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二章 忍び寄る影
episode26 吸血鬼事件④
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ー6時限目の体育ー
『彼の者の自由を奪え。フローズン』
パキパキと、練習用に置かれた人形の足元に氷の膜が張り、みるみるうちに人形の足元を覆っていく。それでも、彼女、白雪から見たら致命的な遅さだった。
(ここは実力主義の学園ではないから、クラス分けはいたって普通、なんですけど…。彼らたちでは確実にあの男に対しては足止め要員にもなり得ませんね)
クラスメイト達が汗を浮かばせながら体術や魔術を教師に習って頑張っている様子を、いつものように日傘兼武器である祝福の白さして校庭に設置されたベンチに腰掛けて見ていた。
「あの女、またサボってっし!」
「病気とかでもないっぽいのに見学とかふざけてるわ~。うわっ、こっちジロジロ見てくんだけど!キモッ!」
「ちょっと可愛いからって調子乗ってんじゃないわよ!あれくらいならそこらにいっぱい居るしー」
「「「ね~~!」」」
この学園は、白雪が前にいた王立カタストル学園とは違って、一般庶民の生徒が多く通う。そのため、今は一応伯爵令嬢である白雪にあまり畏怖や敬意を払っている様子がなかった。勿論、貴族の生徒はそんな馬鹿なことはしないが、自分が絡まれても嫌なので止める様子もなかった。
濃く化粧をして、スカートを太股のギリギリ辺りまで短くしたギャル風の女子3人がゲラゲラと下品に笑っていた。
(はぁ。またですか。最近あの3人によく標的にされますね)
何度目かに繰り返されるギャル3人の嫌味を軽く聞き流しながら小さく嘆息する。3人はまだ白雪の悪口に花を咲かせていた。その内容は彼女の耳に嫌でも聞こえてくる。
「あのぉ、アリスさんってぇ、ご病気なんですかぁ?そうじゃないなら、あんまり授業を休むの良くないと思いまぁす!」
はーい!と元気に手を挙げながら、柔らかそうな桃色の長髪を揺らして近づいてくる少女。
(…誰でしたっけ?あの事件現場にいた子だということは分かるんですけど)
「えぇっ!もしかして、私の名前分からないんですかぁ?!酷いですぅ~」
可愛らしい顔を少し歪めて、うるっと瞳を濡らす姿は、庇護欲をそそる。周りにいた男子は揃って白雪に厳しい目を向ける。
「すみません。まだ引っ越してきたばかりなので。顔と名前が一致しないだけです」
わざわざクラスで孤立無援になりたいわけじゃないので、素っ気ないながらも謝ってみる。
「そうだったんですねぇ~!私の名前はマリー・エスタレアですよぉ。今度はすぐに忘れないようにしっかり覚えていて下さいねぇ?」
その言葉に、周りにいた生徒達がクスクスと笑った。
「あの子、あの年で人の名前も覚えられないの?頭悪いのね~」
「ホントそれ~!なんか、ざまーみろって感じだったよね~」
(…このマリーとか言う子には空気を読んで言葉を発してほしいところですね。それに、彼女は私に1度も名乗っていないのだから、私が知っているわけないんですけどね)
「そうですね。エスタレアさん。先程の質問に対しての答えですが、私は身体が弱いので、体術や魔術の授業訓練は受けることが出来ません」
「ふぅん…。それってぇ、魔法も使えないし、体術も使えない──。つまり、戦えないってことぉ?」
「えぇー!スノウホワイトさんって戦えないのー?!やっばー!学園来る意味なくなーい?」
「まじそれー!あははははっ!」
「ダッサー!あはっ!!」
(…変わった話し方をする人達ですね)
またもやマリーの言葉により、周りは白雪を嘲笑し出した。しかし、その空気を作った当の本人は、「笑っちゃダメだよぉ~」と言って、周りを宥めている。
「…」
関わるだけ無駄と判断した白雪は、スッとベンチから降り立つと、そのまま校舎へ向かって歩き出した。
しかし、そんな彼女をマリーが追ってくる。
「怒らせちゃったぁ?ごめんねぇ…。悪気はなかったんだよぉ」
目尻に涙を溜めて白雪の前に出た彼女は、急にわっと目元を隠す。クラスメイト達からは離れた所で、聞こえておらず、訝しげに遠巻きで見ていた。
「わぁ~ん!」
目元を覆ったまま、パタパタと先程のギャル3人組に近づくと、ポロポロと涙をこぼした。
「酷いよぉ。アリスさん…。私は怒らせちゃったみたいだから謝っただけなのにぃ…。キモイから近づくな!なんてぇ…」
女子に背中をさすられ、嗚咽に背中を震わせながら、訴える。不意に、こちらを覗いた目は白雪だけに見えるように笑っていた。立ち止まって生徒達の方を振り向いていた白雪はその目を見て思う。
(へぇ。大した演技力ですねぇ。とはいえ、これは少し面倒臭いことになりましたね)
「私はそのようなことは一切言ってませんが?」
はぁと、嘆息してから一応弁解した彼女だったが、それをマリーと言う少女を信じるクラスメイト達に届くことは無く、皆一様に白雪を睨んでヒソヒソと白雪の悪口を語っている。その内、やはりギャル3人組が、前に出てきて白雪の前に立った。
「ちょっと!あんた!!伯爵令嬢だかなんだか知らないけど、お貴族様って皆あんたみたいに性格悪いの?」
「マリーちゃんに謝りなよ!聞いてんの?!」
「このっ!澄ました顔して!」
3人の中の1人が、白雪の胸ぐらを掴んで殴ろうとした。が、振り上げた手は空中で止まる。
「女が暴力はダメだろ。やめろ」
ルセが、ギャルの手首を掴んで止めていた。黒髪に銀色の目の変装姿。つまり、アルトの状態だ。認識阻害のピアスで、顔のランクを落としているとは言え、元が良すぎて、白雪同様普通にイケメンになっている。
「あ、アルト様!こ、これは、そのっ」
「その女がマリーちゃんを泣かしたんです!暴言を吐いて!!」
「そうです!その女が悪いのですよ!!」
サッと手を引っ込めた女子は、そそくさと残りの2人の元へ戻っていき、3人で揃って(敬語で)白雪を貶める。
『彼の者の自由を奪え。フローズン』
パキパキと、練習用に置かれた人形の足元に氷の膜が張り、みるみるうちに人形の足元を覆っていく。それでも、彼女、白雪から見たら致命的な遅さだった。
(ここは実力主義の学園ではないから、クラス分けはいたって普通、なんですけど…。彼らたちでは確実にあの男に対しては足止め要員にもなり得ませんね)
クラスメイト達が汗を浮かばせながら体術や魔術を教師に習って頑張っている様子を、いつものように日傘兼武器である祝福の白さして校庭に設置されたベンチに腰掛けて見ていた。
「あの女、またサボってっし!」
「病気とかでもないっぽいのに見学とかふざけてるわ~。うわっ、こっちジロジロ見てくんだけど!キモッ!」
「ちょっと可愛いからって調子乗ってんじゃないわよ!あれくらいならそこらにいっぱい居るしー」
「「「ね~~!」」」
この学園は、白雪が前にいた王立カタストル学園とは違って、一般庶民の生徒が多く通う。そのため、今は一応伯爵令嬢である白雪にあまり畏怖や敬意を払っている様子がなかった。勿論、貴族の生徒はそんな馬鹿なことはしないが、自分が絡まれても嫌なので止める様子もなかった。
濃く化粧をして、スカートを太股のギリギリ辺りまで短くしたギャル風の女子3人がゲラゲラと下品に笑っていた。
(はぁ。またですか。最近あの3人によく標的にされますね)
何度目かに繰り返されるギャル3人の嫌味を軽く聞き流しながら小さく嘆息する。3人はまだ白雪の悪口に花を咲かせていた。その内容は彼女の耳に嫌でも聞こえてくる。
「あのぉ、アリスさんってぇ、ご病気なんですかぁ?そうじゃないなら、あんまり授業を休むの良くないと思いまぁす!」
はーい!と元気に手を挙げながら、柔らかそうな桃色の長髪を揺らして近づいてくる少女。
(…誰でしたっけ?あの事件現場にいた子だということは分かるんですけど)
「えぇっ!もしかして、私の名前分からないんですかぁ?!酷いですぅ~」
可愛らしい顔を少し歪めて、うるっと瞳を濡らす姿は、庇護欲をそそる。周りにいた男子は揃って白雪に厳しい目を向ける。
「すみません。まだ引っ越してきたばかりなので。顔と名前が一致しないだけです」
わざわざクラスで孤立無援になりたいわけじゃないので、素っ気ないながらも謝ってみる。
「そうだったんですねぇ~!私の名前はマリー・エスタレアですよぉ。今度はすぐに忘れないようにしっかり覚えていて下さいねぇ?」
その言葉に、周りにいた生徒達がクスクスと笑った。
「あの子、あの年で人の名前も覚えられないの?頭悪いのね~」
「ホントそれ~!なんか、ざまーみろって感じだったよね~」
(…このマリーとか言う子には空気を読んで言葉を発してほしいところですね。それに、彼女は私に1度も名乗っていないのだから、私が知っているわけないんですけどね)
「そうですね。エスタレアさん。先程の質問に対しての答えですが、私は身体が弱いので、体術や魔術の授業訓練は受けることが出来ません」
「ふぅん…。それってぇ、魔法も使えないし、体術も使えない──。つまり、戦えないってことぉ?」
「えぇー!スノウホワイトさんって戦えないのー?!やっばー!学園来る意味なくなーい?」
「まじそれー!あははははっ!」
「ダッサー!あはっ!!」
(…変わった話し方をする人達ですね)
またもやマリーの言葉により、周りは白雪を嘲笑し出した。しかし、その空気を作った当の本人は、「笑っちゃダメだよぉ~」と言って、周りを宥めている。
「…」
関わるだけ無駄と判断した白雪は、スッとベンチから降り立つと、そのまま校舎へ向かって歩き出した。
しかし、そんな彼女をマリーが追ってくる。
「怒らせちゃったぁ?ごめんねぇ…。悪気はなかったんだよぉ」
目尻に涙を溜めて白雪の前に出た彼女は、急にわっと目元を隠す。クラスメイト達からは離れた所で、聞こえておらず、訝しげに遠巻きで見ていた。
「わぁ~ん!」
目元を覆ったまま、パタパタと先程のギャル3人組に近づくと、ポロポロと涙をこぼした。
「酷いよぉ。アリスさん…。私は怒らせちゃったみたいだから謝っただけなのにぃ…。キモイから近づくな!なんてぇ…」
女子に背中をさすられ、嗚咽に背中を震わせながら、訴える。不意に、こちらを覗いた目は白雪だけに見えるように笑っていた。立ち止まって生徒達の方を振り向いていた白雪はその目を見て思う。
(へぇ。大した演技力ですねぇ。とはいえ、これは少し面倒臭いことになりましたね)
「私はそのようなことは一切言ってませんが?」
はぁと、嘆息してから一応弁解した彼女だったが、それをマリーと言う少女を信じるクラスメイト達に届くことは無く、皆一様に白雪を睨んでヒソヒソと白雪の悪口を語っている。その内、やはりギャル3人組が、前に出てきて白雪の前に立った。
「ちょっと!あんた!!伯爵令嬢だかなんだか知らないけど、お貴族様って皆あんたみたいに性格悪いの?」
「マリーちゃんに謝りなよ!聞いてんの?!」
「このっ!澄ました顔して!」
3人の中の1人が、白雪の胸ぐらを掴んで殴ろうとした。が、振り上げた手は空中で止まる。
「女が暴力はダメだろ。やめろ」
ルセが、ギャルの手首を掴んで止めていた。黒髪に銀色の目の変装姿。つまり、アルトの状態だ。認識阻害のピアスで、顔のランクを落としているとは言え、元が良すぎて、白雪同様普通にイケメンになっている。
「あ、アルト様!こ、これは、そのっ」
「その女がマリーちゃんを泣かしたんです!暴言を吐いて!!」
「そうです!その女が悪いのですよ!!」
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