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番外編【暑すぎる】5便利な世の中でも夏バテには勝てない
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「なにもやりたくない……」
「唐突ですね。またスランプにでも陥ったんですか?」
8月を過ぎても暑い日が続いている。こんな暑さの中、きちんと週5日会社に出勤して8時間労働をしている人間は、すごいとほめられるべきだ。国が報奨金を出しても良いくらいだ。
そんなこんなで日々の仕事だけで、私のライフは空っぽになってしまい、その他のことが出来ないほどの疲労を感じていた。これはきっと暑さのせいだ。いくら涼しい職場で働けるとはいえ、夏バテに違いない。
「都合の悪いことは、とりあえず暑さのせいにするつもりですか?」
今日の夕食はそうめんだ。最近はもっぱら冷たい料理が多い。冷やし中華に冷や奴、まったく食事するだけでも嫌になってくる。大鷹さんにあきれた視線を向けられるが、知ったことではない。やる気が出ないのは本当なのだから、仕方ないだろう。
「それで、あのへんな文章を投稿したんですか?」
質問が多い男である。そもそも、先ほどから私に質問しかしていない。もう、答えるのも面倒になってくる。そのうち、生きていること自体が面倒だと言い出しそうな自分が怖くなる。
「別におかしくはないでしょう?最近の流行りに乗ったまでです。とはいえ、さすがにそのまま載せて終わりだと、著作権に引っかかりますので、注釈は入れておきました」
大鷹さんが変だと言っているのは、私が最近投稿した短編の物語のことを言っている。最近のAI(人工知能)の発展はすさまじい。AIに小説を書いてもらったり、イラストを描いてもらったりできるようだ。コンテストに出す作品さえもAIを使っているなんて問題が出ているほどである。
さらには学生の宿題にも利用されている。大学生のレポートに小学生の読書感想文など、利用は幅広い。すべてAIに任せるのはまずいが今後、どうなるだろうか。
「注釈を入れればいいという問題ではない気がしますが」
「そうですか?でも、実際にAIを利用してみると、すごいとしか言いようがありませんね。やってほしいことを入力すると、文字が勝手に出てきて、あっという間に作品が完成するんですよ!」
ということで、私も世間の流行りに乗ってみたのである。コンテストに投稿するものでもないし、きちんと注釈にAIで作成と記載している。何がそんなに不満なのだろうか。
「別に不満というとわけではないですよ。ただ」
「ただ?」
大鷹さんが私に何か言いたそうにしている。いつもなら、失礼なことでもズバズバということが多いのに珍しい。もしかして、ようやく私に気を遣うことを覚えたのか。とはいえ、こんな中途半端な言葉では気になりすぎる。続きを促すと、大鷹さんは大きな溜息を吐いた。目を閉じて深呼吸する。
そこまで気持ちを落ち着かせなくてはならないほどのことだろうか。
「AIの方が常識的な物語で、つまらないです」
「ええと……」
「やはり、僕は紗々さんが一から紡ぐ物語が好きです。僕には物語を作る大変さはわかりません。でも、どれだけ遅くなっても、僕は紗々さん本人が書いたオリジナルな話が読みたいです!」
何を言い出すのかと思えば、作者冥利に尽きるお言葉である。とはいえ、この暑さでは何もやる気が起きないのは事実。目をキラキラさせて言われても、今の私にはプレッシャーでしかない。
「でも、今は本当にやる気がなくて……」
「確かに、僕もいまいち調子が良くありません。ですから」
短編でもいいです!
「できる限り、頑張ります」
まったく、そんなに期待されて悪い気分はしない。
結局、監禁系の話はプロット段階でまだ文章になっていない。「投稿した」というのは、嘘である。とりあえず、本当に監禁系の短編でも書いてみよう。
「あああ、早くこの暑さ、どうにかならないかなあ」
「本当ですよね」
この暑さの中、台風が日本に接近しているらしい。私の地域は直撃を免れそうだが、油断はできない。とはいえ、台風の進路など私には予測できない。とりあえず、大鷹さんの言う通り、短編からでもいいので手をつけようと思っている。
「もうすぐお盆休みがありますから、頑張りましょう!」
「いや、私たち金融機関にお盆なんてないからね」
大鷹さんもどうやら夏バテらしい。暑さでいかれた私たち夫婦は、お互いに顔を見合わせ、黙ってそうめんをすすった。
「唐突ですね。またスランプにでも陥ったんですか?」
8月を過ぎても暑い日が続いている。こんな暑さの中、きちんと週5日会社に出勤して8時間労働をしている人間は、すごいとほめられるべきだ。国が報奨金を出しても良いくらいだ。
そんなこんなで日々の仕事だけで、私のライフは空っぽになってしまい、その他のことが出来ないほどの疲労を感じていた。これはきっと暑さのせいだ。いくら涼しい職場で働けるとはいえ、夏バテに違いない。
「都合の悪いことは、とりあえず暑さのせいにするつもりですか?」
今日の夕食はそうめんだ。最近はもっぱら冷たい料理が多い。冷やし中華に冷や奴、まったく食事するだけでも嫌になってくる。大鷹さんにあきれた視線を向けられるが、知ったことではない。やる気が出ないのは本当なのだから、仕方ないだろう。
「それで、あのへんな文章を投稿したんですか?」
質問が多い男である。そもそも、先ほどから私に質問しかしていない。もう、答えるのも面倒になってくる。そのうち、生きていること自体が面倒だと言い出しそうな自分が怖くなる。
「別におかしくはないでしょう?最近の流行りに乗ったまでです。とはいえ、さすがにそのまま載せて終わりだと、著作権に引っかかりますので、注釈は入れておきました」
大鷹さんが変だと言っているのは、私が最近投稿した短編の物語のことを言っている。最近のAI(人工知能)の発展はすさまじい。AIに小説を書いてもらったり、イラストを描いてもらったりできるようだ。コンテストに出す作品さえもAIを使っているなんて問題が出ているほどである。
さらには学生の宿題にも利用されている。大学生のレポートに小学生の読書感想文など、利用は幅広い。すべてAIに任せるのはまずいが今後、どうなるだろうか。
「注釈を入れればいいという問題ではない気がしますが」
「そうですか?でも、実際にAIを利用してみると、すごいとしか言いようがありませんね。やってほしいことを入力すると、文字が勝手に出てきて、あっという間に作品が完成するんですよ!」
ということで、私も世間の流行りに乗ってみたのである。コンテストに投稿するものでもないし、きちんと注釈にAIで作成と記載している。何がそんなに不満なのだろうか。
「別に不満というとわけではないですよ。ただ」
「ただ?」
大鷹さんが私に何か言いたそうにしている。いつもなら、失礼なことでもズバズバということが多いのに珍しい。もしかして、ようやく私に気を遣うことを覚えたのか。とはいえ、こんな中途半端な言葉では気になりすぎる。続きを促すと、大鷹さんは大きな溜息を吐いた。目を閉じて深呼吸する。
そこまで気持ちを落ち着かせなくてはならないほどのことだろうか。
「AIの方が常識的な物語で、つまらないです」
「ええと……」
「やはり、僕は紗々さんが一から紡ぐ物語が好きです。僕には物語を作る大変さはわかりません。でも、どれだけ遅くなっても、僕は紗々さん本人が書いたオリジナルな話が読みたいです!」
何を言い出すのかと思えば、作者冥利に尽きるお言葉である。とはいえ、この暑さでは何もやる気が起きないのは事実。目をキラキラさせて言われても、今の私にはプレッシャーでしかない。
「でも、今は本当にやる気がなくて……」
「確かに、僕もいまいち調子が良くありません。ですから」
短編でもいいです!
「できる限り、頑張ります」
まったく、そんなに期待されて悪い気分はしない。
結局、監禁系の話はプロット段階でまだ文章になっていない。「投稿した」というのは、嘘である。とりあえず、本当に監禁系の短編でも書いてみよう。
「あああ、早くこの暑さ、どうにかならないかなあ」
「本当ですよね」
この暑さの中、台風が日本に接近しているらしい。私の地域は直撃を免れそうだが、油断はできない。とはいえ、台風の進路など私には予測できない。とりあえず、大鷹さんの言う通り、短編からでもいいので手をつけようと思っている。
「もうすぐお盆休みがありますから、頑張りましょう!」
「いや、私たち金融機関にお盆なんてないからね」
大鷹さんもどうやら夏バテらしい。暑さでいかれた私たち夫婦は、お互いに顔を見合わせ、黙ってそうめんをすすった。
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