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「本が……読めないんです」
病にかかってしまったと、そう話すアレクシアは深刻な面持ちだった。
「それって……」
まさか目が悪くなって文字が読めないとか、ではないだろう。ならばどう一体意味なのか。オリヴェルは頭を悩ませる。
「落ち着かなくて集中出来ないんです。最近、胸がどきどきしたり、顔や身体が妙に熱つくなってしまうんです」
彼女の言葉を受け、オリヴェルに衝撃が走る。これはまさか、彼女は誰かに恋をしている⁉︎だがそれは確実に自分ではないだろう。まさか本人に相談をする筈がない。
ならば一体相手は誰なのか……。
オリヴェルは動揺しながらも、必死に頭を巡らせた。アレクシアの様子が変化したのはここ最近のこと故、相手はかなり絞られる。
誰だ、誰だ、一体誰なんだ⁉︎
もしかして、モーリス⁉︎いや彼女は弟の事を女性だと認識している筈だ。考え辛い。ドリスの事も然りだ。ならば、フィリベールか?報告によれば割合親密にしていた様子だ。あり得ない話ではない。
オリヴェルは、身体に嫌な汗が流れ落ちるのを感じた。自分では最近はアレクシアとの距離がかなり近くなった様に感じていたのだが、どうやらただの願望だった様だ。
鋼とまではいかないが、普通よりは強い精神の持ち主だと自負していたオリヴェルなのだが……流石にこれには落ち込む。予定外の事が起きたものの、上手くいっていた筈だった。
それなのに、ここまでお膳立てした事は全て無駄という事だ。寧ろ余計な展開を生み出してしまい、自滅した様にも思える。
「本を読んでいても気付けば、殿下の事ばかり考えてしまうんです」
可笑しいですよね、そう言葉を続けながら彼女は困った様に眉根を寄せる。瞬間オリヴェルに再び衝撃が走った。
ー 殿下の事ばかり考えて ー
聞き間違えではないのか……いや、聞き間違えなどではない‼︎
彼女の言葉を何度も頭の中で繰り返し、これは現実だと確認をする。
殿下とは、自分の事に違いない!オリヴェルは歓喜した。まさか彼女の恋の相手が自分だったなど、この上無いくらいに嬉しい。
オリヴェルは未だ悩まし気な表情でこちらを見遣るアレクシアに、ワザとらしい咳払いをする。そして冷静を装い完璧な笑みを浮かべると彼女の名前を静かに呼んだ。
「シア」
それは世に言う恋というものだよ、とオリヴェルは続けようとしたがパタリと止まった。
ある可能性が頭を過ぎったからだ。
あり得ない。あり得ないのだが……分からない。可能性としては塵程なのだが、なきにしもあらず。
アレクシアがもしも、何かの拍子でモニカの正体をモーリスだと知ったとも考えられる。その場合、殿下はモーリスとも考えられる訳で……。
「殿下?」
いつになっても名前を呼んだまま何も続きを話そうとしないオリヴェルに、アレクシアは不思議そうに首を傾げている。だが、言葉が出ない。
モーリスだった事を考えると、今ここで彼女にその気持ちが恋だと自覚させたくない。いや、させてしまったら……終いだ。
オリヴェルは次の瞬間、ガシッと勢いよくアレクシアの両肩を掴んだ。女性の肩をいきなり掴むなど紳士たる者のする事ではないが、そんな事を考える余裕は今のオリヴェルには皆無だった。
「シアっ!」
「は、はいっ」
肩を掴まれた彼女は驚いたように、目を見開き萎縮する。こんな姿も可愛い……なんて莫迦な事を思い、大概だなと心の中で自嘲気味に笑う。
「やはり、それは病だね。……明日、医師から薬を貰ってくるから、それを飲むと良いよ」
口を突いて出たのは、下らない言葉だった。
病にかかってしまったと、そう話すアレクシアは深刻な面持ちだった。
「それって……」
まさか目が悪くなって文字が読めないとか、ではないだろう。ならばどう一体意味なのか。オリヴェルは頭を悩ませる。
「落ち着かなくて集中出来ないんです。最近、胸がどきどきしたり、顔や身体が妙に熱つくなってしまうんです」
彼女の言葉を受け、オリヴェルに衝撃が走る。これはまさか、彼女は誰かに恋をしている⁉︎だがそれは確実に自分ではないだろう。まさか本人に相談をする筈がない。
ならば一体相手は誰なのか……。
オリヴェルは動揺しながらも、必死に頭を巡らせた。アレクシアの様子が変化したのはここ最近のこと故、相手はかなり絞られる。
誰だ、誰だ、一体誰なんだ⁉︎
もしかして、モーリス⁉︎いや彼女は弟の事を女性だと認識している筈だ。考え辛い。ドリスの事も然りだ。ならば、フィリベールか?報告によれば割合親密にしていた様子だ。あり得ない話ではない。
オリヴェルは、身体に嫌な汗が流れ落ちるのを感じた。自分では最近はアレクシアとの距離がかなり近くなった様に感じていたのだが、どうやらただの願望だった様だ。
鋼とまではいかないが、普通よりは強い精神の持ち主だと自負していたオリヴェルなのだが……流石にこれには落ち込む。予定外の事が起きたものの、上手くいっていた筈だった。
それなのに、ここまでお膳立てした事は全て無駄という事だ。寧ろ余計な展開を生み出してしまい、自滅した様にも思える。
「本を読んでいても気付けば、殿下の事ばかり考えてしまうんです」
可笑しいですよね、そう言葉を続けながら彼女は困った様に眉根を寄せる。瞬間オリヴェルに再び衝撃が走った。
ー 殿下の事ばかり考えて ー
聞き間違えではないのか……いや、聞き間違えなどではない‼︎
彼女の言葉を何度も頭の中で繰り返し、これは現実だと確認をする。
殿下とは、自分の事に違いない!オリヴェルは歓喜した。まさか彼女の恋の相手が自分だったなど、この上無いくらいに嬉しい。
オリヴェルは未だ悩まし気な表情でこちらを見遣るアレクシアに、ワザとらしい咳払いをする。そして冷静を装い完璧な笑みを浮かべると彼女の名前を静かに呼んだ。
「シア」
それは世に言う恋というものだよ、とオリヴェルは続けようとしたがパタリと止まった。
ある可能性が頭を過ぎったからだ。
あり得ない。あり得ないのだが……分からない。可能性としては塵程なのだが、なきにしもあらず。
アレクシアがもしも、何かの拍子でモニカの正体をモーリスだと知ったとも考えられる。その場合、殿下はモーリスとも考えられる訳で……。
「殿下?」
いつになっても名前を呼んだまま何も続きを話そうとしないオリヴェルに、アレクシアは不思議そうに首を傾げている。だが、言葉が出ない。
モーリスだった事を考えると、今ここで彼女にその気持ちが恋だと自覚させたくない。いや、させてしまったら……終いだ。
オリヴェルは次の瞬間、ガシッと勢いよくアレクシアの両肩を掴んだ。女性の肩をいきなり掴むなど紳士たる者のする事ではないが、そんな事を考える余裕は今のオリヴェルには皆無だった。
「シアっ!」
「は、はいっ」
肩を掴まれた彼女は驚いたように、目を見開き萎縮する。こんな姿も可愛い……なんて莫迦な事を思い、大概だなと心の中で自嘲気味に笑う。
「やはり、それは病だね。……明日、医師から薬を貰ってくるから、それを飲むと良いよ」
口を突いて出たのは、下らない言葉だった。
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