朝餉添えの贄

琴里 美海

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第弐拾壱話

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 俺が向かった場所は焼けて崩れちまった一件の建物。ついでに言うと俺の予想は当たってたみてぇだ。
 建物のすぐ近くに氷柱が座っていた。

「氷柱!!」

 俺はすぐに氷柱の所へ行くと、何かが真横を飛んで行った。
 頬に何か熱い感覚がじんわりと広がると、俺は頬に触れた。何か液体の感触が指先に触れて、見てみると血が付いていた。
 何が飛んで来たのかを確認する為に後ろを見ると、羽根が地面に刺さっていた。
 もう一度氷柱の方を見ると、さっきまで居なかった筈の鴉が氷柱の横に立っていた。

「鴉!!!」
「もう来たのですか、思っていたよりも早かったですね。」

 俺がすぐに蹴りを入れると、鴉は氷柱を抱えて俺から離れた。

「危ない人ですね、彼女に傷が付いたらどうするつもりですか。」
「手前ェが氷柱から離れりゃ良いだけの話だろ!!!」

 其処で俺はある事に気が付いた。氷柱の目に光が宿って無いし、今まで無かった筈の首輪が氷柱の首に嵌められていた。

「手前ェ!!!何氷柱に首輪なんざ付けてんだよ!!!」
「えぇ、とても似合っていますよね。」
「会話成立させろゴラ!!!」

 思い切り殴りかかるとまさかの氷柱を盾にしてきた。
 慌てて腕を止めると鴉が俺の顔面を思い切り蹴り飛ばしてきた。
 地面に思い切り頭をぶつけると鴉が鳩尾を腕で貫いてきた。

「ッ!!!ガハッ!!!」

 いろんな内臓ぶち抜いて鴉の腕が貫通すると、俺は大量に血を吐いた。
 鴉が腕を引き抜くと俺は其の腕を掴んでへし折った。だが俺と違って自己再生能力を持ってる鴉の腕はすぐに治った。

「本当にしぶとい方ですね。今は鳩尾を貫き、先程は脳を破壊したのにこうして生きているんですから。」
「う、ぐッ!!」

 やっぱ血が止まらないし、痛みってのは何時だってあるんだよな。自己再生能力と一緒に痛覚も消えてくれりゃ良かったのに。
 そのまま鴉が抱えている氷柱に手を伸ばすと、鴉は俺が掴んでいる腕を更に左胸に突き刺してきた。あ、これは、この感覚は心臓を掠った。

「ぐぁ!!!あが、ぁ…………」
「…………………」

 鴉が腕を引き抜くが、俺はそれでの手を離さなかった。

「本当にしぶとい方だ、これで死なないとは一体どう言う体をしているんですか。」
「ぅ、るせ……………」

 血が流れて貧血になるし、肺にも穴が開いたせいで呼吸が上手い事出来ない。
 鴉は大きく溜め息を吐くと、焼けてボロボロのあの家の中に氷柱連れて行った。
 すぐに戻って来ると氷柱の代わりに火の入っている瓶を握っていた。ってかあの炎、前にどっかで見た事がる様な。
 それが何の炎か分かると俺は吃驚した。

「お前…………それ……………」
「あぁやはりご存知でしたか。」

 如何してお前がそれを持っている。如何してそれが今此処にある。それを一体どうする心算なんだよ。
 そんな事を考えている間に鴉はその瓶を崩れる寸前の家に投げた。

「!!!」

 炎は一瞬で残り少ない建物の骨組みを包んだ。
 この炎は普通の炎じゃない。寧ろこれが普通の炎だったら果たしてどれだけ良かった事か。だってよ、この炎は『地獄の業火』だ。
 あらゆる物を絶対に燃やし尽くす『地獄の業火』。
 血がぼたぼたと落ちるがすぐに立ち上がった。

「氷柱!!!」

 慌てて燃え盛る家の中に飛び込んだ。
鴉の笑う顔を横目に。

 もうどうしようも無いくらいに炎が広がっていて、その中で氷柱は光の宿らない目で空を見つめていた。

「氷柱!!!氷柱……………」

 俺は氷柱の横に膝を突いた。
 ボタボタと相変らず血が落ち続ける。
 俺は氷柱の頬に触れた。手に血が付いてたせいで氷柱の顔に血が付いちまって、すぐに服で拭いた。
 兎に角俺は氷柱の首に嵌められている首輪を無理矢理外した。
 その辺に首輪を投げ捨てると、俺は意識が遠退いて倒れそうになったが、手を突いて何とか堪えた。

「ぐっ!!!」

 ビシャッと床に血が落ちた。
 『地獄の業火』は対象物を燃やし尽くすまで消えない。この家が消えるまで炎は消えない。って事は家の中に居る氷柱だって危ない。
 俺は氷柱を抱きかかえた。

「大丈夫、俺が守る……………約束、したからな……………」

 お前が覚えて無くても良い。

 俺が約束を守るから。
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