【R18】だれがフィクションだと言った 〜圧倒的モブ田中A子のセフレ生活〜

サバ無欲

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4.これはフィクション?

その3、エンボちゃんは勘違いしていた

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またやった。
やってしまった。


「……ーーで、三時からはーー……」


きつく詰め寄って、弁解の余地も与えずに突き放した。罪悪感を背負わせるような言い方をして、また彼女に苛立ちをぶつけてしまった。
いい加減にしてくれ、俺。

話してみて、分かった。
映子ちゃんの誤解を解いて、優しく諭せば、それで丸く収まることだったと。思い返せば、たしかに導入部分が悪すぎる。あんな風にお互いほぼ初対面で、ゆきずりみたいなセックスをして、経験の浅い映子ちゃんが予防線を張るのは無理もない。


「……ーー今回の会議の資料はーー……」


ただ、そうなんだとしても。
やっぱりショックだった。


俺の言葉は何ひとつ伝わっていなかったこと、カラダ目当てだと思われていたこと……いや、彼女はそこまで深く考えてはいなかったのだろう。ただ、自分と俺が不釣り合いだからセフレだと……

セフレが愛のない言葉を吐いて?
あげくナマでヤリまくって?
今度は秘書に乗り換える?


どんなクズだよ……


「ーー久遠専務?」
「ああ、うん。三時からイスタンブール支社とテレビ会議ね。了解」


消えたい。
いや、消える前に映子ちゃんに会いたい。彼女とはあの日以来、もう二週間も会っていなかった。

大塚さんは秘書として、慣れないながらも真面目に仕事をしている。確かに華やかで綺麗だし、打てば響くような会話はハッキリしていてやりやすい。

でも、それだけだ。
映子ちゃんが危惧するような事は、なにもないのに。


「付き合ってほしい」とひとこと言うのは簡単だ。でもそれでは所詮上辺だけの解決にしかなり得ない気がして、納得できない。
……いや、上辺だけでも解決しておくべきなのか? 大塚さんの紹介した男はどうなってる? 映子ちゃんがそんなに器用な性格ではないと理解しているけど、ともすれば大塚さんに問い詰めてしまいそうだ。


『久遠さんはもう、早織ちゃんがいいんだっ……て……』


あの日の会話を思い出す。
さも決定事項であるかのような言い方。これからもこんな事が続くんだろうか? 何かトラブルがあるたびに、彼女のなかで自己完結して、離れようとして、俺が引き止めて弁明して、また何かあったら疑われて……そのたびに今まで積み重ねてきた言葉や行動が、彼女のなかでゼロになるのだとしたら、キツい。


そもそもどうしてこんなに悩むんだろう。


今まで女の子と揉めてもこんなにグズグズすることはなかった。イヤなら終わり。すごくシンプル。それが映子ちゃんになるとこんなにも難しくて、手放せない。

すっとんきょうに慌てた顔。
突拍子もない言葉。
誘っておいてガチガチな身体。
冗談を言うときのとがらせた唇。
気を許したときだけ見せる、うっとりした目……


「……はぁ」


駄目だ。


「久遠専務?」
「ん? ああ、もうこんな時間? 昼飯、先に行ってきていいよ」
「では……お言葉に甘えて失礼します」


大塚さんが出て、一人きりになった部屋で携帯を出す。二週間も連絡しないとラインのトーク画面がずいぶん埋れてしまって、見つけるまでにちょっと時間がかかった。

もう昼休みに入っただろうか。
早めに昼食を済ませていたら、読んでもらえるのは夕方になるか……心なしか、メッセージを打つ親指が緊張している。


『この間はごめん』


まずい……指が止まる。
続きがなかなか出てこない。
こんな面倒はしたことがないし、したくもない。

でもやるしかない。
好きなんだから、手離さないように。


『もう一回、話したい』
『今晩会える?』
『会いたい』


既読がつけば、返信があれば何とかなる。
謝って、ちゃんと好意を告げれば、になるだろう。



この時、俺は忘れてた。
映子ちゃんはいつだって、予想外だってことを。


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