紡いだ言葉に色は無い

はんぺん

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故に彼女は同棲を求める

彼女

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 ……そう思っていた。
 誓って、俺はこんな惨めなこと意識的に誰かに伝えたりしない。然り気無く聞いて欲しいアピールでも断じてない。俺が言ったところで負け惜しみでしかないからだ。

「惨めね」

 気付けばそんな声が聞こえていた。
 俺の心の内を代弁してくれているかのような分かりやすく簡潔な台詞だった。

 知らず、動悸が激しくなり呼吸が乱れていた。聞かれてた……まずい、まずい……。広められたりしたら俺のこのクラスでの立場はどうなる。明日からどうやって振る舞えばいい。
 最悪の妄想が頭の中でぐるぐる回り、頭を上げられないまま勝手に頭だけは話を進展させていく。そしてそんな事を考えなくちゃならない程自分に地位などない事を思い出した。
 そこまで考えた所でぽんと肩に手を置かれる。十三階段か死神の鎌か、息だけが荒くなり断頭台に固定されたように頭は一ミリたりとも動かない。
 ああ、本当に、惨めだ。

「やっぱり『なにか』ではないのね。お前は『なんでもない』だけ、か」 

 静かに冷淡に、高圧的な「彼女」の声は的確に俺の精神を揺さぶり侵してくる。

 なんなんだよコイツは好き勝手に人を言ってくれて。
 けど、何かおかしい。俺を馬鹿にするためだけの悪口ならもっと簡単なのがいくらでもあるはずなのに。顔の見えない彼女は何故か抽象的に、理解しがたい文言で責め立ててくる。

 しかし目的が一切分からない。未だ昼休みの喧騒は収まらず、「彼女」以外誰が聞いてるという訳ではなさそうだ。
 なら何の為にわざわざ俺に声を掛けたというのか。ぼっちの独り言を目ざとく盗み聞き、何がしたいというのか。

 そういえば、去年も訳の分からない罵倒を受けた。同じだ。曖昧さも、その奥にある意味の不透明さも、嫌な記憶を思い出させる。

「無視をして、関係ないフリをして何か変わるの? 情けない」

 ああそうだ、間違いない。この俺を否定するためにあるかのような冷たい声、覚えのあるこの響き。
 そしてこの意図の読めない批判。この声は忘れない。多分これから先もずっと。

「……厄介事から逃れようと這うその様の惨めさに気付いてないの?  哀れで仕方ないわ、本当に」

 彼女は━━

「誰……ですか?」
     
 ホント……誰だろう。
 頭を上げて、荒い呼気を閉じ込めて、俺はなんとか声を絞り出した。ようやく思い出した。俺は彼女を「彼女」としてしか知らないということを。
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