【R18】だれがフィクションだと言った 〜圧倒的モブ田中A子のセフレ生活〜

サバ無欲

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4.これはフィクション?

その8、秋人さんは映子の恋人。①

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俗に言う『食堂専務強奪事件』(失礼な。強奪なんかしていない)から丸半年。
季節は移ろい、日は巡り……私はいまだ、経理部の平社員として働いていた。


「あンのクソ部長~、今度こそほんとにコピース……っ」
「た、田中先輩。出てます、心の声出ちゃってますぅ」
「多少出した方がいいのよこんなのはっ、棚橋くんも出しなさいっ!」
「む、無理です出せません~」
「もう、いっつも月末に仕事押し付けるぅう……!」


春になって入ってきた新入社員の棚橋くんは、今どきの気の弱い男の子だった。下っぱの私は、早織ちゃんのときと同様、彼の教育係を押し付けられ、今に至る。

早織ちゃんも相変わらず元気に秘書業を頑張っている。今は大塚早織ではなく……なんだったっけ、サヴィーニ早織だったかサヴィニー早織だったか、そんな風変わりな名前になっていた。

そう、例のフランス人彼氏と仲直りのち結婚したのだ。そのスピードと言ったら新幹線のぞみもびっくりするほどの速さで度肝を抜いた。

そもそも彼らの喧嘩は『結婚するか否か』だった。フランスといえば事実婚の多い国らしくて、彼氏は籍を入れない派、早織ちゃんは絶対入れる派で猛反発。数日の抗争ののち、日本での結婚と事実婚における社会保障の差を熱弁するとあっさり折れてくれたそうだ。曰く、そんなに差があるとは知らなかった、とのこと。


文化の違いというのは侮れない。
まぁそれも、今ではお笑いぐさなんだけど。


「田中先輩、あとやっとくんで、明日確認してください」
「えっダメだよ悪いよ。私もやるよ」
「でも今日週末じゃないですか。デートでしょう?」
「ゔっ」
「この量ならあと一時間くらいでなんとかなりますんで、ほんと」


そうだった。棚橋くん、気は弱いけど力持ち……じゃなく、資格持ち。それも難しいのを複数。

おかげで経理のパソコン仕事はかなり早くて正確で、同僚たちがみんな驚いていた。役職が付くのも時間の問題かもしれない。


「じゃあ、ごめん。お願いできる?」
「はい、お疲れ様でした。専務によろしく伝えておいてください」
「なんで」
「や、専務に覚えてもらったら出世が早いかなって」
「そういうタイプじゃないよ、あの人は。おつかれさま。お先です」


気が弱いくせにちゃっかりしてる。

平社員の私と専務の彼との間柄は、半年前のあの日じゅうに全社員の知るところとなってしまった。今ではこんな風にからかわれる事も少なくない。それも日常の一部になっている。

あのときは大騒ぎを起こしたかどで何らかの処分があると覚悟していたし、ほんとに退職願を出そうかと思っていたくらいだけど、他でもないうちの部長に止められた。


『何も悪いことしてないのに、処分なんてしませんよ』
『大塚さんをあそこまで育ててくれたんだから』
『これからも経理部の一員として、頼みます』


そんな風に言われたから……まだ、ここにいる。

それに既婚者男性が多い経理部では、色恋の話はそこまで長く続かなかった。ふーん、そうなんだ、良かったね。それで終わり。

本当は気になるのかもしれないけど、それ以上にセクハラやパワハラを怖がる男性陣の中に埋もれていると、ことのほか楽に生活できた。食堂なんかではまだ、たまにコソコソされる事もあるけど慣れた。それでも面倒なときは、部内でお弁当を食べるか早織ちゃんを呼び出している。


私服に着替える。
今日は白のアンクルパンツに淡いベージュのレーヨンブラウス。上にすこし濃いベージュのトレンチコートを合わせて統一感? 服なんて未だによく分からないけど、最近は明るい色が多い。

化粧を整える。
うう、Tゾーンの崩れがひどい。パフで軽く押さえて、新色の明るいピンクのリップをさっと塗る。どうせまた崩れるんだし、そんなに気にしなくていい……はず。うん。


ライン画面を開く。
雑種犬アイコンをタップ。


『もうすぐ出ます』

『え、月末なのに早くない?』

『後輩くんが仕事引き受けてくれたので』

『やるな棚橋』

『まだかかります?』
『先におうちで待ってましょうか』

『いや、俺も出る』
『下でまってて』

『はーい』


靴を履き替えて、水筒のお茶を飲み干して……ついでに軽くゆすいでおく。

最後にロッカールームの鏡で全身チェック。
わざとゆっくり準備を済ませる。

あ。

忘れていたものを、鞄の中から取り出して嵌めた。これでいい。廊下へ出て、エレベーターのボタンを押して……



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