選ばれたのは私でした

秘密 (秘翠ミツキ)

文字の大きさ
38 / 42

37

しおりを挟む
アレクシアはエルヴィーラを連れて自邸に帰った。未だに愚図っているエルヴィーラを何とか馬車から下ろして屋敷の中へと入ると、丁度父と母に出会した。

瞬間二人を見たエルヴィーラは、再び大泣きを始める。それはもう凄まじい声で、先ほどとは比にならない。窓が割れるのでは⁉︎と内心思った。
そして、そのまま母の元へと駆け寄り抱きついた。

「お母様あぁ、酷いのよ~お姉様が私を虐めるのおぉ‼︎」

わんわん泣き噦るその姿は、幼児のそのものだ。大きな幼児を、アレクシアは呆れ顔で眺めていた。

「アレクシア、これは一体どう言う事なの⁉︎どうしてエルヴィーラがこんなに泣いているの‼︎……あらあらエルヴィーラ、どうしたの?」

分かってはいたが、相変わらず変わる事のない母の姿に情けなくなる。

「お姉様が、皆を嗾けて寄ってたかって私を虐めてきたの‼︎酷いのよ!きっと私が王太子妃に選ばれてしまうのが気に入らないのよ‼︎」

「まあ、なんて事なの⁉︎妹に嫉妬して泣かせるなんて!なんて酷い‼︎貴女それでもお姉さんなの⁉︎今直ぐエルヴィーラに謝りなさい!さもないと屋敷から追い出しますよ!」

アレクシアはグッと堪える。何時もなら何も言えず黙り込むか謝って俯くしか出来ない。だが、それではダメだ。何も変わらない。アレクシアは意を決して口を開いた。

「私はエルヴィーラに謝らなくてはならい事なんて何一つしていないわ。だから私は謝らない。そもそも虐めていたのはエルヴィーラの方よ。他家の御令嬢に因縁をつけて、妃教育の間ずっと虐めていた。貴方方も人の親なら、エルヴィーラを連れて相手方に謝罪に行くべきです」

「信じられない、親に向かって何て口の利き方なの⁉︎」

激怒した母はアレクシアの腕を掴むと、手を振り上げた。振り払わなくてはと思うが瞬間身体が強ばり動かない。幼い頃から植え付けられた恐怖にはやはり勝てなかった。アレクシアは目を瞑り、頭を守る様に反対側の手で押さえた。

「そこまでだ」

その時だった、扉が開いたのは……。




◆◆◆◆◆◆◆◆◆







オリヴェルはアレクシア達が出て行き少し遅れて我に返った。慌てて追いかける。廊下を駆けていると、その後からリーゼロットが追いかけ来た。

「オリヴェル様、反応が鈍過ぎます。何普通に見送っていらっしゃるのですか!あそこは強引にでも引き止める場面でしょうに!」

「いや、アレクシアが余りにも素敵過ぎて……ではなく、勇士ヒーローは遅れてやって来ると良く言うだろう?だからこれはワザと……」

「何を仰っていらっしゃるのか私にはちょっと良く分かりませんが……その様な御託は宜しいですから。そもそもオリヴェル様の場合、遅過ぎて間に合わなくなり後から後悔されるのが関の山です。負け犬にお成りになりたくないなら、お急ぎ下さいませ」

「どうして君は一々茶々を入れるんだ!」

「茶々ではなく、事実です」

オリヴェルはリーゼロットの言葉にダメージを受けながらも、馬に飛び乗る。するとリーゼロットも馬に飛び乗った。予想外の行動に目を見張る。だがそんなオリヴェルを尻目にリーゼロットは颯爽とオリヴェルを追い抜かす。

「リーゼロット⁉︎君、馬に乗れたのか⁉︎」

「まあ、嗜む程度にですが」

そう言いながら、リーゼロットはオリヴェルをどんどん引き離していった。

「一体何処が、嗜む程度なんだ……」

置いていかれたオリヴェルは、情けなく必死に後を追いかけるのだった。







しおりを挟む
感想 155

あなたにおすすめの小説

婚約破棄された人たらし悪役令嬢ですが、 最強で過保護な兄たちと義姉に溺愛されています

由香
ファンタジー
婚約破棄のその日、 悪役令嬢リリアーナは――弁明すら、しなかった。 王太子と“聖女”に断罪され、すべてを失った彼女。 だがその裏で、王国最強と名高い三人の兄と、 冷静沈着な義姉が、静かに動き始めていた。 再検証によって暴かれる“聖女の嘘”。 広場で語られる真実。 そして、無自覚に人を惹きつけてしまう リリアーナの優しさが、次々と味方を増やしていく――。 これは、 悪役令嬢として断罪された少女が、 「誰かの物語の脇役」ではなく、 自分自身の人生を取り戻す物語。 過保護すぎる兄たちと義姉に溺愛されながら、 彼女は静かに、そして確実に幸せへ向かっていく。

《完結》「パパはいますか?」ある日、夫に似た子供が訪ねて来た。

ヴァンドール
恋愛
嫁いですぐに夫は戦地に赴いた。すると突然一人の男の子が訪ねて来た「パパはいますか?」 その子供の顔は戦地に行った夫にそっくりだった。

王妃の仕事なんて知りません、今から逃げます!

gacchi(がっち)
恋愛
側妃を迎えるって、え?聞いてないよ? 王妃の仕事が大変でも頑張ってたのは、レオルドが好きだから。 国への責任感?そんなの無いよ。もういい。私、逃げるから! 12/16加筆修正したものをカクヨムに投稿しました。

私の手からこぼれ落ちるもの

アズやっこ
恋愛
5歳の時、お父様が亡くなった。 優しくて私やお母様を愛してくれたお父様。私達は仲の良い家族だった。 でもそれは偽りだった。 お父様の書斎にあった手記を見た時、お父様の優しさも愛も、それはただの罪滅ぼしだった。 お父様が亡くなり侯爵家は叔父様に奪われた。侯爵家を追い出されたお母様は心を病んだ。 心を病んだお母様を助けたのは私ではなかった。 私の手からこぼれていくもの、そして最後は私もこぼれていく。 こぼれた私を救ってくれる人はいるのかしら… ❈ 作者独自の世界観です。 ❈ 作者独自の設定です。 ❈ ざまぁはありません。

彼は亡国の令嬢を愛せない

黒猫子猫
恋愛
セシリアの祖国が滅んだ。もはや妻としておく価値もないと、夫から離縁を言い渡されたセシリアは、五年ぶりに祖国の地を踏もうとしている。その先に待つのは、敵国による処刑だ。夫に愛されることも、子を産むことも、祖国で生きることもできなかったセシリアの願いはたった一つ。長年傍に仕えてくれていた人々を守る事だ。その願いは、一人の男の手によって叶えられた。 ただ、男が見返りに求めてきたものは、セシリアの想像をはるかに超えるものだった。 ※同一世界観の関連作がありますが、これのみで読めます。本シリーズ初の長編作品です。 ※ヒーローはスパダリ時々ポンコツです。口も悪いです。

皇太子夫妻の歪んだ結婚 

夕鈴
恋愛
皇太子妃リーンは夫の秘密に気付いてしまった。 その秘密はリーンにとって許せないものだった。結婚1日目にして離縁を決意したリーンの夫婦生活の始まりだった。 本編完結してます。 番外編を更新中です。

はじめまして、旦那様。離婚はいつになさいます?

あゆみノワ@書籍『完全別居の契約婚〜』
恋愛
「はじめてお目にかかります。……旦那様」 「……あぁ、君がアグリア、か」 「それで……、離縁はいつになさいます?」  領地の未来を守るため、同じく子爵家の次男で軍人のシオンと期間限定の契約婚をした貧乏貴族令嬢アグリア。  両家の顔合わせなし、婚礼なし、一切の付き合いもなし。それどころかシオン本人とすら一度も顔を合わせることなく結婚したアグリアだったが、長らく戦地へと行っていたシオンと初対面することになった。  帰ってきたその日、アグリアは約束通り離縁を申し出たのだが――。  形だけの結婚をしたはずのふたりは、愛で結ばれた本物の夫婦になれるのか。 ★HOTランキング最高2位をいただきました! ありがとうございます! ※書き上げ済みなので完結保証。他サイトでも掲載中です。

相手不在で進んでいく婚約解消物語

キムラましゅろう
恋愛
自分の目で確かめるなんて言わなければよかった。 噂が真実かなんて、そんなこと他の誰かに確認して貰えばよかった。 今、わたしの目の前にある光景が、それが単なる噂では無かったと物語る……。 王都で近衛騎士として働く婚約者に恋人が出来たという噂を確かめるべく単身王都へ乗り込んだリリーが見たものは、婚約者のグレインが恋人と噂される女性の肩を抱いて歩く姿だった……。 噂が真実と確信したリリーは領地に戻り、居候先の家族を巻き込んで婚約解消へと向けて動き出す。   婚約者は遠く離れている為に不在だけど……☆ これは婚約者の心変わりを知った直後から、幸せになれる道を模索して突き進むリリーの数日間の物語である。 果たしてリリーは幸せになれるのか。 5〜7話くらいで完結を予定しているど短編です。 完全ご都合主義、完全ノーリアリティでラストまで作者も突き進みます。 作中に現代的な言葉が出て来ても気にしてはいけません。 全て大らかな心で受け止めて下さい。 小説家になろうサンでも投稿します。 R15は念のため……。

処理中です...