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3話
馬車を降りた先の光景は、俺が見てきた世界では信じられないものだった。
何故かキラキラと街が輝いていると思ったら、目に映る獣人には、多彩な耳や尻尾が生え、楽しそうに談笑し、悲しそうな顔は一人もいない。花壇に生えている花は、瑞々しく青々と咲き誇り、キラキラとした街を、より一層カラフルに彩っている。噴水の水を飲んでいる子供や、屋台の食事を買い、二人で半分にしている子供がいて、和やかだった。
「ふふ、もうアヤブカレ王国ですよ。人間の方は、こんなにたくさんの獣人は、びっくりしますよね……」
少し寂しそうな顔をしたネズミの御者は、勘違いをしているようなので説明をしておく。
「ち、ちがう。感動したんだ!こんなに素敵な国があったんだな……」
「……!そう言っていただけると嬉しいです!」
「見ただろ?俺がいた大広間……水だってキレイとは言えないし、こんなにキラキラしてなかったし、皆が笑顔か、といえば笑顔じゃなかった」
俺のいた国は、貧乏貴族が多く、口減らしと捨てられた老婆や、仕事が無くなり絶望した若者などがたむろしており、どんよりと空気が沈んでいた。
確かに耳が生えていたり、尻尾が生えていたりするが、それぐらいしか違いがない。こんなに素敵な国なら、殺されて埋められてもいいかもしれない。
どちらかといえば、殺される方がいいんじゃないだろうか。もしミーナが再婚したら、俺はこの国に入れなくなるだろう……なんて、図太い俺じゃない。と、思うが死ぬかもしれないと思う手前、流石に少しだけ弱まっている。
しかし、なぜここで降ろされたのか?という疑問が湧く。降ろされるなら城の前だと思っていたが。
「ここで降ろされたのはなんでだ?馬車が動かないとか?」
「あはは、馬車は小回りが効きませんからね……って違いますよ!今も素敵なんですが、もっと素敵になるように、ガード様の見た目を少し整えさせて頂きます。今日婚姻、明日挙式、明後日は国全体でパレードで、明々後日は国王の引き継ぎ……というか、即位式をします。ま、ご存命ですけど。その関係で、ほぼお城から出られなくなってしまうので、ここで今日の服と、その後はオーダーメイドにするので、サイズを測ります。仕立て屋から文句が出る前に急ぎましょう!」
「急ぎましょうったって、詰まり過ぎじゃないか……?」
「仕方ないです、待望のお嫁さんなのでアンヌ王子は、待ってられないんですよ」
「待望って……俺、学無いし、顔もこんなんだし、男だぞ。ひと目もあってないのに……」
「……?性別も、学も、お顔も関係ありませんよ。王子はガード様と結婚できる、ということに大喜びです。ほら、それは昔……あっ!」
何か言いかけ、口を手で抑えた。何か言っちゃいけないことでもあったのか。
「ほら!難しい事は考えずに行きましょう!私怒られちゃいますから!」
そう言われ、腕を引っ張られる。とりあえず、着いていくしか無いのだろう……と、歩みを勧めた。
□◇□◇□◇□
目まぐるしく服を着替えたり、サイズを測ったりして─仕立て屋が羊なのは、なんとなく違和感が無かった─荷物を馬車に詰め込み、また出発した。
白を貴重とした、金の刺繍─うさぎが草や花に囲まれている刺繍─が入った上着を着て、白いズボン、白い革靴に赤い蝶ネクタイ。頭は、髪の毛はツーブロックにはしていたが、少し長めに残していたおかげ─と言っていいのか─で、髪にリボンを結び付けられた。
色々な荷物と俺を馬車に詰め込み、出発する。ここから十分ほどで着くらしく、どっと疲れたが、変に服を崩したくないので、眠れない。
というか、もうすぐ会うのか?と言う事に気が付き、胸がドキドキとする。
確かにブーケのやつは良い奴─御者に名前を聞いたら、ブーケと言った─だったが、王子の方はわからない。ブーケは『凄くいい人で、すぐ好きになりますよ』との事だったが、それは獣人に対してだけで、人間に対しては噂の通りの可能性がある。
見た目だってわからない、王妃や国王は見たことがあり─小さめではあるが、全体が白く、可愛らしい姿だったような─あの通りなら噂は所詮噂だが……俺のように、全く違うタイプが生まれることがあるのだ。
ドキドキと心臓が鳴り止まず、落ち着こうと深呼吸をしていたら、あっという間に着いたようで馬車が止まる。扉を開けてくれたブーケと目が合うと、緊張しているのが伝わったのか、フフ、と笑われた。
「そんな緊張しなくても大丈夫ですよ、王子は優しいですから」
「わかってる、けど……」
優しいらしい、優しいらしいが……恐れつつ、ブーケの手を借りて馬車から降りる。
白を貴重とした大きい城が目に入り、その大きさに驚愕する。その広さに比例するように大きい庭には、薔薇園が所狭しと並んでおり、薔薇のいい香りが鼻を突いた。
「足元がレンガでデコボコしているので、扉の前まで一緒に行きましょうか、手を繋いだままでも?」
「……ごめん、頼む」
覚悟していたのに、少しだけ怖いせいで、小刻みに足が震える。それを察してか、一緒に支えつつ歩いてくれる。
物凄い長い間、歩いた気がするが、先程歩いた距離としてはそうでもない。自分の心臓が、どくどくと脈打つせいだ。
この土地で死ねるなら良い。と思っていたが、いざ死ぬかもしれないと思うと、怖いかもしれない。
いや、逃げる。逃げるんだ……
「私が開けます、中へ入ると王子が立ってると思うので……ご挨拶すれば、そのまま王子が連れて行ってくれますよ」
「もう、ブーケはいないのか……?」
「馬車を片付けたらすぐ向かいます。大丈夫です」
にこ、と笑って、帽子を軽く上げたブーケが、そのまま大きい扉を開いて、手を離し一歩後ろへと引いた。
ギィ、と音を立てながら大きい扉が開くと、少しずつ中が見えてくる。見える範囲でわかるほど、豪華絢爛で、床がピカピカと輝いて、上のシャンデリアの光を反射している。
クラクラとしそうな頭を整理して、前を見つめていると、一人の獣人の顔が見えた。
何故かキラキラと街が輝いていると思ったら、目に映る獣人には、多彩な耳や尻尾が生え、楽しそうに談笑し、悲しそうな顔は一人もいない。花壇に生えている花は、瑞々しく青々と咲き誇り、キラキラとした街を、より一層カラフルに彩っている。噴水の水を飲んでいる子供や、屋台の食事を買い、二人で半分にしている子供がいて、和やかだった。
「ふふ、もうアヤブカレ王国ですよ。人間の方は、こんなにたくさんの獣人は、びっくりしますよね……」
少し寂しそうな顔をしたネズミの御者は、勘違いをしているようなので説明をしておく。
「ち、ちがう。感動したんだ!こんなに素敵な国があったんだな……」
「……!そう言っていただけると嬉しいです!」
「見ただろ?俺がいた大広間……水だってキレイとは言えないし、こんなにキラキラしてなかったし、皆が笑顔か、といえば笑顔じゃなかった」
俺のいた国は、貧乏貴族が多く、口減らしと捨てられた老婆や、仕事が無くなり絶望した若者などがたむろしており、どんよりと空気が沈んでいた。
確かに耳が生えていたり、尻尾が生えていたりするが、それぐらいしか違いがない。こんなに素敵な国なら、殺されて埋められてもいいかもしれない。
どちらかといえば、殺される方がいいんじゃないだろうか。もしミーナが再婚したら、俺はこの国に入れなくなるだろう……なんて、図太い俺じゃない。と、思うが死ぬかもしれないと思う手前、流石に少しだけ弱まっている。
しかし、なぜここで降ろされたのか?という疑問が湧く。降ろされるなら城の前だと思っていたが。
「ここで降ろされたのはなんでだ?馬車が動かないとか?」
「あはは、馬車は小回りが効きませんからね……って違いますよ!今も素敵なんですが、もっと素敵になるように、ガード様の見た目を少し整えさせて頂きます。今日婚姻、明日挙式、明後日は国全体でパレードで、明々後日は国王の引き継ぎ……というか、即位式をします。ま、ご存命ですけど。その関係で、ほぼお城から出られなくなってしまうので、ここで今日の服と、その後はオーダーメイドにするので、サイズを測ります。仕立て屋から文句が出る前に急ぎましょう!」
「急ぎましょうったって、詰まり過ぎじゃないか……?」
「仕方ないです、待望のお嫁さんなのでアンヌ王子は、待ってられないんですよ」
「待望って……俺、学無いし、顔もこんなんだし、男だぞ。ひと目もあってないのに……」
「……?性別も、学も、お顔も関係ありませんよ。王子はガード様と結婚できる、ということに大喜びです。ほら、それは昔……あっ!」
何か言いかけ、口を手で抑えた。何か言っちゃいけないことでもあったのか。
「ほら!難しい事は考えずに行きましょう!私怒られちゃいますから!」
そう言われ、腕を引っ張られる。とりあえず、着いていくしか無いのだろう……と、歩みを勧めた。
□◇□◇□◇□
目まぐるしく服を着替えたり、サイズを測ったりして─仕立て屋が羊なのは、なんとなく違和感が無かった─荷物を馬車に詰め込み、また出発した。
白を貴重とした、金の刺繍─うさぎが草や花に囲まれている刺繍─が入った上着を着て、白いズボン、白い革靴に赤い蝶ネクタイ。頭は、髪の毛はツーブロックにはしていたが、少し長めに残していたおかげ─と言っていいのか─で、髪にリボンを結び付けられた。
色々な荷物と俺を馬車に詰め込み、出発する。ここから十分ほどで着くらしく、どっと疲れたが、変に服を崩したくないので、眠れない。
というか、もうすぐ会うのか?と言う事に気が付き、胸がドキドキとする。
確かにブーケのやつは良い奴─御者に名前を聞いたら、ブーケと言った─だったが、王子の方はわからない。ブーケは『凄くいい人で、すぐ好きになりますよ』との事だったが、それは獣人に対してだけで、人間に対しては噂の通りの可能性がある。
見た目だってわからない、王妃や国王は見たことがあり─小さめではあるが、全体が白く、可愛らしい姿だったような─あの通りなら噂は所詮噂だが……俺のように、全く違うタイプが生まれることがあるのだ。
ドキドキと心臓が鳴り止まず、落ち着こうと深呼吸をしていたら、あっという間に着いたようで馬車が止まる。扉を開けてくれたブーケと目が合うと、緊張しているのが伝わったのか、フフ、と笑われた。
「そんな緊張しなくても大丈夫ですよ、王子は優しいですから」
「わかってる、けど……」
優しいらしい、優しいらしいが……恐れつつ、ブーケの手を借りて馬車から降りる。
白を貴重とした大きい城が目に入り、その大きさに驚愕する。その広さに比例するように大きい庭には、薔薇園が所狭しと並んでおり、薔薇のいい香りが鼻を突いた。
「足元がレンガでデコボコしているので、扉の前まで一緒に行きましょうか、手を繋いだままでも?」
「……ごめん、頼む」
覚悟していたのに、少しだけ怖いせいで、小刻みに足が震える。それを察してか、一緒に支えつつ歩いてくれる。
物凄い長い間、歩いた気がするが、先程歩いた距離としてはそうでもない。自分の心臓が、どくどくと脈打つせいだ。
この土地で死ねるなら良い。と思っていたが、いざ死ぬかもしれないと思うと、怖いかもしれない。
いや、逃げる。逃げるんだ……
「私が開けます、中へ入ると王子が立ってると思うので……ご挨拶すれば、そのまま王子が連れて行ってくれますよ」
「もう、ブーケはいないのか……?」
「馬車を片付けたらすぐ向かいます。大丈夫です」
にこ、と笑って、帽子を軽く上げたブーケが、そのまま大きい扉を開いて、手を離し一歩後ろへと引いた。
ギィ、と音を立てながら大きい扉が開くと、少しずつ中が見えてくる。見える範囲でわかるほど、豪華絢爛で、床がピカピカと輝いて、上のシャンデリアの光を反射している。
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