13 / 24
13話
しおりを挟む
映画が終わり私達は映画館を出る。
「いやー……展開が分かっていても泣けるな」
「そうね」
優介が私の前にポケットティッシュを差し出し「ありがとう、助かった」
「いいよ、あげる」
「そう? じゃあ貰っておく。飯に行くだろ?」
と、優介はポケットティッシュをズボンにしまいながら言った。
「うん」
「近くのファミレスで良いかな?」
「うん、大丈夫だよ」
「それじゃ行こうか」
※※※
近くのファミレスに入ると店員に窓際へ案内される。
私と優介はハンバーグのランチセットを頼んだ。
待っている間、優介は色々と話しかけてくる。
だけど私はさっきの事が気になって、返事を返すのが精いっぱいだった。
「美穂? もしかして具合でも悪い?」
と、優介が心配そうに眉をひそめ言った。
不安が顔に出てしまったのか。
優介に余計な心配をかけてしまった。
「うぅん、そんな事無いよ」
私は平静を装いコップを手に取りると、水を一口飲む。
「そう? それなら良いけど。もしかして映画、つまらなかった? 俺、こういうの詳しくなくて、ごめんな」
「うぅん、そんなんじゃないよ。私、この映画観たいと思っていたから、優介と観られて嬉しかったよ」
優介は照れ臭そうに私から目を逸らし、視線を外に向け「それなら良かった」
私に好意があるからこそ出る仕草。
いまこの状況でそんな仕草をみると、胸がキュッと苦しくなる。
――優介を心配させてしまうぐらいなら、いっそ転校するの? って、今ここで聞いてみたい。
だけど私は、優介の親の離婚話ですら、知らないことになっている。
ここでそれを聞くには私の能力を話すしかない。
でもそれは――。
「ハンバーグランチセット。お待たせ致しました」
と、女性の店員が笑顔で持ってきてくれる。
優介はフォークとナイフを手に取り、「うぉ、上手そうだな」
「本当だね」
優介が私に差し出してくれたナイフとフォークを受け取る。
「ありがとう」
「うん、食べようぜ」
「うん」
フォークでハンバーグを突き刺し、ナイフで切りながら、タイミングよく持ってきてくれて、助かったと思う。
やっぱり、怖い……今の関係を壊したくないよ。
※※※
私達は食べ終わるとお金を払って店を出る。
「これからどうする?」
と、優介が歩きながら話しかけてきた。
今日は初めてのデート……本当はもっと優介と居たい。
でもこれ以上、一緒に居ると迷惑を掛けてしまう。
そんな気がする。
「――ごめん。用事を思い出しちゃったから帰るわ」
「そう……用事じゃ仕方ないね」
と、優介は残念そうに低い声で言って、歩みを止めた。
私も立ち止まり「ごめんね」
「気にしなくて良いよ。家まで送っていく?」
「うぅん、大丈夫。それじゃ、また明日ね」
「おぅ、また明日!」
私は優介に手を振るとその場を去った――。
しばらくして立ち止まるとバッグからスマホを取り出す。
『今日は楽しかったよ、また誘ってね』
と、さっきは恥ずかしくて面と向かって言えなかったことをメールで打つと送信する。
またバックにスマホを入れ、歩き出す。
――少しして、スマホの着信音が鳴る。
返事かな?
私は立ち止まると、バッグからスマホを取り出した。
『メールを打っている所で届いたから、ビックリした。今日は付き合ってくれて、ありがとう。俺も楽しかった。また誘うわ』
優介からの嬉しい返事を読み上げると、何とも言えない複雑な気持ちになる。
スマホを胸元に押し当てると、いまの気持ちを込めるかのようにキュッと握り締めた。
「いやー……展開が分かっていても泣けるな」
「そうね」
優介が私の前にポケットティッシュを差し出し「ありがとう、助かった」
「いいよ、あげる」
「そう? じゃあ貰っておく。飯に行くだろ?」
と、優介はポケットティッシュをズボンにしまいながら言った。
「うん」
「近くのファミレスで良いかな?」
「うん、大丈夫だよ」
「それじゃ行こうか」
※※※
近くのファミレスに入ると店員に窓際へ案内される。
私と優介はハンバーグのランチセットを頼んだ。
待っている間、優介は色々と話しかけてくる。
だけど私はさっきの事が気になって、返事を返すのが精いっぱいだった。
「美穂? もしかして具合でも悪い?」
と、優介が心配そうに眉をひそめ言った。
不安が顔に出てしまったのか。
優介に余計な心配をかけてしまった。
「うぅん、そんな事無いよ」
私は平静を装いコップを手に取りると、水を一口飲む。
「そう? それなら良いけど。もしかして映画、つまらなかった? 俺、こういうの詳しくなくて、ごめんな」
「うぅん、そんなんじゃないよ。私、この映画観たいと思っていたから、優介と観られて嬉しかったよ」
優介は照れ臭そうに私から目を逸らし、視線を外に向け「それなら良かった」
私に好意があるからこそ出る仕草。
いまこの状況でそんな仕草をみると、胸がキュッと苦しくなる。
――優介を心配させてしまうぐらいなら、いっそ転校するの? って、今ここで聞いてみたい。
だけど私は、優介の親の離婚話ですら、知らないことになっている。
ここでそれを聞くには私の能力を話すしかない。
でもそれは――。
「ハンバーグランチセット。お待たせ致しました」
と、女性の店員が笑顔で持ってきてくれる。
優介はフォークとナイフを手に取り、「うぉ、上手そうだな」
「本当だね」
優介が私に差し出してくれたナイフとフォークを受け取る。
「ありがとう」
「うん、食べようぜ」
「うん」
フォークでハンバーグを突き刺し、ナイフで切りながら、タイミングよく持ってきてくれて、助かったと思う。
やっぱり、怖い……今の関係を壊したくないよ。
※※※
私達は食べ終わるとお金を払って店を出る。
「これからどうする?」
と、優介が歩きながら話しかけてきた。
今日は初めてのデート……本当はもっと優介と居たい。
でもこれ以上、一緒に居ると迷惑を掛けてしまう。
そんな気がする。
「――ごめん。用事を思い出しちゃったから帰るわ」
「そう……用事じゃ仕方ないね」
と、優介は残念そうに低い声で言って、歩みを止めた。
私も立ち止まり「ごめんね」
「気にしなくて良いよ。家まで送っていく?」
「うぅん、大丈夫。それじゃ、また明日ね」
「おぅ、また明日!」
私は優介に手を振るとその場を去った――。
しばらくして立ち止まるとバッグからスマホを取り出す。
『今日は楽しかったよ、また誘ってね』
と、さっきは恥ずかしくて面と向かって言えなかったことをメールで打つと送信する。
またバックにスマホを入れ、歩き出す。
――少しして、スマホの着信音が鳴る。
返事かな?
私は立ち止まると、バッグからスマホを取り出した。
『メールを打っている所で届いたから、ビックリした。今日は付き合ってくれて、ありがとう。俺も楽しかった。また誘うわ』
優介からの嬉しい返事を読み上げると、何とも言えない複雑な気持ちになる。
スマホを胸元に押し当てると、いまの気持ちを込めるかのようにキュッと握り締めた。
0
あなたにおすすめの小説
ヤクザに医官はおりません
ユーリ(佐伯瑠璃)
ライト文芸
彼は私の知らない組織の人間でした
会社の飲み会の隣の席のグループが怪しい。
シャバだの、残弾なしだの、会話が物騒すぎる。刈り上げ、角刈り、丸刈り、眉毛シャキーン。
無駄にムキムキした体に、堅い言葉遣い。
反社会組織の集まりか!
ヤ◯ザに見初められたら逃げられない?
勘違いから始まる異文化交流のお話です。
※もちろんフィクションです。
小説家になろう、カクヨムに投稿しています。
あるフィギュアスケーターの性事情
蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。
しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。
何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。
この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。
そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。
この物語はフィクションです。
実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。
ちょっと大人な体験談はこちらです
神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な体験談です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
【完結】退職を伝えたら、無愛想な上司に囲われました〜逃げられると思ったのが間違いでした〜
来栖れいな
恋愛
逃げたかったのは、
疲れきった日々と、叶うはずのない憧れ――のはずだった。
無愛想で冷静な上司・東條崇雅。
その背中に、ただ静かに憧れを抱きながら、
仕事の重圧と、自分の想いの行き場に限界を感じて、私は退職を申し出た。
けれど――
そこから、彼の態度は変わり始めた。
苦手な仕事から外され、
負担を減らされ、
静かに、けれど確実に囲い込まれていく私。
「辞めるのは認めない」
そんな言葉すらないのに、
無言の圧力と、不器用な優しさが、私を縛りつけていく。
これは愛?
それともただの執着?
じれじれと、甘く、不器用に。
二人の距離は、静かに、でも確かに近づいていく――。
無愛想な上司に、心ごと囲い込まれる、じれじれ溺愛・執着オフィスラブ。
※この物語はフィクションです。
登場する人物・団体・名称・出来事などはすべて架空であり、実在のものとは一切関係ありません。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
出逢いがしらに恋をして 〜一目惚れした超イケメンが今日から上司になりました〜
泉南佳那
恋愛
高橋ひよりは25歳の会社員。
ある朝、遅刻寸前で乗った会社のエレベーターで見知らぬ男性とふたりになる。
モデルと見まごうほど超美形のその人は、その日、本社から移動してきた
ひよりの上司だった。
彼、宮沢ジュリアーノは29歳。日伊ハーフの気鋭のプロジェクト・マネージャー。
彼に一目惚れしたひよりだが、彼には本社重役の娘で会社で一番の美人、鈴木亜矢美の花婿候補との噂が……
黒瀬部長は部下を溺愛したい
桐生桜
恋愛
イケメン上司の黒瀬部長は営業部のエース。
人にも自分にも厳しくちょっぴり怖い……けど!
好きな人にはとことん尽くして甘やかしたい、愛でたい……の溺愛体質。
部下である白石莉央はその溺愛を一心に受け、とことん愛される。
スパダリ鬼上司×新人OLのイチャラブストーリーを一話ショートに。
✿ 私は彼のことが好きなのに、彼は私なんかよりずっと若くてきれいでスタイルの良い女が好きらしい
設楽理沙
ライト文芸
累計ポイント110万ポイント超えました。皆さま、ありがとうございます。❀
結婚後、2か月足らずで夫の心変わりを知ることに。
結婚前から他の女性と付き合っていたんだって。
それならそうと、ちゃんと話してくれていれば、結婚なんて
しなかった。
呆れた私はすぐに家を出て自立の道を探すことにした。
それなのに、私と別れたくないなんて信じられない
世迷言を言ってくる夫。
だめだめ、信用できないからね~。
さようなら。
*******.✿..✿.*******
◇|日比野滉星《ひびのこうせい》32才 会社員
◇ 日比野ひまり 32才
◇ 石田唯 29才 滉星の同僚
◇新堂冬也 25才 ひまりの転職先の先輩(鉄道会社)
2025.4.11 完結 25649字
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる