朝餉添えの贄

琴里 美海

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第弐拾弐話

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「うっ、ひっく!ひぅ、ぅ、あぁ!ふ…………」

 泣いても泣いても誰も声を掛けてくれない。誰も助けてくれない。そんな事何時もの事。だけど私の涙は止まってくれない。

「うぅ、う…………ひっく、ひっく……………」

 寂しい。
 だけど寂しいと言っても誰も私に優しくしてくれない。誰も私を助けてなんかくれない。

 誰も私を望んでくれない。

 そんな事を毎日毎日考えていた。知らない内に季節が過ぎて行っていた。
 空気はひんやりと冷えていて、空からは冷たい雪がしんしんと降り続き、指先を凍らせて赤く痛めてくる。
 家らしい家なんて無くて、いろんな人から少しずつ食べ物を貰っている。一日一食食べれたら、それはもう十分御馳走ってくらいの少ない量だけど。
 今日も御昼に少しだけ食べられた。

「……………お風呂、入りたいな。」

 最後に入れたの何時だったっけ。それくらい前に一回だけお風呂に入って以来だった。
 今日お昼をくれた人に恐る恐るだけど頼む事にした。

「あ、あの、お風呂に入りたいんです。」
「で?」
「す、少しだけで良いので、お湯を下さい。」

 私がそう言うとおばさんは大きく舌打ちをして、すぐ近くにあった桶を掴んだ。

「お前がお湯なんて図々しい!!水で充分だろう!!」

 そう言って水を掛けられた。
 寒い。
 寒いけど言った所で体を拭いてくれる訳が無く、私はすぐにその場を離れた。
 手先が凍る、足も凍る、髪も凍る。寒くて寒くて、でも寒いのを通り越して痛くて仕方が無い。
 行く所が無いから私は人目の付かない所へ向かっていた。

(寒い……………)

 もう体が思った様に動いてくれないくらいに凍ってる。
 雪の中を裸足で歩いていたけど、感覚がもう無くなってて、知らない内に居たくなくなってた。
 周りが真っ白なせいで今自分がどの辺に居るのか分からなくて、見事に迷子になっちゃった。

(何だろう、眠くなってきた………………)

 その時、目の前に家が見えた。こんな所に家なんてあったんだ。
 お邪魔して、せめて体を温めさせてもらおうとおもったけど、私はその家に近付く事が出来なかった。
 白い髪に青い瞳。普通じゃないこの見た目を見て、果たしてこのお家の人は私を家に入れてくれるのかな。いや、多分入れてくれないと思う。だって村の人達は私の事を皆嫌ってるから、誰が見たって私を嫌うと思う。
 その場を離れようと思った時、私は知らない内に地面に倒れていた。

「あれ?」

 雪の上なのにあんまり冷たくない。何でだろう。寧ろフカフカで凄く気持ちが良い。

「ちょっとだけ、ちょっとだけ寝よう…………………」

 もう眠くて眠くて仕方が無い。
 大丈夫、少しだけなら多分大丈夫。そう思って私は目を閉じた。
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