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グワァ~。
スリスリ。
「へっ……」
余りの事に思わず変な声が出た。
襲われると思ったのに、何故だがアトラスに抱きつかれて、スリスリされている……。
グワァ~グワァ~。
強張っていた身体から力が一気に抜け落ちた。アトラスの大きな羽で確りと抱擁されて、実に不思議な気分になる。
アトラスは物凄く嬉しそうにしている。犬の様に尻尾はないが、もし付いていたらはち切れんばかりに振っている事だろう。
「アトラス!全くもう、貴方一体何なさってますの」
呆れた顔でシャルロットが歩いて来た。そして勢いよく頭にゲンコツを食らわす。
グワッ⁉︎
「あ、あの……」
「ごめんなさい、フィオナちゃん。驚かせちゃったわよねぇ。大丈夫かしらぁ?」
そう言いながらアトラスを羽交い締めにして、フィオナから引き剥がした。
グワッ~……。
アトラスはなされるがままにされており、涙目だ。フィオナは苦笑し、少し同情する。
「大丈夫か」
シャルロットに少し遅れて、オリフェオが気の抜けた顔をしてやって来た。
「殿下、あの、ありがとうござ……え⁉︎」
フィオナが、お礼を言い終える前にヒョイと持ち上げられ、何故かそのまま横抱きにされてしまった。
「送ってやろう」
一瞬の出来事に頭が追いつかず、暫しぽかんとするが、直ぐに我に返る。
「だ、大丈夫です!下ろして下さいっ」
身動ぎ下りようとするが、足を動かした瞬間痛みが走った。
「痛っ……」
どうやら、先程尻餅をついた時に足を捻った様だ。
「私の責任でもある。大人しくしていろ」
◆◆◆
ヴィレームは、積み上がった書類を放り出し、部屋を出た。背中越しにクルトが何か文句を言っていたが、聞こえないフリをした。
まだ時間は早いが、どうやらフィオナ達が帰って来たらしい。つい今し方、馬車が到着したとシビルが報告に来た。
たった半日だ。それでも、随分と会っていなかった様に感じる。ヴィレームは、心臓が高鳴るのを感じた。一秒でも早くフィオナに会いたい。
急いで門まで出迎えに行くと、馬車の扉が丁度開かれた所だった。ブレソール、シャルロットと続けて降りて来た。
ヴィレームはフィオナが馬車から降りるのを手伝おうと、近付くが……。
「フィオ……」
驚愕し、固まった。
それは馬車から降りてきたフィオナが、男に横抱きにされていたからだ。
「オリフェオ殿下、もう平気ですからっ、自分で歩きます」
「ダメだ。部屋まで送り届ける。責任は取ると言った筈だ」
責任……。
しかも意味深な発言をしている。
「そんな、本当に平気です!」
「ダメだ」
同じ様なやり取りを繰り広げる二人を、ヴィレームは呆然と眺める。
「ヴィレーム様」
未だ男の腕の中に収まるフィオナに、戸惑いながら名前を呼ばれ、そこでようやくヴィレームは我に返った。
「フィ、フィオナ、お帰り……あー、その、は、早かったね……」
動揺が隠せず辿々しくなってしまった……。こんな時、俗に言う紳士ならばドンと構えて余裕ある態度を見せるものだろう。だが、未熟なヴィレームにはまだ無理だった。愛する女性が他の男の腕の中でイチャイチャしている。フィオナは嫌がってはいるが、満更でもない様子にも見えなくもない……。
嫌よ嫌よも好きのうちとか、そんな言葉が頭を過ぎる。
「色々、ありまして……」
その色々が物凄く気になる。何がどうしたらこんな状況になるのか……ま、まさか、フィオナが……う、う、う、浮気⁉︎とか……。いや、いや、ない!ない!フィオナに限ってそんな事をするなどあり得ない!だが、もしかしたらって事もある……。そもそも姉上達がついていながら、どうしてこんな事になっているんだ……‼︎
「怪我をしたのは、私の責任だからな。責任を取るのは男として当然だ」
「殿下は私を庇って下さっただけで、責任など……」
ヴィレームが暫し意識を飛ばしている間に、またもやイチャイチャと始める二人にヴィレームは無意識に顔が引き攣る。笑顔、紳士、笑顔、紳士、笑顔……と頭の中で復唱するが、逆に変な顔になる。
彼女の前では格好良くありたいのに、寧ろ何時も真逆になってしまう。不甲斐ない自分がもどかしい。
「ヴィレーム様、大丈夫ですか」
いつの間にか、男の腕の中から脱出したであろうフィオナが目の前にいた。首を傾げて、心配そうにしている。
「フィオナ」
ヴィレームは我慢出来ずに、フィオナを抱き締めた。すると彼女も、おずおずと遠慮がちに抱き締め返してくれた。
スリスリ。
「へっ……」
余りの事に思わず変な声が出た。
襲われると思ったのに、何故だがアトラスに抱きつかれて、スリスリされている……。
グワァ~グワァ~。
強張っていた身体から力が一気に抜け落ちた。アトラスの大きな羽で確りと抱擁されて、実に不思議な気分になる。
アトラスは物凄く嬉しそうにしている。犬の様に尻尾はないが、もし付いていたらはち切れんばかりに振っている事だろう。
「アトラス!全くもう、貴方一体何なさってますの」
呆れた顔でシャルロットが歩いて来た。そして勢いよく頭にゲンコツを食らわす。
グワッ⁉︎
「あ、あの……」
「ごめんなさい、フィオナちゃん。驚かせちゃったわよねぇ。大丈夫かしらぁ?」
そう言いながらアトラスを羽交い締めにして、フィオナから引き剥がした。
グワッ~……。
アトラスはなされるがままにされており、涙目だ。フィオナは苦笑し、少し同情する。
「大丈夫か」
シャルロットに少し遅れて、オリフェオが気の抜けた顔をしてやって来た。
「殿下、あの、ありがとうござ……え⁉︎」
フィオナが、お礼を言い終える前にヒョイと持ち上げられ、何故かそのまま横抱きにされてしまった。
「送ってやろう」
一瞬の出来事に頭が追いつかず、暫しぽかんとするが、直ぐに我に返る。
「だ、大丈夫です!下ろして下さいっ」
身動ぎ下りようとするが、足を動かした瞬間痛みが走った。
「痛っ……」
どうやら、先程尻餅をついた時に足を捻った様だ。
「私の責任でもある。大人しくしていろ」
◆◆◆
ヴィレームは、積み上がった書類を放り出し、部屋を出た。背中越しにクルトが何か文句を言っていたが、聞こえないフリをした。
まだ時間は早いが、どうやらフィオナ達が帰って来たらしい。つい今し方、馬車が到着したとシビルが報告に来た。
たった半日だ。それでも、随分と会っていなかった様に感じる。ヴィレームは、心臓が高鳴るのを感じた。一秒でも早くフィオナに会いたい。
急いで門まで出迎えに行くと、馬車の扉が丁度開かれた所だった。ブレソール、シャルロットと続けて降りて来た。
ヴィレームはフィオナが馬車から降りるのを手伝おうと、近付くが……。
「フィオ……」
驚愕し、固まった。
それは馬車から降りてきたフィオナが、男に横抱きにされていたからだ。
「オリフェオ殿下、もう平気ですからっ、自分で歩きます」
「ダメだ。部屋まで送り届ける。責任は取ると言った筈だ」
責任……。
しかも意味深な発言をしている。
「そんな、本当に平気です!」
「ダメだ」
同じ様なやり取りを繰り広げる二人を、ヴィレームは呆然と眺める。
「ヴィレーム様」
未だ男の腕の中に収まるフィオナに、戸惑いながら名前を呼ばれ、そこでようやくヴィレームは我に返った。
「フィ、フィオナ、お帰り……あー、その、は、早かったね……」
動揺が隠せず辿々しくなってしまった……。こんな時、俗に言う紳士ならばドンと構えて余裕ある態度を見せるものだろう。だが、未熟なヴィレームにはまだ無理だった。愛する女性が他の男の腕の中でイチャイチャしている。フィオナは嫌がってはいるが、満更でもない様子にも見えなくもない……。
嫌よ嫌よも好きのうちとか、そんな言葉が頭を過ぎる。
「色々、ありまして……」
その色々が物凄く気になる。何がどうしたらこんな状況になるのか……ま、まさか、フィオナが……う、う、う、浮気⁉︎とか……。いや、いや、ない!ない!フィオナに限ってそんな事をするなどあり得ない!だが、もしかしたらって事もある……。そもそも姉上達がついていながら、どうしてこんな事になっているんだ……‼︎
「怪我をしたのは、私の責任だからな。責任を取るのは男として当然だ」
「殿下は私を庇って下さっただけで、責任など……」
ヴィレームが暫し意識を飛ばしている間に、またもやイチャイチャと始める二人にヴィレームは無意識に顔が引き攣る。笑顔、紳士、笑顔、紳士、笑顔……と頭の中で復唱するが、逆に変な顔になる。
彼女の前では格好良くありたいのに、寧ろ何時も真逆になってしまう。不甲斐ない自分がもどかしい。
「ヴィレーム様、大丈夫ですか」
いつの間にか、男の腕の中から脱出したであろうフィオナが目の前にいた。首を傾げて、心配そうにしている。
「フィオナ」
ヴィレームは我慢出来ずに、フィオナを抱き締めた。すると彼女も、おずおずと遠慮がちに抱き締め返してくれた。
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