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2章:神の種と迷宮都市
54:ヒサメの想いと嫉妬が二つ
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俺が黒鬼ノ衣を解き、ムラクモを腰の鞘へと仕舞う。
すると俺は、力の使い過ぎか、床に腰を突き倒れた。
そしてそんな俺を見たヒサメは俺の上へと乗ってくる。いわゆるマウントポジションだ。
「なんだ?」
「いやね、これまでおねぇさんを持った人は、例外なく1週間以内に死んでるの。私の意志に関係なくね」
それは妖刀としての性質だ。力を伴わないものに妖刀は扱えない。
「それでね、やっとすごい力を持つ人のところに来れた。それが君。しかも負けちゃったし、約束は約束。私の全部をあげる」
そしてヒサメはそのまま体を倒し、俺の顔にヒサメの顔が迫ってくる。
「ヒサメ、そんな理由じゃないだろ」
俺の言葉にヒサメが動きを止める。
「だってお前、俺の周りの女殺す気なんてなかっただろ? それぐらいわかる」
俺はあの時、一瞬だが神判ノ瞳を使っている。
あの時のヒサメの周りには黒い靄が出ていた。そして俺はこう質問している。「ヒサメ。お前本気で言ってるのか?」と。
俺の質問に嘘をついた時点で、俺はいつでもヒサメを拘束することができた。だが、しなかった。
それではヒサメは俺を認めないと思ったからだ。だからは俺は正々堂々とは言えないが、勝負を受けた。
ヒサメは俺が確信を持って言っていることに気づき、自白した。
「そうよ。ただ、おねぇさんは君の本気が見たかっただけ。おねぇさんは君の空間からでも感じ取れる魔力で目を覚ました。そして私は君の気を引くために、あの空間に放りこまれたものを凍らせた。そして君は危険だと分かっていても私を手に取った。これまで私を手に取ったものはその力に、欲望に苛まれ、力に惑わされて死んでいった。でも君は私を手に取っても、欲望に刈られたりすることはなかった。その強い心、私を扱えるだけの力。おねぇさんの胸はすごく高鳴ってた。だからこそ、おねぇさんは確かめずに居られなかったの。そしたらこんな姿になった。絶好の機会だと思って、私を本当にうまく使えるか、死なずに私の傍に居てくれるか。それをただ確かめたかっただけなの、ごめんなさい」
俺はヒサメの話を静かに聞き、ヒサメが謝ると、俺は目の前にあるヒサメの頭を撫でた。
「あっ」と驚いたような声をあげるが、一瞬で、落ち着きを取り戻し、気持ちよさそうに頭を撫でられていた。
「試合前のあれは、君を本気にさせるための嘘。でも、一つ本当になったわ。君と戦って、強い君でも私には負けると思ってた。なんて言っても生きてる年数、経験が違うから。でも、君は勝った。あの刀を首に突き付けられたとき。前よりも強く、胸が高鳴ったわ。私を扱えるだけの力を持つ人。私欲に刈られず、私を持ち続けてくれる人。そして私に勝っちゃう人。それに、こんな私を自分のものにしたいとか言う人に私はすべてを捧げたいと本気で思ってしまった。これが恋っていうものなのかしら? 私はそれを確かめたい」
それは、ヒサメからの告白と言えるものだった。俺はそれが嘘でないことを知っている。
そしてヒサメは俺の顔に迫ってくる。
俺は今、動けるだけの体力は残っていない。このままなすがままされてしまうと思ったその時。
ヒサメの首には天叢雲剣が突きつけられていた。
「抜け駆けは許さない。先にユウをもらうのは私」
そう、間一髪俺を助けたのは黒い刀身の妖刀。天叢雲剣を持ったムラクモだった。
「ムラクモ、それ以上はやめとけよ。これでも、こいつは俺のものだ」
俺がそういうと刀を消し、ムラクモは不満そうな顔を俺に向ける。
対してヒサメは、さっきまでの表情とは全く異なり、顔を真っ赤にして、手で顔を覆っていた。手で隠しきれていない箇所や耳まで真っ赤だった。
「ヒサメも退いてくれ」
「わかったわ」
ヒサメが俺に従い上から退いてくれる。
すると次はエルから意思疎通が飛んでくる。
《ますたーはモテ……》
(うるさい)
《最後まで言わせてください》
(だめだ。それともエルまで妬いてるのか?)
《!?……そんなことはありません》
一瞬間があったが、まぁ気のせいだろう。
時間がたち、もう動ける程度にまで回復した俺は立ち上がり、座り込んでいたヒサメを引っ張り立ち上がらせる。
ムラクモは俺がヒサメの手を取ったのを見た瞬間、反対側の腕に抱き着いてきた。
「とりあえず、説明とかは後だ。今はムラクモも矛を収めてくれ、別にヒサメに悪気があったわけでもないしな」
「しょうがない、今はユウに免じて、後でしっかり事情を聴く」
「これ、ありがとうっておねぇさんは言えばいいのかな? まぁあなたのことも気になるし、後でしっかり話しましょ?」
あーなんか、二人が目線で戦ってる、火花とか出そうだ。
これは、後でめんどくさくなるパターンかな、あーやだやだ。俺は干渉せんぞ。
「とりあえずここを出るぞ、転移門まで行くから二人は刀に戻ってくれ」
俺がそういうと二人は頷き、俺の腰のベルトには黒の鞘に包まれたムラクモと白の鞘に包まれたヒサメがあった。
それを確認した俺は、氷漬けにされていたツイン・サーペントの死体を回収し、転移門へと向かった。
すると俺は、力の使い過ぎか、床に腰を突き倒れた。
そしてそんな俺を見たヒサメは俺の上へと乗ってくる。いわゆるマウントポジションだ。
「なんだ?」
「いやね、これまでおねぇさんを持った人は、例外なく1週間以内に死んでるの。私の意志に関係なくね」
それは妖刀としての性質だ。力を伴わないものに妖刀は扱えない。
「それでね、やっとすごい力を持つ人のところに来れた。それが君。しかも負けちゃったし、約束は約束。私の全部をあげる」
そしてヒサメはそのまま体を倒し、俺の顔にヒサメの顔が迫ってくる。
「ヒサメ、そんな理由じゃないだろ」
俺の言葉にヒサメが動きを止める。
「だってお前、俺の周りの女殺す気なんてなかっただろ? それぐらいわかる」
俺はあの時、一瞬だが神判ノ瞳を使っている。
あの時のヒサメの周りには黒い靄が出ていた。そして俺はこう質問している。「ヒサメ。お前本気で言ってるのか?」と。
俺の質問に嘘をついた時点で、俺はいつでもヒサメを拘束することができた。だが、しなかった。
それではヒサメは俺を認めないと思ったからだ。だからは俺は正々堂々とは言えないが、勝負を受けた。
ヒサメは俺が確信を持って言っていることに気づき、自白した。
「そうよ。ただ、おねぇさんは君の本気が見たかっただけ。おねぇさんは君の空間からでも感じ取れる魔力で目を覚ました。そして私は君の気を引くために、あの空間に放りこまれたものを凍らせた。そして君は危険だと分かっていても私を手に取った。これまで私を手に取ったものはその力に、欲望に苛まれ、力に惑わされて死んでいった。でも君は私を手に取っても、欲望に刈られたりすることはなかった。その強い心、私を扱えるだけの力。おねぇさんの胸はすごく高鳴ってた。だからこそ、おねぇさんは確かめずに居られなかったの。そしたらこんな姿になった。絶好の機会だと思って、私を本当にうまく使えるか、死なずに私の傍に居てくれるか。それをただ確かめたかっただけなの、ごめんなさい」
俺はヒサメの話を静かに聞き、ヒサメが謝ると、俺は目の前にあるヒサメの頭を撫でた。
「あっ」と驚いたような声をあげるが、一瞬で、落ち着きを取り戻し、気持ちよさそうに頭を撫でられていた。
「試合前のあれは、君を本気にさせるための嘘。でも、一つ本当になったわ。君と戦って、強い君でも私には負けると思ってた。なんて言っても生きてる年数、経験が違うから。でも、君は勝った。あの刀を首に突き付けられたとき。前よりも強く、胸が高鳴ったわ。私を扱えるだけの力を持つ人。私欲に刈られず、私を持ち続けてくれる人。そして私に勝っちゃう人。それに、こんな私を自分のものにしたいとか言う人に私はすべてを捧げたいと本気で思ってしまった。これが恋っていうものなのかしら? 私はそれを確かめたい」
それは、ヒサメからの告白と言えるものだった。俺はそれが嘘でないことを知っている。
そしてヒサメは俺の顔に迫ってくる。
俺は今、動けるだけの体力は残っていない。このままなすがままされてしまうと思ったその時。
ヒサメの首には天叢雲剣が突きつけられていた。
「抜け駆けは許さない。先にユウをもらうのは私」
そう、間一髪俺を助けたのは黒い刀身の妖刀。天叢雲剣を持ったムラクモだった。
「ムラクモ、それ以上はやめとけよ。これでも、こいつは俺のものだ」
俺がそういうと刀を消し、ムラクモは不満そうな顔を俺に向ける。
対してヒサメは、さっきまでの表情とは全く異なり、顔を真っ赤にして、手で顔を覆っていた。手で隠しきれていない箇所や耳まで真っ赤だった。
「ヒサメも退いてくれ」
「わかったわ」
ヒサメが俺に従い上から退いてくれる。
すると次はエルから意思疎通が飛んでくる。
《ますたーはモテ……》
(うるさい)
《最後まで言わせてください》
(だめだ。それともエルまで妬いてるのか?)
《!?……そんなことはありません》
一瞬間があったが、まぁ気のせいだろう。
時間がたち、もう動ける程度にまで回復した俺は立ち上がり、座り込んでいたヒサメを引っ張り立ち上がらせる。
ムラクモは俺がヒサメの手を取ったのを見た瞬間、反対側の腕に抱き着いてきた。
「とりあえず、説明とかは後だ。今はムラクモも矛を収めてくれ、別にヒサメに悪気があったわけでもないしな」
「しょうがない、今はユウに免じて、後でしっかり事情を聴く」
「これ、ありがとうっておねぇさんは言えばいいのかな? まぁあなたのことも気になるし、後でしっかり話しましょ?」
あーなんか、二人が目線で戦ってる、火花とか出そうだ。
これは、後でめんどくさくなるパターンかな、あーやだやだ。俺は干渉せんぞ。
「とりあえずここを出るぞ、転移門まで行くから二人は刀に戻ってくれ」
俺がそういうと二人は頷き、俺の腰のベルトには黒の鞘に包まれたムラクモと白の鞘に包まれたヒサメがあった。
それを確認した俺は、氷漬けにされていたツイン・サーペントの死体を回収し、転移門へと向かった。
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