、校章は会長と副会長のは違うんだよ。元々キミに渡
すつもりだったんだけど、結局役職は変わらずじまいだったからね」
「俺生徒会続ける気無いんだけど」
「構わないよ。次の役員には新しいのがいくしね。コレは僕のをキミに貰って
欲しいんだよ。受け取ってくれるかい?」
最後の最後まで勝てなかったのに、コレを受け取れってか? ホントにどこ
まで格好いいんだか。
「なぁ旦那。……いや、先輩。俺はこんな性格だしよ、今まで俺に先輩なんて
モンはいなかった。でも先輩は思いっきり、戦ってくれて。正反対にいる俺に
色んな事を教えてくれた。これは先輩から貰った色んな物を形として受け取る
よ。その、なんか、照れるけど、ありがとう、ございました」
「いや、僕の方もキミに色々助けられたよ。ありがとう」
「こっちもその、礼……いや、餞別かな?」
「コレは?」
俺は、カプセル状の薬と別の薬品の入った注射器の様な器具を渡す。例の近
い将来異常を起こすであろうセツナの身体に効く薬だ。
「まぁ詳しい説明は省くが、この先セツナに異変が起ったら使ってくれ。出来
れば先に俺に相談してからにして欲しいんだが、まぁ取りあえずなんかあった
ら使えば大丈夫だ」
「何故コレを僕に?」
「えっ? 何でって? 必要だろ?」
「確かに必要だけど、雪那に直接渡せばいいだろう? 異常が出るまでキミが
持ってても良いし」
確かに、なんで渡したんだろうな? セツナにはフラれたから関係無いと言
えばもう関係ない。いや、だからか。だからセツナじゃなくて旦那に渡したん
だ。コレまでの礼として。
「だから餞別だよ。セツナは関係無い。俺はアンタにソレを渡したんだ。後は
どう使おうがアンタの自由だ」
「分ったよ。ありがとう。確かに受け取ったよ」
「じゃあな。もう行くぞ。せいぜいお幸せに」
「あぁ。僕はもう少しココに居るよ。思い入れがあるからね」
生徒会室を後にする。ホントに最後の最後の最後まで勝てなかったな。
結局ココに来てしまう。何をするわけでも無く、何の用が有るという訳でも
無い。ココは落ち着く、だから好き。それは誰も居ないから?
「やっぱり俺は独りがお似合いなのかね」
いつもの様に紙飛行機を作る。コレでは飛べないと分っていながら飛ばす。
落ちると決まっているのに、それでももしかしたら結果が変わるかも知れない
と、希望を込めてあがく。
「まるで今の俺みたいだな」
せめて紙飛行機だけでも、そんな思いを込めて紙飛行機を飛ばす。
「紙飛行機を飛ばすと幸せも一緒に飛んでいくぞ」
例の如く飛ばせなかった。
「違うよ。きっと紙飛行機はその人の幸せで飛ぶんだ。だから紙飛行機を上手
く飛ばせる人は幸せな証拠」
「お前は上手く飛ばせるのか?」
「いつも落ちるよ。特に今はフラれたばっかだしね」
「お前には、なにもして上げられ無かったな」
「いや、スゲーたくさんして貰ったよ。ありがとう。ネクタイはそのお礼にや
るよ」
「じゃあ私はコレをやろう。生徒会長の校章だ。お礼というか、私の事忘れな
いでくれたら嬉しい」
「貰っとく。忘れないよ。きっと」
「なぁ。コレで満足か? 鏡の様な自分の姿を見せて、私の気持ちに気付かせ
る。自分の気持ちを犠牲にしてでも。……気づいてないと思ってたか? お前
にそっくりな私が」
「そんな格好いい物じゃないよ。只、本気で好きになっちゃっただけ。そした
らその人の幸せな顔が見たくなっただけ」
「本当にお前は私にそっくりだな。一目見たときから変わらず大っ嫌いだよ」
「俺も自分に似てるアンタが嫌いだよ。……だから、どうかお幸せに」
俺は紙飛行機を置いて立ち上がり、振り向かず屋上を後にする。
――サヨナラ。大嫌いで、大好きなセツナ。
紙飛行機を飛ばす――
僕はもう欠陥品じゃない。今日は遠くまで飛べそうだ。キミから貰った翼の
おかげで。でも本当はキミと一緒に飛びたかった。キミを飛ばせて上げたかっ
た。けど、僕だけが飛んでしまった。キミから貰った翼を使って。
僕は大空を飛ぶ――
あぁ、僕はどこまで飛んでいけるのだろうか? そしてキミは何時追いつい
てきてくれるのだろうか?
――アリガトウ。大嫌いで、大好きなナナミ。
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