結婚したくない腐女子が結婚しました

折原さゆみ

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番外編【突然の出来事】3皮膚科へレッツGo

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 次の日、私は特に体調に異常がなかったため、いつも通りに出社した。

「今日は皮膚科に行ってくるので、帰りは少し遅くなります」
「わかりました」

「では、行ってきます」
「いってらっしゃい」

 家を出る時間は私の方が早い。私は8時半から仕事がスタートするが、大鷹さんは9時からのようだ。私たちに甘々な朝を期待してはいけない。間違っても、行ってきますのキスなどありえない。まあ、創作では良くある朝の光景みたいだが、実際のところはどうなのか。友達がいない私には知りようがない。

 大鷹さんに挨拶して家を出る。部屋の窓から見てわかっていたが、今日も外は雲一つない快晴だ。太陽がさんさんと降り注ぎ、一歩外に踏み出しただけで部屋に戻りたくなってしまう。

「よし、今日も頑張るか」

 自分に気合を入れて、私は駐車場に向かった。歩くだけでじんわりと汗がにじみでるほどの暑さだが、お金の為には仕方ない。


「先輩、今日は帰りに予定はありますか?」

 昼休憩中、河合さんが話しかけてきた。辺りを見渡すが、休憩室には私と河合さんのみ。正直に皮膚科を受診する旨を伝える。

「皮膚科、ですか?虫にでも刺されました?」

「いや、虫ではない」

「最近、暑くて汗かきますからねえ。私も背中とかにあせもが出来てしまって」

「はあ」

「汗をかく夏は多いみたいですよ、あせも」

 はあと深いため息を吐く河合さんはどうやら、私の皮膚科に行く理由を勘違いしている。とはいえ、あせもについても、なんとなく思い当たる節はある。

「確かに背中にあせもとかできること、ある」

「ですよね、本当に夏って最悪!年々暑さは厳しくなる一方だし、雨も降るときはものすごい降るし……」

 その後、河合さんはいかに夏が嫌になるかを延々と語っていた。私は、河合さんに皮膚科に行く理由があせもではないと言い出すことが出来なかった。まあ、あせもでも別に構わないだろう。


 定時で仕事を終えた私は、急いで銀行を出て車で最寄りの皮膚科に向かう。既に何度かお世話になったことがある皮膚科で、仕事場からは15分ほどの距離にある。月曜日ということもあり、院内は混みあっていたが、受付でもらった用紙に症状を記入して、受付に渡して待合室のソファに腰掛ける。

 待合室にあるモニターが、医療脱毛についての情報を映しだしているのを横目に見ながら、私はスマホをいじって呼ばれるのを待つことにした。

 診察に呼ばれたのはそれから20分後くらいだった。名前を呼ばれた私が診察室に入ると、男性の医師がカルテに書かれた症状の確認をしてくる。

「昨日、寿司を食べてから首と腕と太ももに蕁麻疹が出たということですね」

「はい、寿司を外で食べてから4時間くらい経っていると思います」

「なるほど……」

 医師がパソコンに私からの情報をパソコンに入力していく。そして、蕁麻疹の出たという場所を診察する。首や腕を見られたが、やはりきれいに蕁麻疹の後は消えていた。

「アレルギーですかね?」

 念のため医師に確認してみる。勝手に自己判断をするのは良くないだろう。

「それは調べてみないと分からないですけど、その可能性はあります。調べてみましょうか?血液検査になり、別途費用は掛かりますが」

 アレルギーの検査は今までしたことがない。これを機に自分がアレルギーを持っているのか調べておくのもいいかもしれない。

「じゃあ、お願いします」

「わかりました。では、今回は抗ヒスタミン薬の飲み薬と保湿クリームを出しておきます。それと、血液検査については、また後日来ていただきたいので受付で予約をお願いします」

 皮膚科でお金を払って処方箋をもらう。そして、血液検査の予約をして近くの薬局に足を運ぶ。

「こちらの薬は一日一回、夕食前に一錠、塗り薬は一日二回、患部に塗ってください」

 薬局で薬剤師から薬の説明を受ける。症状は出ていなくても、薬は飲んだ方がいいらしい。仕方ないので、薬をもらった今夜から一か月ほど服用することにしよう。


(刺激の強いものは控えたほうがいいって、言われてしまった)

 帰りの車を運転している最中、医師に言われた言葉を思い出す。恐らくこの前の蕁麻疹は魚が原因だろうが、それ以外にも原因がある可能性も考えられる。

 刺激が強いものと言えば。

 真っ先に香辛料を使った料理が頭に浮かぶ。辛いものは好きでも嫌いでもないが、カレーは好きだ。とはいえ、少しの間控えたほうがいいだろう。

 まさか、寿司を食べただけでこんな大げさなことになるとは思いもしなかった。
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