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番外編【年齢について考える】2年のせい、だろうか
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最近、河合さんと梨々花さんとの3人でのお昼休憩が日常となりつつあった。本日も例に漏れず、この2人と私の3人での昼休憩となった。
「先輩、肩があまりにも痛いようなら、整体に行った方がいいですよ。身体の傷みは早めに治した方がいいですから」
控室のテーブルに着くと、お弁当を広げる。中身は昨日の残りの鮭のムニエルと野菜炒めだ。いただきますと食べようとしたところで河合さんに声をかけられる。仕方ないので箸を止めて、いったん二人の弁当を観察する。河合さんは私の隣、梨々花さんは私たちの前に座っている。
河合さんのお弁当はというと、作るのが面倒だったのか、カップスープとコンビニのおにぎりだった。梨々花さんは卵焼きにウインナー、ブロッコリーと王道弁当だった。
「大鷹さんと同じことを言いますね。とりあえず、今日の帰りに整体に行ってみます」
「おおたかっちと同じ思考なんて嫌ですけど、まあ、紗々先輩を心配しての言葉ですから仕方ありません」
私の夫も河合さんも私に対して過保護で心配性なところがあるが、気分は悪くない。
「整体って、老人が行くところだと思っていましたけど、若い人も行くんですねえ。私、整体なんて一度も行ったことないです。河合さんもですよね?」
河合さんと違い、梨々花さんは私が整体に行くことに対して不思議そうに首をかしげている。
確かに梨々花さんも河合さんも私よりは身体が健康そうである。そう思っていたが、ふと頭にある思い出が蘇る。
『河合さん(紗々先輩)との初対面って、整体でしたよね?』
そして、そのことをつい口に出したら、河合さんも同じことを思ったのか、私たちの声はきれいに重なった。
「先輩たちが初めて出会った時のお話、私、聞いてないんですけど!」
私たちの声の重なりに驚いた梨々花さんだったが、すぐに私たちの仲のよさとは別のことに興味を示した。さて、あの整体での出会いをどうやったら梨々花さんに誤解なく説明できるだろうか。
「ああ、ごめんね。私も整体の話をするまですっかり忘れていたよ。あれはねえ、なかなか色気ある出会いだったよねえ」
懐かしそうに初対面時の事を思い出す河合さんだが、色気あるとは誤解を招きかねない言い方だ。そもそも、それを言うなら、河合さんだって散々な喘ぎようだった。私のことばかり言っているが、思えば、やばいのはお互い様だった。
「色気ある出会い……。もしかして、倉敷先輩が河合さんを誘惑した……とか」
『それはない』
やはり、河合さんの言い方は梨々花さんに誤解を与えてしまった。そのまま誤解を与えたままではマズイ。何せ、彼女は大鷹さんや河合さんと同じ、私の大ファンなのだ。どんな妄想を膨らませるかわかったものではない。
そして、それは奇しくも河合さんとの二度目のハモリを産むこととなってしまう。
「怪しいですね。これはもう、正直に話してもらわないと!」
梨々花さんは私たちの二度のきれいなハモリに機嫌を損ねてしまったようだ。頬を膨らませて不機嫌アピールをしている。大人の女性が人前でする仕草ではないが、まあ今は控え室に私と河合さんしかいないので問題はないだろう。
「正直に話すと言ってもねえ」
河合さんはそれを煽るように意味深に私に視線を向けてきた。この状況を面白がっているようだ。これはもう、最年長の私が丁寧に説明して誤解を解かねばならない。
「そもそも、整体での出会いなんですから、色気あるような事なんてあるわけないですよ。その時はお互いに同じ会社の人だと知りませんでしたし」
「同じ会社だと知らなかった……」
「河合さんって、中途採用で私たちの会社に入ってきたんですよ。あの時は驚きました。整体であんな喘ぎ声出していた人が、まさか、同じ会社の人だったなんて」
梨々花さんのつぶやきに思わず余計な情報を口にしてしまう。喘ぎ声は余計だった。慌てて口を押えるがすでに口に出してしまった後で、河合さんは珍しく自分の痴態を晒されて恥ずかしそうにうつむいていた。梨々花さんは「喘ぎ声……」と私の言葉を聞いてショックで放心している。
「そ、そろそろ、休憩終わりですよね。私、先に窓口業務に戻りますね」
これは私一人の力だけでは手に負えない。机の上に出されたスマホで時刻を確認すると、休憩時間が残り15分となっていた。少し早いが、先に仕事に戻って、二人はこの場に放置することにする。慌ててお弁当を口に掻きこみ、歯を磨いて身支度を整え、私は言葉通りに急ぎ足で控え室を出て午後の業務に勤しむのだった。
仕事を終えても、左肩の痛みが治まることはなかった。仕事のストレスも加わったのか、痛みはさらに増すばかりで、これはもう、整体に行くしかない。自然治癒するのを待とうとかとも思ったが、これはダメだ。仕方ないので、帰りに整体に寄ることにした。
「倉敷先輩、結局、整体に行きましたね」
「相当重症みたいだねえ」
「それで江子先輩、昼休憩の時のお二人の出会いについてですけど……」
「ううん。それはねえ。私の口から説明してもいいんだけど、やっぱり紗々先輩の口からも説明があった方がおもしろ、いや平等かなと思うんだけど」
「面白い、って言いましたよね?私は別に面白さを感じたいわけではないので、今日、一緒にご飯でも食べませんか?その時に当時の事を詳しく教えてもらいますから」
私が定時後、急いで着替えて会社をでたのを見ながら、河合さんと梨々花さんが不穏な会話をしていたことを私は知る由もなかった。
「先輩、肩があまりにも痛いようなら、整体に行った方がいいですよ。身体の傷みは早めに治した方がいいですから」
控室のテーブルに着くと、お弁当を広げる。中身は昨日の残りの鮭のムニエルと野菜炒めだ。いただきますと食べようとしたところで河合さんに声をかけられる。仕方ないので箸を止めて、いったん二人の弁当を観察する。河合さんは私の隣、梨々花さんは私たちの前に座っている。
河合さんのお弁当はというと、作るのが面倒だったのか、カップスープとコンビニのおにぎりだった。梨々花さんは卵焼きにウインナー、ブロッコリーと王道弁当だった。
「大鷹さんと同じことを言いますね。とりあえず、今日の帰りに整体に行ってみます」
「おおたかっちと同じ思考なんて嫌ですけど、まあ、紗々先輩を心配しての言葉ですから仕方ありません」
私の夫も河合さんも私に対して過保護で心配性なところがあるが、気分は悪くない。
「整体って、老人が行くところだと思っていましたけど、若い人も行くんですねえ。私、整体なんて一度も行ったことないです。河合さんもですよね?」
河合さんと違い、梨々花さんは私が整体に行くことに対して不思議そうに首をかしげている。
確かに梨々花さんも河合さんも私よりは身体が健康そうである。そう思っていたが、ふと頭にある思い出が蘇る。
『河合さん(紗々先輩)との初対面って、整体でしたよね?』
そして、そのことをつい口に出したら、河合さんも同じことを思ったのか、私たちの声はきれいに重なった。
「先輩たちが初めて出会った時のお話、私、聞いてないんですけど!」
私たちの声の重なりに驚いた梨々花さんだったが、すぐに私たちの仲のよさとは別のことに興味を示した。さて、あの整体での出会いをどうやったら梨々花さんに誤解なく説明できるだろうか。
「ああ、ごめんね。私も整体の話をするまですっかり忘れていたよ。あれはねえ、なかなか色気ある出会いだったよねえ」
懐かしそうに初対面時の事を思い出す河合さんだが、色気あるとは誤解を招きかねない言い方だ。そもそも、それを言うなら、河合さんだって散々な喘ぎようだった。私のことばかり言っているが、思えば、やばいのはお互い様だった。
「色気ある出会い……。もしかして、倉敷先輩が河合さんを誘惑した……とか」
『それはない』
やはり、河合さんの言い方は梨々花さんに誤解を与えてしまった。そのまま誤解を与えたままではマズイ。何せ、彼女は大鷹さんや河合さんと同じ、私の大ファンなのだ。どんな妄想を膨らませるかわかったものではない。
そして、それは奇しくも河合さんとの二度目のハモリを産むこととなってしまう。
「怪しいですね。これはもう、正直に話してもらわないと!」
梨々花さんは私たちの二度のきれいなハモリに機嫌を損ねてしまったようだ。頬を膨らませて不機嫌アピールをしている。大人の女性が人前でする仕草ではないが、まあ今は控え室に私と河合さんしかいないので問題はないだろう。
「正直に話すと言ってもねえ」
河合さんはそれを煽るように意味深に私に視線を向けてきた。この状況を面白がっているようだ。これはもう、最年長の私が丁寧に説明して誤解を解かねばならない。
「そもそも、整体での出会いなんですから、色気あるような事なんてあるわけないですよ。その時はお互いに同じ会社の人だと知りませんでしたし」
「同じ会社だと知らなかった……」
「河合さんって、中途採用で私たちの会社に入ってきたんですよ。あの時は驚きました。整体であんな喘ぎ声出していた人が、まさか、同じ会社の人だったなんて」
梨々花さんのつぶやきに思わず余計な情報を口にしてしまう。喘ぎ声は余計だった。慌てて口を押えるがすでに口に出してしまった後で、河合さんは珍しく自分の痴態を晒されて恥ずかしそうにうつむいていた。梨々花さんは「喘ぎ声……」と私の言葉を聞いてショックで放心している。
「そ、そろそろ、休憩終わりですよね。私、先に窓口業務に戻りますね」
これは私一人の力だけでは手に負えない。机の上に出されたスマホで時刻を確認すると、休憩時間が残り15分となっていた。少し早いが、先に仕事に戻って、二人はこの場に放置することにする。慌ててお弁当を口に掻きこみ、歯を磨いて身支度を整え、私は言葉通りに急ぎ足で控え室を出て午後の業務に勤しむのだった。
仕事を終えても、左肩の痛みが治まることはなかった。仕事のストレスも加わったのか、痛みはさらに増すばかりで、これはもう、整体に行くしかない。自然治癒するのを待とうとかとも思ったが、これはダメだ。仕方ないので、帰りに整体に寄ることにした。
「倉敷先輩、結局、整体に行きましたね」
「相当重症みたいだねえ」
「それで江子先輩、昼休憩の時のお二人の出会いについてですけど……」
「ううん。それはねえ。私の口から説明してもいいんだけど、やっぱり紗々先輩の口からも説明があった方がおもしろ、いや平等かなと思うんだけど」
「面白い、って言いましたよね?私は別に面白さを感じたいわけではないので、今日、一緒にご飯でも食べませんか?その時に当時の事を詳しく教えてもらいますから」
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