【R18】だれがフィクションだと言った 〜圧倒的モブ田中A子のセフレ生活〜

サバ無欲

文字の大きさ
29 / 68
2.経理部、田中A子

その14、久遠秋人は油断大敵②

しおりを挟む



「いいですねえー、生まれながらにお金持ちで権力もあって。人生最高じゃないですか」


嫌味ったらしくいわれて腹が立つ。さっきまでの浮き足だった気持ちはもう微塵もない。もういい。うざい。さっさと本性現せよ。


「でもないよ。俺、隠し子だし」


投げやりに返した言葉を。


「はえー、……」


え? 聞いてる?

まるで右から左に受け流すような反応。それだけ。

え、今の、割と重要なとこだったと思うけど。それこそ、今までの子ならドン引きするとか、キレるとか、いろんな反応があったんだけど、え?

なに、この子。


「ちなみに母はお妾さん。高校で別の男と蒸発して、それで父親に引き取られたけど、面倒になってすぐアパートで一人暮らし。だから半年」


畳み掛けるように話す。何やってんだ俺。
ここまで言うことないだろ。でも止まらなかった。気づけば、ほとんど人に話したことのない部分まで彼女にぶちまけていた。


「自分じゃコネって自覚してないけど、上層部の人間は面接時点で知ってたみたい。だから、もしかしたら融通してもらってたのかも。ただ社会人になってからは一切没交渉だし、財産分与も断ってんだけどね」


視線を、お互い合わせないから。

喋らない、反応のない彼女がなにを考えているのか、予想するしかなかった。ほら、嫌ならさっさとそう言えばいい。吹聴したいならそれもどうぞ。


「どう? これも喋りたかったら言っていいよ」


どうせ噂になったところでなんとでも対処できる。悪いけど、ヒラと専務じゃ立場が違うんだからーー


「ファ」


ふぁ?


「ファミリー・ヒストリー……」


……ファミリー・ヒストリー……

ってあれだよな。ドキュメンタリーの。有名人の家系だったか祖先だったかを調べるやつ。え、なんで? なんで急にそれ? 思わず彼女を見る。


「人に歴史あり……」


あ、だめだ。

予想外。

明らかにあたふたし始めたエンボちゃんをほったらかして、その場にしゃがむ。笑いや、なにかあふれるものを堪えるのに必死だった。だってそんな真面目な顔で、そんなとぼけた反応するなんて、ずるい。誰にも予想できない。



人に歴史あり。
シンプルだけどその通り。
間違いない。

でもそんな風に言ってくれる人なんて……今まで一人もいなかったんだよ。エンボちゃん。



エンボちゃんは俺が気を悪くしたと思っているみたいで、謝って、帰ると言い出した。その言葉をさえぎってキスをする。逃げられないよう、しっかり抱きしめてキスをする。口、開けろ、開けろって。

開いた。

エンボちゃんのすべてを、味わう。
ああ、やられた。油断した。


「エンボちゃん」


こんなの、帰せるわけない。



「好きだよ」
「好き」



逃がせるわけ、ない。


しおりを挟む
感想 172

あなたにおすすめの小説

不埒な社長と熱い一夜を過ごしたら、溺愛沼に堕とされました

加地アヤメ
恋愛
カフェの新規開発を担当する三十歳の真白。仕事は充実しているし、今更恋愛をするのもいろいろと面倒くさい。気付けばすっかり、おひとり様生活を満喫していた。そんなある日、仕事相手のイケメン社長・八子と脳が溶けるような濃密な一夜を経験してしまう。色恋に長けていそうな極上のモテ男とのあり得ない事態に、きっとワンナイトの遊びだろうとサクッと脳内消去するはずが……真摯な告白と容赦ないアプローチで大人の恋に強制参加!? 「俺が本気だってこと、まだ分からない?」不埒で一途なイケメン社長と、恋愛脳退化中の残念OLの蕩けるまじラブ!

隠れ御曹司の手加減なしの独占溺愛

冬野まゆ
恋愛
老舗ホテルのブライダル部門で、チーフとして働く二十七歳の香奈恵。ある日、仕事でピンチに陥った彼女は、一日だけ恋人のフリをするという条件で、有能な年上の部下・雅之に助けてもらう。ところが約束の日、香奈恵の前に現れたのは普段の冴えない彼とは似ても似つかない、甘く色気のある極上イケメン! 突如本性を露わにした彼は、なんと自分の両親の前で香奈恵にプロポーズした挙句、あれよあれよと結婚前提の恋人になってしまい――!? 「誰よりも大事にするから、俺と結婚してくれ」恋に不慣れな不器用OLと身分を隠したハイスペック御曹司の、問答無用な下克上ラブ!

冷徹団長の「ここにいろ」は、騎士団公認の“抱きしめ命令”です

星乃和花
恋愛
【全16話+後日談5話:日月水金20:00更新】 王都最硬派、規律と責任の塊――騎士団長ヴァルド・アークライトは、夜の見回り中に路地で“落とし物”を拾った。 ……いや、拾ったのは魔物の卵ではなく、道端で寝ていた少女だった。しかも目覚めた彼女は満面の笑みで「落とし物です!拾ってくださってありがとうございます!」と言い張り、団長の屋敷を“保護施設”だと勘違いして、掃除・料理・当番表作りに騎士の悩み相談まで勝手に開始。 追い出せば泣く、士気は落ちる、そして何より――ヴァルド自身の休息が、彼女の存在に依存し始めていく。 無表情のまま「危ないから、ここにいろ」と命令し続ける団長に、周囲はざわつく。「それ、溺愛ですよ」 騎士団内ではついに“団長語翻訳係”まで誕生し、命令が全部“愛の保護”に変換されていく甘々溺愛コメディ!

【R18】幼馴染がイケメン過ぎる

ケセラセラ
恋愛
双子の兄弟、陽介と宗介は一卵性の双子でイケメンのお隣さん一つ上。真斗もお隣さんの同級生でイケメン。 幼稚園の頃からずっと仲良しで4人で遊んでいたけど、大学生にもなり他にもお友達や彼氏が欲しいと思うようになった主人公の吉本 華。 幼馴染の関係は壊したくないのに、3人はそうは思ってないようで。 関係が変わる時、歯車が大きく動き出す。

Sランクの年下旦那様は如何でしょうか?

キミノ
恋愛
 職場と自宅を往復するだけの枯れた生活を送っていた白石亜子(27)は、 帰宅途中に見知らぬイケメンの大谷匠に求婚される。  二日酔いで目覚めた亜子は、記憶の無いまま彼の妻になっていた。  彼は日本でもトップの大企業の御曹司で・・・。  無邪気に笑ったと思えば、大人の色気で翻弄してくる匠。戸惑いながらもお互いを知り、仲を深める日々を過ごしていた。 このまま、私は彼と生きていくんだ。 そう思っていた。 彼の心に住み付いて離れない存在を知るまでは。 「どうしようもなく好きだった人がいたんだ」  報われない想いを隠し切れない背中を見て、私はどうしたらいいの?  代わりでもいい。  それでも一緒にいられるなら。  そう思っていたけれど、そう思っていたかったけれど。  Sランクの年下旦那様に本気で愛されたいの。 ――――――――――――――― ページを捲ってみてください。 貴女の心にズンとくる重い愛を届けます。 【Sランクの男は如何でしょうか?】シリーズの匠編です。

暴君幼なじみは逃がしてくれない~囚われ愛は深く濃く

なかな悠桃
恋愛
暴君な溺愛幼なじみに振り回される女の子のお話。 ※誤字脱字はご了承くださいm(__)m

人狼な幼妻は夫が変態で困り果てている

井中かわず
恋愛
古い魔法契約によって強制的に結ばれたマリアとシュヤンの14歳年の離れた夫婦。それでも、シュヤンはマリアを愛していた。 それはもう深く愛していた。 変質的、偏執的、なんとも形容しがたいほどの狂気の愛情を注ぐシュヤン。異常さを感じながらも、なんだかんだでシュヤンが好きなマリア。 これもひとつの夫婦愛の形…なのかもしれない。 全3章、1日1章更新、完結済 ※特に物語と言う物語はありません ※オチもありません ※ただひたすら時系列に沿って変態したりイチャイチャしたりする話が続きます。 ※主人公の1人(夫)が気持ち悪いです。

極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~

恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」 そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。 私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。 葵は私のことを本当はどう思ってるの? 私は葵のことをどう思ってるの? 意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。 こうなったら確かめなくちゃ! 葵の気持ちも、自分の気持ちも! だけど甘い誘惑が多すぎて―― ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。

処理中です...