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番外編【ファンが増えました】1私は無視ですか
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「毎日寒くて嫌になりますね。今日なんか、風が強すぎて前髪がなくなりました」
「それ、よくわかる。風が強くて寒い日とか最悪だよね」
「それに寒いと何が嫌かって、おしゃれな服が着れないことです」
朝、いつものように会社に着いて、更衣室で着替えをしていたら、後から河合さんがやってきた。河合さんと私は大抵、出勤時間が同じになるので、一緒に着替えをすることが多い。それは構わないのだが、彼女はひとりではなかった。
「先輩、おはようございます。梨々花ちゃんとは、ちょうど駐車場で一緒になって」
「おはようございます、河合さん、と、梨々花さん」
「江子先輩と同じ時間になるなんて、珍しいですよね?いつもこの時間に出社するんですか?」
「ほとんどこの時間かな。それより、先輩。あれからおおたかっちの機嫌はどうですか?」
「江子先輩、私、当間君に別れ話をしようと思うんですけど、いつがいいと思いますか?」
河合さんには朝の挨拶をされたのに、梨々花さんからは何もなかった。一度目があったのに、まるで私がいないかのように河合さんに話しかけている。先輩として少しイラっと来た。私は二人に挨拶をしている。仕方ないのでもう一度、梨々花さんに挨拶する。
「梨々花さん、オハヨウゴザイマス」
「あれ、倉敷さん、居たんですね?おはようございますう」
話し方もぶりっ子みたいな語尾が伸びた話し方で気色悪い。男性から見たら、あざと可愛いのかもしれないが、私には到底かわいいとは思えない。男性の心理は理解できない。それにしても、気付いていたのに、たった今気づきましたという顔はいただけない。
「梨々花ちゃん、先輩の方が年上で仕事歴も長いんだから、挨拶はキチンとしないとダメだよ。それで、先輩、おおたかっちは」
「すみません。江子先輩との会話が楽しくて、つい、忘れてしまいました。これからは気をつけます」
朝からイライラがたまっていく。河合さんだけなら、冗談交じりの軽い会話で大鷹さんとのことも気軽に話せるのに、梨々花さんがいると、どうにも話しにくい。そして、気になることがひとつ。
「江子先輩とは……」
私は先輩ではなく、ただのさん付けなのに、河合さんは名前に先輩付け。扱いが違い過ぎるのではないだろうか。
「江子先輩は江子先輩ですよ。あの日、先輩とはいろいろ話しまして。会社の先輩、人生の先輩として尊敬できるなって思って。だから、尊敬と親しみを込めて、江子先輩とお呼びしようかと」
「そんな大層な人じゃないけどな、私は。でも、親しくなったのは事実かな。河合先輩って呼んで欲しいと言ったんだけど、聞かなくて」
「はあ」
いったい、何をどうしたらそんなに一夜にして親しくなれるのだろうか。コミュ障の私には到底理解できない。
「そろそろ、始業時間ですね。朝礼に間に合わなくなるのは嫌ですから、サッサと着替えちゃいましょう!」
「そうだね」
「私は着替えを終えたので、先に出ますね」
二人は急いで荷物をロッカーに入れて着替え始める。私はすでに着替えをあらかた終えていたので、ロッカーに鍵をかけて先に更衣室を出ることにした。
「梨々花さんはいったい、何がしたいのか」
更衣室から出た私は、彼女が私を無視する理由を考える。
① 私が単純に嫌い
② 大鷹さんのことを声だけで好きになってしまい、その妻である私を亡き者にしたい(大鷹さんを寝取りたい)
③ 河合さんのことが好きで、仲良くしている私に嫉妬している
どの可能性もあり得る気がした。②に関しては、もしかしたら河合さんが私たちの許可を得ず、梨々花さんに大鷹さんの写真を見せているかもしれない。そうだとしたら、②の理由に説得力がでる。③は単純にBLだけでなく、百合にも興味があるからだ。リアル百合カップルを見られるのなら、それはそれで萌えの対象だ。
「当間と別れ話というのも気になるなあ」
さらっととんでもないことを彼女は口にしていた。あんなにラブラブな雰囲気を会社で出していたのに、いきなりすぎる発言だ。彼のどこが気に入らなくなったのか。いや、大鷹さんを見た後では、どんな男性でもかすんで見えるのかもしれない。
「では、朝礼を始めます。まず初めに今日の注意事項から。今日は……」
朝礼が始まってからも、私は梨々花さんのことを考えていた。その当人には仕事中に仕事以外のことを考えるなとか、私語を慎めとか言っていたことはすっかり忘れていた。
「また見てる……」
ぼそりとつぶやかれた梨々花さんの言葉は私の耳に届くことはなかった。私を見つめていた男性はその声に気まずくなり、私から視線を外すのだった。
「それ、よくわかる。風が強くて寒い日とか最悪だよね」
「それに寒いと何が嫌かって、おしゃれな服が着れないことです」
朝、いつものように会社に着いて、更衣室で着替えをしていたら、後から河合さんがやってきた。河合さんと私は大抵、出勤時間が同じになるので、一緒に着替えをすることが多い。それは構わないのだが、彼女はひとりではなかった。
「先輩、おはようございます。梨々花ちゃんとは、ちょうど駐車場で一緒になって」
「おはようございます、河合さん、と、梨々花さん」
「江子先輩と同じ時間になるなんて、珍しいですよね?いつもこの時間に出社するんですか?」
「ほとんどこの時間かな。それより、先輩。あれからおおたかっちの機嫌はどうですか?」
「江子先輩、私、当間君に別れ話をしようと思うんですけど、いつがいいと思いますか?」
河合さんには朝の挨拶をされたのに、梨々花さんからは何もなかった。一度目があったのに、まるで私がいないかのように河合さんに話しかけている。先輩として少しイラっと来た。私は二人に挨拶をしている。仕方ないのでもう一度、梨々花さんに挨拶する。
「梨々花さん、オハヨウゴザイマス」
「あれ、倉敷さん、居たんですね?おはようございますう」
話し方もぶりっ子みたいな語尾が伸びた話し方で気色悪い。男性から見たら、あざと可愛いのかもしれないが、私には到底かわいいとは思えない。男性の心理は理解できない。それにしても、気付いていたのに、たった今気づきましたという顔はいただけない。
「梨々花ちゃん、先輩の方が年上で仕事歴も長いんだから、挨拶はキチンとしないとダメだよ。それで、先輩、おおたかっちは」
「すみません。江子先輩との会話が楽しくて、つい、忘れてしまいました。これからは気をつけます」
朝からイライラがたまっていく。河合さんだけなら、冗談交じりの軽い会話で大鷹さんとのことも気軽に話せるのに、梨々花さんがいると、どうにも話しにくい。そして、気になることがひとつ。
「江子先輩とは……」
私は先輩ではなく、ただのさん付けなのに、河合さんは名前に先輩付け。扱いが違い過ぎるのではないだろうか。
「江子先輩は江子先輩ですよ。あの日、先輩とはいろいろ話しまして。会社の先輩、人生の先輩として尊敬できるなって思って。だから、尊敬と親しみを込めて、江子先輩とお呼びしようかと」
「そんな大層な人じゃないけどな、私は。でも、親しくなったのは事実かな。河合先輩って呼んで欲しいと言ったんだけど、聞かなくて」
「はあ」
いったい、何をどうしたらそんなに一夜にして親しくなれるのだろうか。コミュ障の私には到底理解できない。
「そろそろ、始業時間ですね。朝礼に間に合わなくなるのは嫌ですから、サッサと着替えちゃいましょう!」
「そうだね」
「私は着替えを終えたので、先に出ますね」
二人は急いで荷物をロッカーに入れて着替え始める。私はすでに着替えをあらかた終えていたので、ロッカーに鍵をかけて先に更衣室を出ることにした。
「梨々花さんはいったい、何がしたいのか」
更衣室から出た私は、彼女が私を無視する理由を考える。
① 私が単純に嫌い
② 大鷹さんのことを声だけで好きになってしまい、その妻である私を亡き者にしたい(大鷹さんを寝取りたい)
③ 河合さんのことが好きで、仲良くしている私に嫉妬している
どの可能性もあり得る気がした。②に関しては、もしかしたら河合さんが私たちの許可を得ず、梨々花さんに大鷹さんの写真を見せているかもしれない。そうだとしたら、②の理由に説得力がでる。③は単純にBLだけでなく、百合にも興味があるからだ。リアル百合カップルを見られるのなら、それはそれで萌えの対象だ。
「当間と別れ話というのも気になるなあ」
さらっととんでもないことを彼女は口にしていた。あんなにラブラブな雰囲気を会社で出していたのに、いきなりすぎる発言だ。彼のどこが気に入らなくなったのか。いや、大鷹さんを見た後では、どんな男性でもかすんで見えるのかもしれない。
「では、朝礼を始めます。まず初めに今日の注意事項から。今日は……」
朝礼が始まってからも、私は梨々花さんのことを考えていた。その当人には仕事中に仕事以外のことを考えるなとか、私語を慎めとか言っていたことはすっかり忘れていた。
「また見てる……」
ぼそりとつぶやかれた梨々花さんの言葉は私の耳に届くことはなかった。私を見つめていた男性はその声に気まずくなり、私から視線を外すのだった。
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