脱サラヒーロー始めました

紺夜

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3.転職

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「おおおおはようございまぁぁっす!!」

栄太郎はオフィスのドアを勢いよく開け全力でお辞儀した。

「...矢野くんちょっと来たまえ」

 ドアから1番離れた窓際の机に座るこの男こそ栄太郎の上司、千田課長である。

 今年で社会人3年目になる栄太郎だが、この千田課長には入社当初から勤務態度や仕事の遅さを嫌みったらしく説教され続け最悪の上司という印象しかない。しかし、あくまで栄太郎視点での話であり、きちんと仕事をこなし部下のフォローも忘れない千田課長は会社にとってとても貴重な人材である。つまり不真面目な栄太郎が悪いだけなのである。

「君は今月何回遅刻をすれば気がすむんだ。時間を守るなんて当たり前のこともできないんじゃこの先やっていけないぞ。新入社員のほうがよくがんばっているじゃないか。学生からやり直したほうがいいんじゃないかね?」

 いつもなら千田課長のねちねちとした説教も適当に受け流せたが、今日は朝の全力疾走と怪人との戦いでいつもの精神状態ではなかった。

「...だいたい君みたいに仕事の効率が悪い人間ほど早く会社に来てノルマをこなさなければならな...」

「ごちゃごちゃうるさいわ!お前は俺のおかんか!姑か!どこの世界に怪人倒してから出社する会社員がおんねん!遅刻がなんぼのもんやねん!もう今日限りで辞めさせてもらうわ!」

勢いよくまくし立てて栄太郎は出て行った。こうして栄太郎のサラリーマン生活は幕を閉じたのであった。

「...いや、なんで関西弁?」

 千田課長と周りの社員たちはしばらく呆然と栄太郎が出て行ったドアを眺めていた。遅刻を説教され逆ギレして会社を辞めた男、矢野栄太郎。彼の存在はしばらく飲み会で話題になり、そして確実に忘れられていくだろう。


「はぁ...やっちまった。しかもなんで関西弁...」

 公園のブランコで栄太郎は落ち込んでいた。一瞬にして職を失ったのだから無理もない。

「元はと言えばあの怪人のせいだ。奴に会わなければ会社に間に合ったはずなのに。おのれ怪人、許すまじ...」

 とんでもない逆恨み野郎である。

「やぁやぁ、平日の真昼間にこんなところで何やってるんだい?あ、もしかして仕事、クビになっちゃった?」

 顔を上げると金髪を肩まで伸ばした若い男が立っていた。なかなかの男前である。

「誰だお前は。俺は今機嫌が悪いんだ。ほっといてくれ。」

「ごめんごめん、悪く思わないでおくれ。ちょっとからかいたくなっちゃってさ。君にとって悪い話ではないと思うんだ。なんたって新しい就職先の話なんだからね。」

 金髪の男は不敵に微笑む。

「君をスカウトしに来た。僕たち〈ヒーローズ〉の一員としてね。」

 職を失いお先真っ暗な栄太郎に希望の光が!?
 どうなる次回!
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