朝餉添えの贄

琴里 美海

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第参拾五話

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 暁光さんが鴉さんに蹴りを入れると、鴉さんはすぐに腕で防ごうとしたけど、見事に蹴り飛ばされていた。
 次の攻撃が来ると思ったのか鴉さんはすぐに起き上がったけど、もう暁光さんが鴉さんの目の前まで行っていて、拳を強く握りしめていた。
 思いっ切り鴉さんを殴ると、鴉さんは地面に叩き付けられた。
 そのまま暁光さんが踵落としをすると、鴉さんは暁光さんの脚を掴んだ。

「如何して『地獄の業火』で焼かれておきながら生きているんですか。」
「元々死ににくい体質なんでね!!」

 無理矢理脚を振り抜くと、見事に鴉さんのお腹に直撃した。

「どっしぇー!!暁光『地獄の業火』で焼かれてたんっすか!?」
「そりゃ重症だよな。」

 そんな二人の会話を聞いて、さっきも出た言葉が少し気になった。

「鶴さん、『地獄の業火』って何なんですか?」
「読んで字の如く、地獄に存在する業火じゃ。其れは対象物が燃えて消えるまで消える事は無く、延々と燃え続ける炎。どれ程の強風であろうと、どれ程の大量の水であろうと消す事は出来ぬのじゃ。」
「そう、そうの筈なんですよ。」
「!!」

 何時の間にか鴉さんが真後ろに移動していた。
 雀さんと鳩さんがすぐに前へ来てくれると、鴉さんは二人に手を向けた。その瞬間凄い風が吹いて二人が飛ばされた。

「雀さん!!鳩さん!!」

 そのまま鶴さんにも手を向けようとした時、突然鴉さんの目の前で大爆発が起きた。

「なっ!!!」
「手前ェよ、何氷柱に近付いてんだ。」

 ふわりと、優しき抱き寄せられると、何時の間にか私の後ろに暁光さんがいて、暁光さんは鴉さんに手を向けていた。

「暁光さん、本当に体大丈夫なんですか?」
「あぁ、何だって自己再生能力が戻ったかは知らないけどな。」
「そんな事、大して考えずとも分かる事じゃ。」
「あ?」
「氷柱がそなたの事を、そなたが神であった事を思い出したからじゃ。」

 鶴さんがそう言うと暁光さんはぐるんと私を見た。ちょっと驚いた。

「氷柱!!今の本当か!?」

 暁光さんの勢いがあまりにも凄いもんだから、驚いて声が出せず、取り合えず何回か思い切り頷いておいた。
 暫くキョトンとしていたけど、段々と嬉しそうな顔になった。

「戦闘中にそう言うお話しは止めていただけますかね!!」
「うっせぇよ。」

 横に来た鴉さんに向かって暁光さんは腕を振ると、腕を振った軌道と同じ場所が爆発した。
 鴉さんはそのまま後ろに飛ばされた。

「俺は今氷柱と話してんだよ、横から割り込んで来るんじゃねぇ。」
(戦う方が最優先な気がするけど………………)

 其れを言うと暁光さんにいろんな事を言われそうな気がして止めておいた。

「それで氷柱、お前本当に思い出してくれたんだな?」
「え、あ、はい。」
「そうか、それでさっき謝ってきたのか。」

 あの時の事を謝りたかった。
 口を開いた時、暁光さんに人差指で上唇を触られた。

「別に良いって。それにお前なら文句は無いって言っただろ?」
「でも、だけど……………」
「まぁ別に謝るのは良いけどよ、ちょっと待っててくれよ。」

 私から離れて立ち上がると、暁光さんは鴉さんの所へ走って行った。
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