白銀の死神姫

Alice

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一章 目覚めた死神姫

episode15 戦闘開始の音

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「たしか、こっちに行ったはずです!!」

「まだそんなに遠くには行ってないはず……っ!」

   Sクラス全員が捕まったあと、白雪達は皆を止めるべく、足跡を追っていた。
   両手両足に4トンの重りを付けたレオンは、額に玉のような汗を浮かべている。その横で、見るからに華奢な少女な白雪が涼しい顔でかけていた。

「?何が…。これは!」

   ふと足を止めたレオンの視線を追うように顔を向けると、そこは、木々が生い茂った森の中、不自然に黒く焼け焦げ、ポッカリと木がない場所があった。

「魔力の残滓ざんし…。中級火炎系攻撃魔法ですね」

   辺りに漂う魔力から、素早くなんの魔法か分析する。

「中級攻撃魔法だったら、Sクラスのリコリスくらいしか使えない…」

「ここにいたって事ですね。でも、ここから移動した形跡がないのですが…。これはいったいどういうこと…?」

   ざっと見渡しても、この開けた空間以外に木々の枝が折れたあとや、土が踏まれた後など、人が移動した形跡がない。

(空からなんて、無理ですよね…。なにより、Sクラスの子達が浮遊魔法を使えるなんて聞いたことないですし)

「やっぱり外部からの侵入者かな…」

「Sクラス全員を失踪させられるくらいですからね…。それ以外考えられません。私達と離れたあの一瞬で、全員を制圧したと考えると、私達と同等か、それ以上…」

「それはまずいな…」

   二人揃って難しい顔で考える。

「レオン。その魔道具は、ノヴァが付けたんですよね?」

「ん?ああ、そうだね。ノヴァが付けたよ」

(もし、私より強い相手だったら、レオンが戦う方がいいけど…。ノヴァが付けた魔道具なんて、解除するのにどれだけ魔力が消費するのか分かんないし…。下手したら魔力切れになるかもしれない)

   ぎゅっと手を握りしめて迷う白雪の耳に、軽やかな男の声が響く。

「あ、いたいた~。移動しないで欲しかったなぁ。Sクラスの人たちと言い、面倒なやつが多い」

「!」

「!?」

   白雪とレオンが同時に振り向くと、木の上から黒いローブをはためかせ、目深にフードを被った(声からして)男が見下ろしていた。

   瞬間、地面が凹み、前触れもなく一瞬で男の前に白雪が現れる。

「っ!!」

「おっと、危ないなぁ~。登場してから急に斬りかかるなんて」

   体重を乗せ、最高スピードで繰り出した懇親の一撃にあっさりと反応されたことに驚く白雪。その手には先程まで持っていた日傘から、真っ白な剣、純血の薔薇ヴィルジニテ・ローゼが握られていた。
   白雪が持つ武器は、白雪が殺したいと思わない限り、斬っても絶対死ぬことはない(怪我をしたり、加減によって瀕死にはなる)、特殊な付与が施されている。普段対人戦の際、手加減が出来ない白雪が使う。

   力押しは無理だと悟った白雪は、素早く飛び退いて、レオンの隣に並ぶ。そして、サブウェポンの剣、純血の薔薇ヴィルジニテ・ローゼから、白雪のメインウェポンである純血の死神鎌ヴィルジニテ・ラ・モルテを握る。

「白雪ちゃん、無理だったら僕が代わる」

「はい」

   コクリと頷くと、大きな鎌を握りしめ、疾風の如く男へ飛び込む白雪。

「はぁっ!」

   ガキンッと金属が打ち合う音が響く。男が使っているのは、これまた真っ黒な漆黒の剣。シンプルな剣だが、どこか白雪の鎌に似ていた。

「へぇ。強くなったんだ」

「くっ!」

   意味深にフードの下の目を細めた男がグッと力を入れて白雪をはじき飛ばす。

   白雪の足が地面を擦りながら、後方へ飛ばされた。

「白雪ちゃん!交代だ!相性が悪い」

「っ!レオン、ですがっ!………分かりました」

   白雪の基本戦闘スタイルは、ヒットアンドアウェイで、強い相手の一撃を浴びれば、1発でアウトだ。速さに目だけでもついてこられている時点で、押されるのは目に見えている。得意な魔法も、周辺に他クラスの生徒がいるかもしれないので、使うことが出来ない。

   レオンの真剣な目を見て、断念した白雪は、男に目を向けたまま、レオンの手枷に手を伸ばすと、ありったけの魔法をこめる。

   すると、ビクともしなかった手枷と足枷が、ガシャンと大きな音を立てて外れる。

「ありがと、白雪ちゃん!」

   そういうや否や、地面を蹴ったレオンが男を青く光る、勇者の剣エクスカリバーで切りつける。

「ふ~ん。やるじゃん」

「生徒達を返してくれないかな?」

「やだねっ!」

   ギーンッと辺りに一際大きな金属音が響いた。黒ずくめの男が油断をしたと思ったその時、背後から白雪の剣が男のうなじめがけて振られる。

「はぁぁぁっ!!」

「よっと」

「あぅっ!!」

   背後からの攻撃で、前のレオンに集中していたはずなのに、一瞬で前のレオンの剣をさばくと、くるりと振り返り、あっさりと白雪の剣を受け流し、溝内に蹴りを入れる。
   魔力をほとんど失って、身体強化を使っていない白雪の身体は、人間ほどではなくとも弱く、バキバキと何本もの骨が折れる音がし、そのまま木へ背中を打ち付けるまで飛ばされる。

「白雪ちゃん!!」

「よそ見してる場合かな?」

「ぐっ!!」

   飛ばされた白雪に視線がいって、手元が疎かになったレオンを容易く殴り飛ばす。
   だが、咄嗟に剣を滑り込ませたため、無傷だった。

「がはっ!げほっごほっ!!」

   口から吐血をし、痛みに顔を顰め、蹴られた溝内を抑えながら立ち上がろうとする白雪だが、思った以上のダメージに、起き上がることが出来ずに、木を背に、ずるりと座り込む。真っ白なドレスには吐き出された血が紅く花を作っていた。

(あと1回ぐらいなら、魔法を使える…。治癒魔法を使って復活しても、多分足でまとい。ここはタイミングを見計らって攻撃魔法を…)

   ちょうどその時、レオンが上手く男の黒剣をはじき飛ばした。

(今だ!)

「『フローズン』!」

   魔法を極めた白雪は、例え上級魔法でも詠唱を必要としない。今回使ったのは、下級氷系支援魔法だが。対象の足元に雪風を発生させ、足元から凍らせていく。

   みるみるうちに、男の足元が凍っていったが、一瞬で男は抜け出す。しかし、超人同士の戦いでは、その一瞬が致命的になる。
   男の体勢が崩れた瞬間、レオンは地を蹴り、間合いを詰め、剣を一閃させた。

   鮮血が舞い、地面に血の花が開いた。
   レオンの剣は、男に届いてはいた。が、腹を狙ったのだが、男に手で掴まれたことによって、斬れたのは、男の手のひらのみだ。

「君、本来の戦い方は剣じゃないんじゃない?」

「よくわかったねぇ~。そう。……今からが面白い所なのに」

   嬉しそうに答えた男の足元に魔法陣が現れ、それを鬱陶しげに一瞥した。

「そ、れ……てん、い…」

   魔力枯渇の症状と、肋の骨を折った痛みで朦朧とする意識を何とかとどまらせ、声を出した白雪の言葉に、バッとレオンが飛び出し、男の服を掴もうとしたが、あと5センチ程のところで、空を切った。

「くそっ!!」

「あ………」

   悔しげに空を切った手を握りしめるレオンと、ついに限界なのか、完全に意識を手放した白雪。

「白雪ちゃん?!」

   慌てて駆け寄ったレオンが、白雪を抱えた(所謂お姫様抱っこをした)瞬間。

『緊急事態発生により、遺跡から出られるよう解除を施しました。皆様、早急に遺跡の外へ避難して下さい』

   というアナウンスが流れ、それを聞いたレオンは、白雪を医務室へ連れていくべく、地面を蹴ってその場を去った。
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