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番外編【年齢について考える】16年の差カップルの現実(小説)
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私には15歳年下の恋人がいる。付き合い始めたのは、私が40歳で、彼が25歳のときだった。あのときは彼も私も恋に盲目になっていた。年の差についてはまったく気にすることがなかった。
しかし、年月というものは残酷だ。付き合い始めの頃は気にならなかった年齢差が年を追うごとに気になるようになってきた。
「アイタタタタ」
「どうしたの?」
ある冬の寒い日の朝、私は目覚ましの音で目を覚ましたのだが、どうにも肩と首の様子がおかしい。いつものようにベッドから起き上がり、両腕を上げて伸びをしたところ、肩に激痛が走った。そして首を回してみると、そちらにも同じような痛みがあった。思わず出た悲鳴に、隣で寝ていた恋人が目をこすりながら不思議そうに首をかしげている。
「朝から大きい声出してごめんね。ちょっと寝違えたみたいで、肩と首が少し痛いだけだよ」
「ふうん。気をつけなよ。若くないんだから」
私の大声ですっかり目が覚めてしまったのか、恋人も私と同じように両腕をあげて伸びをする。そして、私を興味なさそうに一瞥して寝室から出ていった。
「そういえば、最近、一緒には寝ているけど、シていないな」
いつからだろう。付き合い始めの頃は、毎日のようにシていた愛を確かめ合う行為。年が経つにつれて、一週間、一か月と頻度がどんどん下がっていった。そして10年経った今では、2か月に一回あれば多いという頻度に落ち着いた。いつの間にか私が50歳、恋人が35歳となっていた。
「お父様へのプレゼントをお探しですか?」
寝違えた場所は1週間ほど傷みが続いた。仕事が忙しく、整体に行きたかったが結局行かずに、痛みに耐えながら仕事をするしかなかった。
そんななか、私の51歳の誕生日が近づいていた。恋人が誕生日プレゼントを選びたいと言ってきたので、週末、ショッピングモールに恋人と二人で訪れていた。ブランドの服屋で私と恋人が一緒に服を見ていたときのことだ。店員が悩んでいる私たちに声をかけてきたのだが、その声掛けがまさかの私が父親で、恋人が息子だと思っての言葉だった。
「アハハハハ。まあ、そんな感じです」
「親子に見えるなんて失礼ですね。僕たちはこいび」
「すみません。息子が私に誕生日プレゼントを贈ってくれるというので、どの服を買ってもらおうか悩んでいたところです。やはり、少しでも若く見られたいので、何か年寄り向けの良い服はありませんか?」
「だから、ちが」
「それでしたら、こちらはどうでしょう?」
まさか、私と恋人が親子に見られるとは思いもしなかった。確かに年の差はあるけれど、親子にしては年が近い。そうなると、私が年齢より老けて見えるか、恋人が若く見えるか、どちらかということだ。いや、おそらく両方だ。昔から私が老けて見えて、恋人が若く見られがちだった。その年齢差が広がってしまったのだろう。寝違えた時も思ったが、50歳を越えてきて、身体の衰えを身に染みて感じていた。
「いえ、もう、結構です。別のお店で探します。行こう」
「ああ。失礼します」
店員に悪気があったわけではないだろう。見たところ、店員は20代前半の若者の男性だ。自分より上の年齢などわからないのだろう。しかし、その店員の言葉で私と恋人は傷ついた。せっかくの服の提案は、恋人に却下された。そして恋人は私の腕を取ると、足早にその服屋を去っていく。私も店員に会釈して転ばないように後を追った。
誕生日にサプライズでプレゼントを贈られるのも嬉しいが、一緒に選んで買ってもらうというのも自分の為にしてくれるという幸福感が得られて楽しかった。
しかし、今回ばかりは恋人がサプライズでプレゼントを渡してくれたらよかったなと思わざるを得なかった。
「僕とあなたではそこまで年齢が違うように見えますか?やっぱり、僕が幼いのが原因ですかね。これでも大人の男性を意識して服装とか髪型とか気を使っているんですよ。まったく無神経な店員でしたよね」
結局、別の店で、私は恋人にマフラーとハンカチを買ってもらった。そして、今はショッピングモール内の洋風レストランで昼食を取っている。昔はハンバーガーなどのジャンクフードも胸やけをおこさずおいしくいただけたが、年を取るとどうにも受け付けない。私の意思を尊重してか、一緒に買い物に出かけて昼食を取るときは某ハンバーガー店やラーメンなどの店には寄らなくなった。
今は洋風レストランで私はパスタ、恋人はピザを食べている。恋人は先ほどの店員の言葉をかなり気にしていた。確かに私の恋人は同年代の男性と比べると幼く見える。目が二重でぱっちりしているのと、色白で165cmほどの男性にしては小柄な身長のせいもあるだろう。
「仕方ないよ。若く見えるのはいいことだよ。私なんて」
「それにしても!」
恋人は私の言葉を遮り、ピザを私の目の前に突きつけてきた。なにやら、言いたいことがあるらしい。目を吊り上げて怒っていたが、私にはそれが微笑ましい光景だと思えてしまう。
「先ほどの店員の言葉を否定しないのはどうかと思います。僕たちは親子ではないです!れっきとした恋人ですよ。それなのに、店員の言葉に愛想笑いで対応して否定しないのはなぜですか?僕のこと、やっぱり子供だと思っていたんですか!」
「ちょ、ちょっと声が大きいよ。もう少し、静かに話そう」
突然、大声を出した恋人にとっさに周囲を見渡してしまう。幸い、お昼時で混雑していて、私たちの大声が目立つことはなかった。
「僕だって、年の差はそれなりに気にしています。貴方と対等でいられるように努力しているんです。それなのに、今日のあなたの態度はそれをないがしろにする最低な行動だった」
私に注意されて恋人は声を小さくしたが、怒りはまだ収まっていないようだ。
「それは、あの場を平和的に乗り切るために」
「僕はそんなの望んでいなかった。ただ、正直に話してほしかっただけなのに……」
恋人は怒っていたのが嘘のように今度は悲しそうな表情になる。恋人のくるくる変わる表情の豊かさに昔は惹かれたものだ。しかし、最近はどうだろうか。先ほどは微笑ましいと思えたが、今は。
「それは仕方ないよ。僕たちの関係は世間から見たら、まだまだマイノリティだ。大人だというのなら、わかるだろう。そもそも、私が年齢より老けて見えるのが原因かもしれない。私も努力しないといけないね」
恋人に対して頭に思い浮かんだ疑問はいったん忘れることにした。そして、恋人に話したとおり、若く見られるために努力することにした。手始めにジムに通うのはどうだろうか。
しかし、年月というものは残酷だ。付き合い始めの頃は気にならなかった年齢差が年を追うごとに気になるようになってきた。
「アイタタタタ」
「どうしたの?」
ある冬の寒い日の朝、私は目覚ましの音で目を覚ましたのだが、どうにも肩と首の様子がおかしい。いつものようにベッドから起き上がり、両腕を上げて伸びをしたところ、肩に激痛が走った。そして首を回してみると、そちらにも同じような痛みがあった。思わず出た悲鳴に、隣で寝ていた恋人が目をこすりながら不思議そうに首をかしげている。
「朝から大きい声出してごめんね。ちょっと寝違えたみたいで、肩と首が少し痛いだけだよ」
「ふうん。気をつけなよ。若くないんだから」
私の大声ですっかり目が覚めてしまったのか、恋人も私と同じように両腕をあげて伸びをする。そして、私を興味なさそうに一瞥して寝室から出ていった。
「そういえば、最近、一緒には寝ているけど、シていないな」
いつからだろう。付き合い始めの頃は、毎日のようにシていた愛を確かめ合う行為。年が経つにつれて、一週間、一か月と頻度がどんどん下がっていった。そして10年経った今では、2か月に一回あれば多いという頻度に落ち着いた。いつの間にか私が50歳、恋人が35歳となっていた。
「お父様へのプレゼントをお探しですか?」
寝違えた場所は1週間ほど傷みが続いた。仕事が忙しく、整体に行きたかったが結局行かずに、痛みに耐えながら仕事をするしかなかった。
そんななか、私の51歳の誕生日が近づいていた。恋人が誕生日プレゼントを選びたいと言ってきたので、週末、ショッピングモールに恋人と二人で訪れていた。ブランドの服屋で私と恋人が一緒に服を見ていたときのことだ。店員が悩んでいる私たちに声をかけてきたのだが、その声掛けがまさかの私が父親で、恋人が息子だと思っての言葉だった。
「アハハハハ。まあ、そんな感じです」
「親子に見えるなんて失礼ですね。僕たちはこいび」
「すみません。息子が私に誕生日プレゼントを贈ってくれるというので、どの服を買ってもらおうか悩んでいたところです。やはり、少しでも若く見られたいので、何か年寄り向けの良い服はありませんか?」
「だから、ちが」
「それでしたら、こちらはどうでしょう?」
まさか、私と恋人が親子に見られるとは思いもしなかった。確かに年の差はあるけれど、親子にしては年が近い。そうなると、私が年齢より老けて見えるか、恋人が若く見えるか、どちらかということだ。いや、おそらく両方だ。昔から私が老けて見えて、恋人が若く見られがちだった。その年齢差が広がってしまったのだろう。寝違えた時も思ったが、50歳を越えてきて、身体の衰えを身に染みて感じていた。
「いえ、もう、結構です。別のお店で探します。行こう」
「ああ。失礼します」
店員に悪気があったわけではないだろう。見たところ、店員は20代前半の若者の男性だ。自分より上の年齢などわからないのだろう。しかし、その店員の言葉で私と恋人は傷ついた。せっかくの服の提案は、恋人に却下された。そして恋人は私の腕を取ると、足早にその服屋を去っていく。私も店員に会釈して転ばないように後を追った。
誕生日にサプライズでプレゼントを贈られるのも嬉しいが、一緒に選んで買ってもらうというのも自分の為にしてくれるという幸福感が得られて楽しかった。
しかし、今回ばかりは恋人がサプライズでプレゼントを渡してくれたらよかったなと思わざるを得なかった。
「僕とあなたではそこまで年齢が違うように見えますか?やっぱり、僕が幼いのが原因ですかね。これでも大人の男性を意識して服装とか髪型とか気を使っているんですよ。まったく無神経な店員でしたよね」
結局、別の店で、私は恋人にマフラーとハンカチを買ってもらった。そして、今はショッピングモール内の洋風レストランで昼食を取っている。昔はハンバーガーなどのジャンクフードも胸やけをおこさずおいしくいただけたが、年を取るとどうにも受け付けない。私の意思を尊重してか、一緒に買い物に出かけて昼食を取るときは某ハンバーガー店やラーメンなどの店には寄らなくなった。
今は洋風レストランで私はパスタ、恋人はピザを食べている。恋人は先ほどの店員の言葉をかなり気にしていた。確かに私の恋人は同年代の男性と比べると幼く見える。目が二重でぱっちりしているのと、色白で165cmほどの男性にしては小柄な身長のせいもあるだろう。
「仕方ないよ。若く見えるのはいいことだよ。私なんて」
「それにしても!」
恋人は私の言葉を遮り、ピザを私の目の前に突きつけてきた。なにやら、言いたいことがあるらしい。目を吊り上げて怒っていたが、私にはそれが微笑ましい光景だと思えてしまう。
「先ほどの店員の言葉を否定しないのはどうかと思います。僕たちは親子ではないです!れっきとした恋人ですよ。それなのに、店員の言葉に愛想笑いで対応して否定しないのはなぜですか?僕のこと、やっぱり子供だと思っていたんですか!」
「ちょ、ちょっと声が大きいよ。もう少し、静かに話そう」
突然、大声を出した恋人にとっさに周囲を見渡してしまう。幸い、お昼時で混雑していて、私たちの大声が目立つことはなかった。
「僕だって、年の差はそれなりに気にしています。貴方と対等でいられるように努力しているんです。それなのに、今日のあなたの態度はそれをないがしろにする最低な行動だった」
私に注意されて恋人は声を小さくしたが、怒りはまだ収まっていないようだ。
「それは、あの場を平和的に乗り切るために」
「僕はそんなの望んでいなかった。ただ、正直に話してほしかっただけなのに……」
恋人は怒っていたのが嘘のように今度は悲しそうな表情になる。恋人のくるくる変わる表情の豊かさに昔は惹かれたものだ。しかし、最近はどうだろうか。先ほどは微笑ましいと思えたが、今は。
「それは仕方ないよ。僕たちの関係は世間から見たら、まだまだマイノリティだ。大人だというのなら、わかるだろう。そもそも、私が年齢より老けて見えるのが原因かもしれない。私も努力しないといけないね」
恋人に対して頭に思い浮かんだ疑問はいったん忘れることにした。そして、恋人に話したとおり、若く見られるために努力することにした。手始めにジムに通うのはどうだろうか。
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