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七十五話〜夫婦の対話 二〜
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「私は見てわかるように眉目秀麗で、文武両道、家柄はグラニエ国有数の公爵家であるブロンダン家であり更には嫡男だ。また王太子殿下の有能な側近であり、昔から女性からの人気が高い」
「……」
エレノラは冷たい視線をユーリウスへと向ける。
事実なのかも知れないが、普通はここまで自画自賛しないだろう。自己肯定感が高過ぎる。
「質問してもいいですか?」
「なんだ」
鼻高々に話す彼にこの際だからと、以前から気になっていた事を聞いてみる事にした。
「どうしてユーリウス様はそんなに女性を侍らせるのがお好きなんですか?」
「侍らせっ……別に私は侍らせるのが好きなわけでは」
「ではどうしてそんなに無類の女性好きなんですか? 子供の時から女性に興味があったんですか? もしかして生まれ付きですか?」
「私が変態みたいな言い方をするな!」
「違うんですか?」
「当然だろう⁉︎」
誰がどう見ても無類の女好きな事は明白にも拘らず、彼は即座に否定をする。だが残念ながら説得力は皆無だ。
「ただ……心が渇くんだ」
「……」
更に彼はポツリと呟くようにそう付け加えた。
「スチュアートに言ってお茶を持ってきて貰いますか?」
「喉ではない! 心だっ」
突然心が渇いたなどとポエムのような発言をするので、てっきり言い間違えかと思ったのだが違ったらしい。
「それで、心が渇くとはどういう事ですか?」
「自分でも分からない。だが昔から何をしていても満たされないんだーー」
またユーリウスはあの顔をする。
青眼がまるで硝子玉のようにただ反射しているだけのように見えて、視線はこちらへ向いているのにエレノラの事が見えていないようにすら思えた。
表情が抜け落ちたその顔からはなんの感情も読み取る事は出来ないのに、何故か淋しさを感じる。
どんなに周りから賞賛されても、高級な料理を口にし空腹を満たしても、友人と会話して笑っていても心は満たされず渇き続けると彼は話す。
「ーー女性を抱いている時だけは気が紛れる。だがそれも一瞬の事で、この渇きが満たされる事はない」
エレノラは心理学に詳しくないが、昔本で読んだ事はある。
彼のそれは所謂虚無感というものだろう。
原因は人それぞれらしいが、彼の場合自己肯定感も高く劣等感などは絶対に考えられない。生活環境に不満や不安があるとも思えないし、そうなると残るは一つだけだがこれは繊細な事なので口にするのが躊躇わられる。
「女性を抱いた後は激しい空虚感に苛まれる。だがやめられない。一瞬でもいい、満たされたい」
まるで独り言のように呟く姿にエレノラは眉根を寄せた。これはかなり重症かも知れない。
「ユーリウス様は……ご家族とは余り仲がよろしくないんですね」
ポツリと口から出た言葉に彼は顔を背け黙り込んだ。
やはり言わない方が良かっただろうか……。
「当然だ。私の事など誰も愛していないからな」
自嘲する声が酷く淋しげに聞こえる。
「父は昔から愛人と婚外子だったロベルトを可愛がっていた。その一方で父は私や母には無関心だった。不甲斐ない私は父から愛して貰えず、そのせいでいつも母を悲しませていた。そして私が九歳の時に、母は私を捨てて屋敷から出て行ったーー」
エレノラは淡々と語るユーリウスの言葉に、黙って耳を傾けた。
「……」
エレノラは冷たい視線をユーリウスへと向ける。
事実なのかも知れないが、普通はここまで自画自賛しないだろう。自己肯定感が高過ぎる。
「質問してもいいですか?」
「なんだ」
鼻高々に話す彼にこの際だからと、以前から気になっていた事を聞いてみる事にした。
「どうしてユーリウス様はそんなに女性を侍らせるのがお好きなんですか?」
「侍らせっ……別に私は侍らせるのが好きなわけでは」
「ではどうしてそんなに無類の女性好きなんですか? 子供の時から女性に興味があったんですか? もしかして生まれ付きですか?」
「私が変態みたいな言い方をするな!」
「違うんですか?」
「当然だろう⁉︎」
誰がどう見ても無類の女好きな事は明白にも拘らず、彼は即座に否定をする。だが残念ながら説得力は皆無だ。
「ただ……心が渇くんだ」
「……」
更に彼はポツリと呟くようにそう付け加えた。
「スチュアートに言ってお茶を持ってきて貰いますか?」
「喉ではない! 心だっ」
突然心が渇いたなどとポエムのような発言をするので、てっきり言い間違えかと思ったのだが違ったらしい。
「それで、心が渇くとはどういう事ですか?」
「自分でも分からない。だが昔から何をしていても満たされないんだーー」
またユーリウスはあの顔をする。
青眼がまるで硝子玉のようにただ反射しているだけのように見えて、視線はこちらへ向いているのにエレノラの事が見えていないようにすら思えた。
表情が抜け落ちたその顔からはなんの感情も読み取る事は出来ないのに、何故か淋しさを感じる。
どんなに周りから賞賛されても、高級な料理を口にし空腹を満たしても、友人と会話して笑っていても心は満たされず渇き続けると彼は話す。
「ーー女性を抱いている時だけは気が紛れる。だがそれも一瞬の事で、この渇きが満たされる事はない」
エレノラは心理学に詳しくないが、昔本で読んだ事はある。
彼のそれは所謂虚無感というものだろう。
原因は人それぞれらしいが、彼の場合自己肯定感も高く劣等感などは絶対に考えられない。生活環境に不満や不安があるとも思えないし、そうなると残るは一つだけだがこれは繊細な事なので口にするのが躊躇わられる。
「女性を抱いた後は激しい空虚感に苛まれる。だがやめられない。一瞬でもいい、満たされたい」
まるで独り言のように呟く姿にエレノラは眉根を寄せた。これはかなり重症かも知れない。
「ユーリウス様は……ご家族とは余り仲がよろしくないんですね」
ポツリと口から出た言葉に彼は顔を背け黙り込んだ。
やはり言わない方が良かっただろうか……。
「当然だ。私の事など誰も愛していないからな」
自嘲する声が酷く淋しげに聞こえる。
「父は昔から愛人と婚外子だったロベルトを可愛がっていた。その一方で父は私や母には無関心だった。不甲斐ない私は父から愛して貰えず、そのせいでいつも母を悲しませていた。そして私が九歳の時に、母は私を捨てて屋敷から出て行ったーー」
エレノラは淡々と語るユーリウスの言葉に、黙って耳を傾けた。
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