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〈桜井 琴子 side〉
しおりを挟む私は相変わらず仕事に追われている。
お互いの連絡先を知っているが、1度も連絡は取り合っていない。
それが私にとっては都合がいい。
元カレたちを思い出さずに済むからだ。
元カレたちの必要以上の束縛には苦労した。
高校、大学と魔性の女なんて呼ぶ人たちもいて大変だった。
親友の香織、柚子、春菜たちはよく庇ってくれた。監禁事件の時も助けてくれた。今でも交流は続いている。
みんな結婚しているからあまり会えていない。
私の結婚は誰にも言わないでおこうと考えている。なぜなら、離婚する事が決まっているからだ。
あれから結婚式の話しがない。
本当にやるんだろうか?
電話を掛けようかと考えたが、話したくないので止めた。
このまま結婚がなくならないかな。
それから1ヶ月経ったある日。
本郷さんから電話があった。
結婚式の事かしら?
勝手に決めてもらっていいのにな。
「はい、ご無沙汰しております」
「どうも、要だけど」
「わかってます。それで?」
「冷たいな~ 衣装合わせと指輪を選ぶから、今日5時までにパークホテルの方に来て」
「5時までですか?」
「申し訳ないけど、その時間しか空いてないんだ。パークホテルの式場は1年待ちなんだ」
「人気の場所で式を挙げる必要ありますか?」
「俺が決めてる訳じゃないから。あのさ、嫌なのはわかるけど、もう少し優しく話してくれないかな。俺も君に連絡したくないんだよ」
「すいません。気をつけます」
「じゃあ、5時に来てね」
「わかりました」
そんなに冷たい言い方だったかな?
本郷さんもキツい言い方だよ。
イケメンは女に優しいんではないの?
綺麗な女にだけよね。
仕方なく急いでパークホテルに向かった。
今日の格好は酷いが、彼氏でもないしいいわよね。昨日から泊まり込みで上下ジャージにスニーカーで向かった。
胸を隠す為にオーバーサイズのジャージだから高校生のようだった。
ブライダルショップに入っていくと、本郷さんが目を見開いて見ていた。
ショップの方に本郷の名前を伝えると
「妹さんもご見学ですか?」
「いえ、ドレスの試着を···」
「そうでしたか。お若く見えたにので、申し訳ございません」
「いえ、今日は仕事の帰りだったので」
そこに本郷さんが
「おい! 少しは服装を考えろよ」
「ジャージはないだろ。それにスニーカーって高校生かよ」
「すいません。泊まり込みだったので」
「ご両親はこんな格好をしてるのを知ってるのか?」
「はい、知ってますよ」
「君は綺麗なんだからもう少し洋服に気をつかえば?」
「試着だけですよね? 」
「そうだけど、それにしてもだろ」
「すぐに帰りますから。適当にドレスを選びます。本郷さんも勝手に選んでください」
「またかよ。お前は言い方が冷たいんだよ」
「あなたもですよ。誰のせいですか?」
「お前もだろ」
「あなたにお前って呼ばれたくありません。指輪はいりせんので。それでは」
「ムカつくな。何なんだクソ女」
「何か言いましたか? 聞こえてますよ。試着したら帰りますね」
「勝手に帰れよ」
あの女は本当にドレスを選んで、
何も言わずに帰っていった。
女からこんな事をされた事がなかったからか、アイツが妙に気になってしまった。
本性を出したわね。
何がクソ女よ。あなたもクソ男よ。
あんな男と3年も暮らせるかしら?
無理よね。
家に帰れない日もあるし我慢は出来るわ。
あの男は女遊びしてるでしょうから家にそんなに帰ってこないはず。
家柄って何かしらね。
好きな人がいるなら家柄なんて気にしないで結婚すればいいのに。
ヘタレよね。
もう会いたくないわ。
こっちは仕事を抜けてきているのに。
感謝してほしいわよ。
結婚式はいつやるのかしら?
祐希に訊けばいいわね。
あの男の事を考えるとイライラする。
私は何かを忘れるように仕事に打ち込んだ。
やっと終わりが見えたきた。
これでまた料理が出来るわ。
祐希を呼んでまた飲み会でもしますか。
楽しみなってきたな。
応援ありがとうございます!
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