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1章 目撃者
五話
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「帰ってきてないのよ。お兄ちゃんが」
「なんで…」
「知らないわ。でも、外に出たって事でしょ?ちょっとくらい良いじゃない。めでたいことだわ」
母は妙にポジティブだった。
何も無ければいいが……
ーーー
ピンポン
玄関からチャイムが鳴る。
眠い目を擦り、電気を付けると朝の2時だった。こんな時間に誰だ。
恐る恐る玄関へ行く。
月明かりがヤケに明るく、シルエットから察するに痩せた男だった。
「誰です?」
ドア越しにその男に言った。
俺は何故かソイツが誰か気になって仕方がなかった。
鍵は閉めてあるから大丈夫だ。
ガチャガチャガチャガチャ……
鍵が開けられている。
ピッキングか?
違う。
それは…、明らかに鍵を鍵穴に入れた音だった。
俺は必死にドアが開かないように、内側から、ドアノブを引っ張り入るのを阻止した。
だがドアが開くかどうかは、時間の問題だった。
「カフカ…、カフカ」
「誰だ」
ドアが勢いよく開かれた。
痩せた背の高い男が俺の名前を連呼して俺に抱きついた。
「誰さ、、、」
その匂いは兄に似ていた。
だが、嫌悪感は無く、寧ろ安心した。
何処か遠い……懐かしい匂いだった。
「お父さん?」
それは昔の父の匂いだと直感した。
だが、そんな筈は無い。
父は行方不明になってしまった。
ピクニックに行って、タバコを吸いに行ったまま行方不明になった。警察も探したが一向に見つからなかった。
「カフカ…」
と、玄関から誰かの足音がした。
父さん?が俺に抱きついていて姿は見えなかった。
鋭い痛みが俺の腹部に現れた。
ーーーー
「カフカ……?起きた?」
「ここは?」
俺はベッドに寝ていた。
どうやら病院にいるらしい。
母が心配そうな表情で俺を見ていた。
「お腹、痛いでしょ?」
医者が俺に話しかけていた。
「あ、はい。でも、あまり痛くないです」
確かに痛かったが、そこまでの痛みはなかった。
「そうか。謎の布が君を守ってくれたみたいだからね。もしそれがなかったら君は内蔵まで刃物が及んで重体になってたかもしれない」
それは、あのお父さん?の事か?
だが、布?
どういう事だ。
あれは俺の幻覚?
布は本物だった?
腹を見ると、ズキズキという痛みはあったが、絆創膏が貼ってある程度で酷い怪我では無さそうだった。
まあ、酷くないという見方もあると思うが。
「先生、その布って言うのは?」
「さあ。警察に聞いてみなければ分からないね」
医者に聞いてもあまり知らないらしかった。
だがこの痛みは現実で、あの事実は確かに現実で。全ては本当にあって全ては嘘では無い感覚だった。
或いは、この全ての事項が全くの夢で、全くの嘘であるかもしれないと思った。
不自然だが、整合性はないが、俺にはこの全てがチグハグだとは思えなかった。
あの兄だってそうだ。
因みに、兄は昨日からまだ家に帰ってきていないらしかった。
「なんで…」
「知らないわ。でも、外に出たって事でしょ?ちょっとくらい良いじゃない。めでたいことだわ」
母は妙にポジティブだった。
何も無ければいいが……
ーーー
ピンポン
玄関からチャイムが鳴る。
眠い目を擦り、電気を付けると朝の2時だった。こんな時間に誰だ。
恐る恐る玄関へ行く。
月明かりがヤケに明るく、シルエットから察するに痩せた男だった。
「誰です?」
ドア越しにその男に言った。
俺は何故かソイツが誰か気になって仕方がなかった。
鍵は閉めてあるから大丈夫だ。
ガチャガチャガチャガチャ……
鍵が開けられている。
ピッキングか?
違う。
それは…、明らかに鍵を鍵穴に入れた音だった。
俺は必死にドアが開かないように、内側から、ドアノブを引っ張り入るのを阻止した。
だがドアが開くかどうかは、時間の問題だった。
「カフカ…、カフカ」
「誰だ」
ドアが勢いよく開かれた。
痩せた背の高い男が俺の名前を連呼して俺に抱きついた。
「誰さ、、、」
その匂いは兄に似ていた。
だが、嫌悪感は無く、寧ろ安心した。
何処か遠い……懐かしい匂いだった。
「お父さん?」
それは昔の父の匂いだと直感した。
だが、そんな筈は無い。
父は行方不明になってしまった。
ピクニックに行って、タバコを吸いに行ったまま行方不明になった。警察も探したが一向に見つからなかった。
「カフカ…」
と、玄関から誰かの足音がした。
父さん?が俺に抱きついていて姿は見えなかった。
鋭い痛みが俺の腹部に現れた。
ーーーー
「カフカ……?起きた?」
「ここは?」
俺はベッドに寝ていた。
どうやら病院にいるらしい。
母が心配そうな表情で俺を見ていた。
「お腹、痛いでしょ?」
医者が俺に話しかけていた。
「あ、はい。でも、あまり痛くないです」
確かに痛かったが、そこまでの痛みはなかった。
「そうか。謎の布が君を守ってくれたみたいだからね。もしそれがなかったら君は内蔵まで刃物が及んで重体になってたかもしれない」
それは、あのお父さん?の事か?
だが、布?
どういう事だ。
あれは俺の幻覚?
布は本物だった?
腹を見ると、ズキズキという痛みはあったが、絆創膏が貼ってある程度で酷い怪我では無さそうだった。
まあ、酷くないという見方もあると思うが。
「先生、その布って言うのは?」
「さあ。警察に聞いてみなければ分からないね」
医者に聞いてもあまり知らないらしかった。
だがこの痛みは現実で、あの事実は確かに現実で。全ては本当にあって全ては嘘では無い感覚だった。
或いは、この全ての事項が全くの夢で、全くの嘘であるかもしれないと思った。
不自然だが、整合性はないが、俺にはこの全てがチグハグだとは思えなかった。
あの兄だってそうだ。
因みに、兄は昨日からまだ家に帰ってきていないらしかった。
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