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新しい手がかり
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ディアドリはポリポリとクッキーを食べながらアーサーがすることを見ていた。
クッキーはホープ婦人が持たせてくれたものだ。
二人は今、ホープ婦人の向かいであるマルクの家で家探しをしている。
「勝手にして怒られないの?」
「怒られるな」
ひひひと笑いながらアーサーは机の引き出しを全部出して検分している。
手にあるメモにはあの切手に記された数字が書いてある。
その手がかりが何かないかと確かめる。
「そういうのってもう警察が調べた後じゃないの?」
「そうだぞ」
「なんで偉そうなの」
はぁとディアドリは息を吐いてアーサーの手元の書類に目を落とした。
「手がかりを見つけたら報奨がでるかもしれん」
「結局金かよ」
「金は大事だぞ?」
真剣な眼差しにぶっと吹き出してはははと笑い合いながら手がかりを探す。
けれど、めぼしいものは何もなかった。
最後の引き出しには男物のコロンがひとつとブラシ、鉛筆が一本に白紙の便箋が数枚入っているだけ。
「なんもないね」
「だなぁ・・・いや、待てよ。これ浅くないか?」
ニタァと笑うアーサーは悪人そのもので、ポケットから取り出した折りたたみナイフを底の隙間に差し入れた。
底板はガコっと呆気なく外れた。
「そら見ろ、俺ってば天才」
くるりとナイフを回してパチンと収納するアーサー。
かっこいいとでも言ってほしいのかもしれない、言わないけど。
しかし、底板を外しても中身は空っぽだった。
「は?は?はぁあああぁぁああ?俺の興奮を返せ!」
「あっはっはっはっあー面白い」
ディアドリは腹を抱えて笑い、アーサーは悔しそうに顔を歪めた。
ひぃひぃと笑って空っぽの底を見て、ん?とディアドリは首を傾げた。
「これ、まだ浅くない?」
机にある引き出しは横に長く大きなもの、その半分くらいの長さの浅い引き出しが二つに底が深いものがひとつ。
指で弾くと軽い音がする。
「あんだよ、二重の二重ってどんだけ用心深いんだ」
ブツブツ言いながらまたアーサーがナイフで底板をあげる。
中には小さな布の巾着がひとつ、中を開けると少しくすんだ石がいくつか入っていた。
大きさはまちまちだが、大人の親指の先ほどもある石もあった。
「なに?石ころ?」
「・・・いや・・・こりゃ、ダイヤモンドの原石だな」
「これが?あのピカピカになるの?」
「あぁ、だが一介の郵便局員が持つものじゃねぇ」
アーサーとディアドリは顔を見合わせて同じように首を傾げた。
なんだってこんなところにこんな高価なものがあるんだろう。
「まぁ、手がかりは見つからなかったけど収穫はあったな」
原石を巾着にしまってアーサーはそれを胸ポケットに入れて、引き出しをしまった。
よし行くか、とマルク宅を後にしようとするアーサー。
「ねぇ、それエリックさんにちゃんと渡すんだよね?」
「当たり前だろ」
背中を向けたままアーサーは答えて、すたすたと歩いていく。
「おじさま、僕の目を見て言って」
「わぁーった!一個だけにする」
両手をあげて降参ポーズをとるが、一個も全部も駄目だろう。
ディアドリは前に回って胸ポケットから巾着を取り上げて、鞄にしまった。
「はい、エリックさんとこ行こ」
「ディーは真面目だなぁ」
「真面目とか不真面目とかじゃないでしょ。泥棒だよ、これは」
ちぇっと口を尖らせるアーサーの腕をとってグイグイと引っ張って歩く。
途中、転んで怪我をした子どもの手当てをして警察署まで。
「ディー、落ち着いて聞け。振り返るなよ」
「なに?」
「あの角を曲がったら走れ」
「え、なんで?」
いいから、とアーサーはディアドリの手をとって、角を曲がった瞬間走り出した。
わけもわからずディーも足を動かす。
後ろから、ちくしょうと小さく聞こえた気がした。
市場の人混みを抜けて、警察署の裏口へ。
扉を閉めてはぁはぁと肩で息をしながら、ずるずると座り込む。
「な、なんだったの?」
「つけられてた」
「え?い、いつから」
「気づいたのはガキの手当をした時だ」
「そんな・・・なんで・・・」
ギュッと肩掛け鞄の紐を握ってハッとした。
まさか、まさか・・・
「・・・ダイヤモンド」
「ん、それしかねぇな。家を見張ってたのか、それとも」
「それとも?」
「あの時、家の中にいたか」
ディアドリはゾッとして口元を覆った。
もしかしたら殺されていたかもしれない、脳裏を過ぎるのはマルクではなく父だった。
喉元を込み上げるなにかをゴクンも飲みくだし、深く深く息を吸い込む。
「・・・おじさま、エリックさんとこ行こ」
「あぁ」
鞄の中のダイヤモンドがひどく重い、これを早くおろしたい。
クッキーはホープ婦人が持たせてくれたものだ。
二人は今、ホープ婦人の向かいであるマルクの家で家探しをしている。
「勝手にして怒られないの?」
「怒られるな」
ひひひと笑いながらアーサーは机の引き出しを全部出して検分している。
手にあるメモにはあの切手に記された数字が書いてある。
その手がかりが何かないかと確かめる。
「そういうのってもう警察が調べた後じゃないの?」
「そうだぞ」
「なんで偉そうなの」
はぁとディアドリは息を吐いてアーサーの手元の書類に目を落とした。
「手がかりを見つけたら報奨がでるかもしれん」
「結局金かよ」
「金は大事だぞ?」
真剣な眼差しにぶっと吹き出してはははと笑い合いながら手がかりを探す。
けれど、めぼしいものは何もなかった。
最後の引き出しには男物のコロンがひとつとブラシ、鉛筆が一本に白紙の便箋が数枚入っているだけ。
「なんもないね」
「だなぁ・・・いや、待てよ。これ浅くないか?」
ニタァと笑うアーサーは悪人そのもので、ポケットから取り出した折りたたみナイフを底の隙間に差し入れた。
底板はガコっと呆気なく外れた。
「そら見ろ、俺ってば天才」
くるりとナイフを回してパチンと収納するアーサー。
かっこいいとでも言ってほしいのかもしれない、言わないけど。
しかし、底板を外しても中身は空っぽだった。
「は?は?はぁあああぁぁああ?俺の興奮を返せ!」
「あっはっはっはっあー面白い」
ディアドリは腹を抱えて笑い、アーサーは悔しそうに顔を歪めた。
ひぃひぃと笑って空っぽの底を見て、ん?とディアドリは首を傾げた。
「これ、まだ浅くない?」
机にある引き出しは横に長く大きなもの、その半分くらいの長さの浅い引き出しが二つに底が深いものがひとつ。
指で弾くと軽い音がする。
「あんだよ、二重の二重ってどんだけ用心深いんだ」
ブツブツ言いながらまたアーサーがナイフで底板をあげる。
中には小さな布の巾着がひとつ、中を開けると少しくすんだ石がいくつか入っていた。
大きさはまちまちだが、大人の親指の先ほどもある石もあった。
「なに?石ころ?」
「・・・いや・・・こりゃ、ダイヤモンドの原石だな」
「これが?あのピカピカになるの?」
「あぁ、だが一介の郵便局員が持つものじゃねぇ」
アーサーとディアドリは顔を見合わせて同じように首を傾げた。
なんだってこんなところにこんな高価なものがあるんだろう。
「まぁ、手がかりは見つからなかったけど収穫はあったな」
原石を巾着にしまってアーサーはそれを胸ポケットに入れて、引き出しをしまった。
よし行くか、とマルク宅を後にしようとするアーサー。
「ねぇ、それエリックさんにちゃんと渡すんだよね?」
「当たり前だろ」
背中を向けたままアーサーは答えて、すたすたと歩いていく。
「おじさま、僕の目を見て言って」
「わぁーった!一個だけにする」
両手をあげて降参ポーズをとるが、一個も全部も駄目だろう。
ディアドリは前に回って胸ポケットから巾着を取り上げて、鞄にしまった。
「はい、エリックさんとこ行こ」
「ディーは真面目だなぁ」
「真面目とか不真面目とかじゃないでしょ。泥棒だよ、これは」
ちぇっと口を尖らせるアーサーの腕をとってグイグイと引っ張って歩く。
途中、転んで怪我をした子どもの手当てをして警察署まで。
「ディー、落ち着いて聞け。振り返るなよ」
「なに?」
「あの角を曲がったら走れ」
「え、なんで?」
いいから、とアーサーはディアドリの手をとって、角を曲がった瞬間走り出した。
わけもわからずディーも足を動かす。
後ろから、ちくしょうと小さく聞こえた気がした。
市場の人混みを抜けて、警察署の裏口へ。
扉を閉めてはぁはぁと肩で息をしながら、ずるずると座り込む。
「な、なんだったの?」
「つけられてた」
「え?い、いつから」
「気づいたのはガキの手当をした時だ」
「そんな・・・なんで・・・」
ギュッと肩掛け鞄の紐を握ってハッとした。
まさか、まさか・・・
「・・・ダイヤモンド」
「ん、それしかねぇな。家を見張ってたのか、それとも」
「それとも?」
「あの時、家の中にいたか」
ディアドリはゾッとして口元を覆った。
もしかしたら殺されていたかもしれない、脳裏を過ぎるのはマルクではなく父だった。
喉元を込み上げるなにかをゴクンも飲みくだし、深く深く息を吸い込む。
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