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本題
くすぐりという名の地獄。【本番前】
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かれこれ何時間経っただろうか。
それともまだそんなに経っていないだろうか。
あれから、私の身体を這い回る指は止まることも無ければ激しくなることもなく、それでいて違う部位に行くことも無ければ慣れてしまう程単調ではない、絶妙なパワーバランスで私にくすぐったさを与え続けている。
手のひらや二の腕なんかは、くすぐり方やシチュエーションでここまでくすぐったいと感じるのかと思った。
首筋は元々くすぐられると首を竦めてしまうような部位ではあるが、今は心の底からもう触って欲しくないと感じている。
そして。
───ふと私の身体を襲う無数の指が離れていった。
今まで散々笑い続けていた私は、ここぞとばかりに息を整える。
全力で息を吸い、吐く。また吸う。
きちんと呼吸できるありがたみを噛み締めながら、そして泣きそうになりながらも呼吸を整える。
身動きの取れない状態でくすぐられ続けることが、こんなにも辛かったなんて。
少し経って呼吸も落ち着いてきた頃、先程頭に過ぎった恐怖を思い出す。
ああ、さっきまでのはまだ本番じゃないんだ、と。
まだまだ、本当にくすぐったい箇所は一切触れてすらいないのだ。
腋の下、脇腹、お腹、内腿、足の裏。
想像するだけでその箇所がむず痒くなるような気がした。
これだけくすぐりに対して本気の人達が、そんな定番ともいえる部位をくすぐらないはずが無い。
意識しようとしなくても身体に緊張が走る。
呼吸が完全に整った今もなお、相変わらず指一本動かせないし、何も見えないし何も聞こえないのは変わらない。
ただ、最初と大きく違うのは一度受けた辛すぎるくすぐり。
くすぐられる前までは、何をされるか分からない漠然とした恐怖はあったものの、現実離れした状況に変に落ち着いていた自分が居たことを確かに覚えている。
だが今はどうか。
さっきまでの明らかに本気ではないくすぐりによって強制的に笑わさせられ、肺の空気をこれでもかと吐き出すことを強要された。
さっきよりもくすぐったい、地獄のようなくすぐりが待っていることは想像に難くない。
筆舌に尽くし難いくすぐりを受けた上で、そしてまだそれが本気ではないと分かっていながら、その先を意識するなと言う方が無理がある。
こんな外部刺激の一切を遮断されている状態で身構えていてもしょうがないのはわかっている。
それでも、どうしても意識はくすぐりの方へと向いてしまうのである。
いつ始まるのだろうか、最初は腋の下だろうか、それとも足の裏?
さっきのくすぐりよりもどれぐらいくすぐったいのかな、いつ終わるのかな、どうしたら許してくれる?
そんな思考がぐるぐるとうずまき続けている。くすぐり以外のことなんて考えられない状況なのである。
そんな私を知ってか知らずか、さっきまでくすぐったさを無慈悲に与えてきていた無数の指はその後一向に触れてこない。
いい加減身構え続けるのも精神的に疲れてきていた。
もしかしたら、反応がお気に召さなくて放っておかれてる?
このままずっと放置されるのかな、今度こそ夢オチかな?
そんなことはありえないことは頭では分かっていた。
相変わらず身体は指先まできっちり拘束されたままだし、一糸纏わぬ姿であることも、何も見えず、何も聞こえない状態であることも、何一つ変わらない。
ただ、さっきまでの絶望的なくすぐりを考えると、そうであって欲しいと心が訴えかけてくるのだ。
このまま終わって欲しいという願望が、本当に終わりかもしれないという希望的観測へと変化していく。
これは、人間の防衛本能のようなものなのかもしれない。
心が壊れてしまわないように、自然とネガティブな未来を避けるように気持ちが変化していく。
ただ、大体の場合こういったネガティブな想像というのは考えすぎであって、いざ未来が訪れたときには想像よりもずっとマシな現実になることも多い。
そうなった時のために人は色々と未来を予測し、ああでもないこうでもないと自分のメンタルを落ち着けているのかもしれない。
そう、きっと何らかの理由で助かるのだろう。人生なんて意外とそんなものだ。
完全に警戒が解けたわけではないながらも、ふと身体の力が少しだけ抜けたような感覚。
───ただ、この現実は違った。そんな甘い未来は当然ながら訪れない。
さっきまでそんなことは分かっていたのに、ふとわずかに気が緩んだその刹那。
私の両足の裏に突然襲いかかる、強烈なくすぐったさ。
もちろん、一切の情報が遮断されている私にその前兆を感じ取れるはずもなく、少し気が緩んだ瞬間に訪れた足の裏への刺激に、完全に拘束されているままの身体はその可動範囲いっぱいに跳ね上がるのを感じた。
そして、そのまま両方の足の裏をこちょこちょと這い回る指の刺激に、さっきまで忘れていたくすぐったいという苦痛が一気に溢れてくる。
ああ、やっぱりそんなに甘くなかった。
また死ぬほどくすぐったくて苦しくて、逃れられないくすぐり地獄が始まる。
それともまだそんなに経っていないだろうか。
あれから、私の身体を這い回る指は止まることも無ければ激しくなることもなく、それでいて違う部位に行くことも無ければ慣れてしまう程単調ではない、絶妙なパワーバランスで私にくすぐったさを与え続けている。
手のひらや二の腕なんかは、くすぐり方やシチュエーションでここまでくすぐったいと感じるのかと思った。
首筋は元々くすぐられると首を竦めてしまうような部位ではあるが、今は心の底からもう触って欲しくないと感じている。
そして。
───ふと私の身体を襲う無数の指が離れていった。
今まで散々笑い続けていた私は、ここぞとばかりに息を整える。
全力で息を吸い、吐く。また吸う。
きちんと呼吸できるありがたみを噛み締めながら、そして泣きそうになりながらも呼吸を整える。
身動きの取れない状態でくすぐられ続けることが、こんなにも辛かったなんて。
少し経って呼吸も落ち着いてきた頃、先程頭に過ぎった恐怖を思い出す。
ああ、さっきまでのはまだ本番じゃないんだ、と。
まだまだ、本当にくすぐったい箇所は一切触れてすらいないのだ。
腋の下、脇腹、お腹、内腿、足の裏。
想像するだけでその箇所がむず痒くなるような気がした。
これだけくすぐりに対して本気の人達が、そんな定番ともいえる部位をくすぐらないはずが無い。
意識しようとしなくても身体に緊張が走る。
呼吸が完全に整った今もなお、相変わらず指一本動かせないし、何も見えないし何も聞こえないのは変わらない。
ただ、最初と大きく違うのは一度受けた辛すぎるくすぐり。
くすぐられる前までは、何をされるか分からない漠然とした恐怖はあったものの、現実離れした状況に変に落ち着いていた自分が居たことを確かに覚えている。
だが今はどうか。
さっきまでの明らかに本気ではないくすぐりによって強制的に笑わさせられ、肺の空気をこれでもかと吐き出すことを強要された。
さっきよりもくすぐったい、地獄のようなくすぐりが待っていることは想像に難くない。
筆舌に尽くし難いくすぐりを受けた上で、そしてまだそれが本気ではないと分かっていながら、その先を意識するなと言う方が無理がある。
こんな外部刺激の一切を遮断されている状態で身構えていてもしょうがないのはわかっている。
それでも、どうしても意識はくすぐりの方へと向いてしまうのである。
いつ始まるのだろうか、最初は腋の下だろうか、それとも足の裏?
さっきのくすぐりよりもどれぐらいくすぐったいのかな、いつ終わるのかな、どうしたら許してくれる?
そんな思考がぐるぐるとうずまき続けている。くすぐり以外のことなんて考えられない状況なのである。
そんな私を知ってか知らずか、さっきまでくすぐったさを無慈悲に与えてきていた無数の指はその後一向に触れてこない。
いい加減身構え続けるのも精神的に疲れてきていた。
もしかしたら、反応がお気に召さなくて放っておかれてる?
このままずっと放置されるのかな、今度こそ夢オチかな?
そんなことはありえないことは頭では分かっていた。
相変わらず身体は指先まできっちり拘束されたままだし、一糸纏わぬ姿であることも、何も見えず、何も聞こえない状態であることも、何一つ変わらない。
ただ、さっきまでの絶望的なくすぐりを考えると、そうであって欲しいと心が訴えかけてくるのだ。
このまま終わって欲しいという願望が、本当に終わりかもしれないという希望的観測へと変化していく。
これは、人間の防衛本能のようなものなのかもしれない。
心が壊れてしまわないように、自然とネガティブな未来を避けるように気持ちが変化していく。
ただ、大体の場合こういったネガティブな想像というのは考えすぎであって、いざ未来が訪れたときには想像よりもずっとマシな現実になることも多い。
そうなった時のために人は色々と未来を予測し、ああでもないこうでもないと自分のメンタルを落ち着けているのかもしれない。
そう、きっと何らかの理由で助かるのだろう。人生なんて意外とそんなものだ。
完全に警戒が解けたわけではないながらも、ふと身体の力が少しだけ抜けたような感覚。
───ただ、この現実は違った。そんな甘い未来は当然ながら訪れない。
さっきまでそんなことは分かっていたのに、ふとわずかに気が緩んだその刹那。
私の両足の裏に突然襲いかかる、強烈なくすぐったさ。
もちろん、一切の情報が遮断されている私にその前兆を感じ取れるはずもなく、少し気が緩んだ瞬間に訪れた足の裏への刺激に、完全に拘束されているままの身体はその可動範囲いっぱいに跳ね上がるのを感じた。
そして、そのまま両方の足の裏をこちょこちょと這い回る指の刺激に、さっきまで忘れていたくすぐったいという苦痛が一気に溢れてくる。
ああ、やっぱりそんなに甘くなかった。
また死ぬほどくすぐったくて苦しくて、逃れられないくすぐり地獄が始まる。
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