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2章:神の種と迷宮都市
53:月夜視ノ瞳
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今、俺の周りには黒い氷の刃が3本くるくると回っている。
「へぇ、こういう感じなのか」
俺の周りをその三本の刃は集まり、俺の持っている短剣サイズの姿霧氷雨と合わさり、元の形状へと戻った。
今俺が立ってるのは氷の上だ。そしていま俺の目の前にある、大きな氷はツイン・サーペントだ。
俺は、あの無理で起こった現象を、詠唱を使って完成させた。
無詠唱のスキルを持っている俺がなぜ詠唱を使うのか、それは魔力の消費を抑えるためだ。
あの範囲を凍りつかせるのに、多くの魔力を吸われ、完成しなかったのがあの森の光景だ。
だが、詠唱を行うことで魔力の消費を抑え、完成したのが今の氷の世界だ。
姿霧氷雨を鞘へと仕舞う。すると、エルの声が聞こえた。
《姿霧氷雨からのアクセスを確認。改変されます。スキル:意思疎通 人化 の譲渡を確認。姿霧氷雨の人化のスキルの発動を確認》
エルがそういうと、鞘に納めた姿霧氷雨が、鞘ごと霧に包まれる。
その霧は俺の前まで来ると、霧散しその中からは一人の女の子が出てきた。
身長は俺より少し低い程度。目は青く、髪の色は白に近い水色で、腰まで来る長いポニーテールだ。服は白色の着物、まさに浴衣美人だった。
「君がおねぇさんの新しい持ち主?」
「まぁ……そうなるな」
「そう、じゃあおねぇさんと勝負!」
「は?」
俺は、そう答えるしかなかった。
今は大量に魔力を消費したばかりで疲れているのに、妖刀娘と今から戦えと?
「嫌ならおねぇさん、また箱の中に戻る。君に呪いかけてから」
「おい!」
これは戦うしかないようだ。
〝やる。本気で〟
そして、なぜかムラクモはやる気に満ち溢れていた。
「わかった、俺が勝ったら……」
「ヒサメ、もしくはヒサメねぇさんでも可」
「んじゃヒサメ。俺が勝ったら正式に俺のものになれ」
「やだぁ、おねぇさん、こんなところでプロポーズされてる?」
いらっ
「違う、刀の所有者として認めろってことだ」
「なんだ、そんな事かぁ、おねぇさんに勝てたら、おねぇさんの全部をあげるよ?」
そのどこか誘うような、ヒサメに一瞬目を奪われる。
〝じー〟
そんな俺に、意思疎通で見てることを主張するムラクモ。
「で、勝負内容は?」
俺がそういうと、ヒサメは手を振り下ろす。
すると、周りに張り付いていた氷は水へと姿を変え、ヒサメの元へ集まっていく。
そして、ヒサメの手には1本の刀ができていた。
「単純に、1撃確実に入った方の勝ち、おねぇさんが負けたら、君にすべてをあげる。おねぇさんが勝ったら、そうだなぁ、いい勝負をして君が負けたら、君の周りの女の子全員殺そうか。」
ヒサメの目は暗く、ハイライトがなくなっていた。
そして俺は、勝つという選択しかなくなった。
「ヒサメ。お前本気で言ってるのか?」
「もちろん。おねぇさんはいつでも本気だよ? 私と良い勝負出来る人なんて、そうそういないからね。さっき使われて、それぐらいの力があるのはわかったよ。そんな子をほかの子に上げるなんて、やだからね」
「わかった、それでいい。だが俺が負けても、あいつらは殺させない」
「ふふふ、そうこなくっちゃ。ねぇ、おねぇさんを楽しませてね!」
そういうと、ヒサメは氷の刀を持って俺に迫ってきた。
俺はとっさにムラクモを抜刀。氷の刀を受け止める。
『砕け散れ!』
ヒサメがそういうと同時に、氷の刀が砕け散った。砕けた氷は3本刃となって俺に迫ってくる。
『影炎』
俺は幻影を残し、後ろへと後退する。
砕け、分かれた3本の刃は、ヒサメの元へと集い、再び1本の刀が形成された。
「まだまだ行くよぉ」
ヒサメの上段からの振り下ろし。それをムラクモで受け止め、蹴りを放つ。
だがそれは軽く避けられ、避け際に、横薙ぎを放ってくる。かろうじて避けることができたが、それでも防戦一方だ。
「君の力ってそんなものなの? おねぇさんがっかりだよ」
ヒサメはがっかりしたような表情で肩を落として、首を振る。
そんな、表情にイラついた俺は、本気でやることにする。
(ヨリヒメ。制御だけでいいから頼む)
“しょうがないな、今回だけだよ。ボクの寛大な心に感謝してほしいね”
(感謝してますよ!)
『纏え。ヨリヒメ。黒鬼ノ衣』
黒い魔力が一気に放出される。そして、一気に収縮していく。
黒い魔力は俺の肌に纏われた。それと同時に自分の心臓の鼓動が聞こえてくる。
そして、次の瞬間。心臓の鼓動が跳ね上がり、額の左側に黒い角が1本生える。そしてその角から左目を伝うように赤い紋様が浮かぶ。
さらに、目は黒く染まった。そう、生成化だ。
「こっからが、本番だ!」
(エル。生贄の魔力を送れ)
《了解しました》
俺が、そういうとエルは生贄の制御を引き受け、俺に魔力を送り込んでくる。
「ふふふ、おねぇさん。勢い余って君を殺さないようにしなくっちゃね!」
そう言いながらまた突っ込んでくるヒサメ。
たぶん。ヒサメに夢偽ノ瞳は、効かない。さっきから目線が合うことがないからだ。
これでまた、ヒサメの攻撃を受け止めたらさっきと一緒だ。
『纏え。黒炎』『黒飛炎』
俺は黒い炎の斬撃を放つ。だがそれは、体を少し横に倒すことで避けられる。
「君、ホント、おねぇさん好み!」
「なら、こんなことするなよ!」
俺は受け答えながらも、1撃2撃3撃と氷の刀の太刀を受け流していく。
『貫き穿てムラクモ』
俺は距離を取りムラクモを伸ばしての攻撃を試みる。
『水雹化』
ムラクモを見に受けた、ヒサメの体がどろりと水のように溶け姿を消す。
(エル。使うぞ!)
《スキル:並列思考獲得完了。大丈夫です》
『月夜視ノ瞳』
俺は未来視を発動させる。
俺の瞳に映ったのは、俺の周り3方向からの刃の攻撃と上から降ってくるヒサメの姿だった。
俺が見た未来は約5秒先それだけで、脳が刺激を受けて、頭痛がしてくる。これでもこの思考のほとんどをエルが受け持っているのだ。あの森で、試さなかった理由が分かった。
そして俺は。知っている未来に逆らい行動する。
氷の刃が飛んでくるであろうタイミングのコンマ数秒早めに動き、ヒサメが降ってくるであろう位置にムラクモの切っ先を置く。
すると、刃同士が俺がさっきまでいた場所で衝突。砕け散り、空中で今更行動のキャンセルできないヒサメは、ムラクモの刀身ぎりぎりに首を置いた。
「俺の勝ちだな」
「期待以上だよ、おねぇさんの負け」
ヒサメはそう言いながら俺に笑みを向けた。
「へぇ、こういう感じなのか」
俺の周りをその三本の刃は集まり、俺の持っている短剣サイズの姿霧氷雨と合わさり、元の形状へと戻った。
今俺が立ってるのは氷の上だ。そしていま俺の目の前にある、大きな氷はツイン・サーペントだ。
俺は、あの無理で起こった現象を、詠唱を使って完成させた。
無詠唱のスキルを持っている俺がなぜ詠唱を使うのか、それは魔力の消費を抑えるためだ。
あの範囲を凍りつかせるのに、多くの魔力を吸われ、完成しなかったのがあの森の光景だ。
だが、詠唱を行うことで魔力の消費を抑え、完成したのが今の氷の世界だ。
姿霧氷雨を鞘へと仕舞う。すると、エルの声が聞こえた。
《姿霧氷雨からのアクセスを確認。改変されます。スキル:意思疎通 人化 の譲渡を確認。姿霧氷雨の人化のスキルの発動を確認》
エルがそういうと、鞘に納めた姿霧氷雨が、鞘ごと霧に包まれる。
その霧は俺の前まで来ると、霧散しその中からは一人の女の子が出てきた。
身長は俺より少し低い程度。目は青く、髪の色は白に近い水色で、腰まで来る長いポニーテールだ。服は白色の着物、まさに浴衣美人だった。
「君がおねぇさんの新しい持ち主?」
「まぁ……そうなるな」
「そう、じゃあおねぇさんと勝負!」
「は?」
俺は、そう答えるしかなかった。
今は大量に魔力を消費したばかりで疲れているのに、妖刀娘と今から戦えと?
「嫌ならおねぇさん、また箱の中に戻る。君に呪いかけてから」
「おい!」
これは戦うしかないようだ。
〝やる。本気で〟
そして、なぜかムラクモはやる気に満ち溢れていた。
「わかった、俺が勝ったら……」
「ヒサメ、もしくはヒサメねぇさんでも可」
「んじゃヒサメ。俺が勝ったら正式に俺のものになれ」
「やだぁ、おねぇさん、こんなところでプロポーズされてる?」
いらっ
「違う、刀の所有者として認めろってことだ」
「なんだ、そんな事かぁ、おねぇさんに勝てたら、おねぇさんの全部をあげるよ?」
そのどこか誘うような、ヒサメに一瞬目を奪われる。
〝じー〟
そんな俺に、意思疎通で見てることを主張するムラクモ。
「で、勝負内容は?」
俺がそういうと、ヒサメは手を振り下ろす。
すると、周りに張り付いていた氷は水へと姿を変え、ヒサメの元へ集まっていく。
そして、ヒサメの手には1本の刀ができていた。
「単純に、1撃確実に入った方の勝ち、おねぇさんが負けたら、君にすべてをあげる。おねぇさんが勝ったら、そうだなぁ、いい勝負をして君が負けたら、君の周りの女の子全員殺そうか。」
ヒサメの目は暗く、ハイライトがなくなっていた。
そして俺は、勝つという選択しかなくなった。
「ヒサメ。お前本気で言ってるのか?」
「もちろん。おねぇさんはいつでも本気だよ? 私と良い勝負出来る人なんて、そうそういないからね。さっき使われて、それぐらいの力があるのはわかったよ。そんな子をほかの子に上げるなんて、やだからね」
「わかった、それでいい。だが俺が負けても、あいつらは殺させない」
「ふふふ、そうこなくっちゃ。ねぇ、おねぇさんを楽しませてね!」
そういうと、ヒサメは氷の刀を持って俺に迫ってきた。
俺はとっさにムラクモを抜刀。氷の刀を受け止める。
『砕け散れ!』
ヒサメがそういうと同時に、氷の刀が砕け散った。砕けた氷は3本刃となって俺に迫ってくる。
『影炎』
俺は幻影を残し、後ろへと後退する。
砕け、分かれた3本の刃は、ヒサメの元へと集い、再び1本の刀が形成された。
「まだまだ行くよぉ」
ヒサメの上段からの振り下ろし。それをムラクモで受け止め、蹴りを放つ。
だがそれは軽く避けられ、避け際に、横薙ぎを放ってくる。かろうじて避けることができたが、それでも防戦一方だ。
「君の力ってそんなものなの? おねぇさんがっかりだよ」
ヒサメはがっかりしたような表情で肩を落として、首を振る。
そんな、表情にイラついた俺は、本気でやることにする。
(ヨリヒメ。制御だけでいいから頼む)
“しょうがないな、今回だけだよ。ボクの寛大な心に感謝してほしいね”
(感謝してますよ!)
『纏え。ヨリヒメ。黒鬼ノ衣』
黒い魔力が一気に放出される。そして、一気に収縮していく。
黒い魔力は俺の肌に纏われた。それと同時に自分の心臓の鼓動が聞こえてくる。
そして、次の瞬間。心臓の鼓動が跳ね上がり、額の左側に黒い角が1本生える。そしてその角から左目を伝うように赤い紋様が浮かぶ。
さらに、目は黒く染まった。そう、生成化だ。
「こっからが、本番だ!」
(エル。生贄の魔力を送れ)
《了解しました》
俺が、そういうとエルは生贄の制御を引き受け、俺に魔力を送り込んでくる。
「ふふふ、おねぇさん。勢い余って君を殺さないようにしなくっちゃね!」
そう言いながらまた突っ込んでくるヒサメ。
たぶん。ヒサメに夢偽ノ瞳は、効かない。さっきから目線が合うことがないからだ。
これでまた、ヒサメの攻撃を受け止めたらさっきと一緒だ。
『纏え。黒炎』『黒飛炎』
俺は黒い炎の斬撃を放つ。だがそれは、体を少し横に倒すことで避けられる。
「君、ホント、おねぇさん好み!」
「なら、こんなことするなよ!」
俺は受け答えながらも、1撃2撃3撃と氷の刀の太刀を受け流していく。
『貫き穿てムラクモ』
俺は距離を取りムラクモを伸ばしての攻撃を試みる。
『水雹化』
ムラクモを見に受けた、ヒサメの体がどろりと水のように溶け姿を消す。
(エル。使うぞ!)
《スキル:並列思考獲得完了。大丈夫です》
『月夜視ノ瞳』
俺は未来視を発動させる。
俺の瞳に映ったのは、俺の周り3方向からの刃の攻撃と上から降ってくるヒサメの姿だった。
俺が見た未来は約5秒先それだけで、脳が刺激を受けて、頭痛がしてくる。これでもこの思考のほとんどをエルが受け持っているのだ。あの森で、試さなかった理由が分かった。
そして俺は。知っている未来に逆らい行動する。
氷の刃が飛んでくるであろうタイミングのコンマ数秒早めに動き、ヒサメが降ってくるであろう位置にムラクモの切っ先を置く。
すると、刃同士が俺がさっきまでいた場所で衝突。砕け散り、空中で今更行動のキャンセルできないヒサメは、ムラクモの刀身ぎりぎりに首を置いた。
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