結婚したくない腐女子が結婚しました

番外編【親知らず抜歯】２痛すぎです……

　親知らず抜歯は、大鷹さんや河合さんに聞いた通りで痛かった。ネットでも多数書かれていたが、これはかなりつらかった。

　さすがに一日に二本も親知らずを抜くことはできず、日を分けて一本ずつの抜歯となった。とはいえ、上の親知らずは大した痛みを伴うことなく無事に抜くことができた。だから油断していたのだ。

「うううううう。こんなに痛いのなら、抜かない方が良かったかもしれ、ない、です」

　上の親知らずを抜いた一週間後、今度は下の親知らずを抜くことになった。しかし、ネットで見ると、下の親知らずは生え方によっては、歯医者で抜くことはできず、市民病院などの大きな病院で入院ということもあるらしい。私はそこまで神経に近いところにまでは達していなかったのか、歯医者で入院なしの日帰りで抜くことができると言われた。

　金曜日に有給を取り、いざ抜歯となった。麻酔をしていたので、歯科医師が歯をゴリゴリと削っているのはわかったが、大した痛みもなかった。ただ、大掛かりに削っていて自分の身に大変なことが起きていることは分かった。抜歯後はその部分を糸で縫って終了。受付で痛み止めや抗生物質の薬をもらい、次回の抜糸の予約を取って終了した。

　生え方によっては一時間以上もかかると言われていたが、大体一時間くらいで抜歯できた。

「大鷹さんも、こんなに痛かった、んですか？」

　抜歯後、麻酔が切れた直後から痛みがでてきて、すぐに痛み止めの薬を飲んだ。痛み止めにはひとつ問題があった。夕食後、私が大鷹さんに現状の痛さを報告すると、残念なお知らせのような返事があった。

「僕が抜いた時も痛かったですけど、痛み止めは何度も服用してもいいわけじゃないのがつらかったですね。これもネットで調べたら出てきますけど、痛み止めの薬は4～６時間ほどの効果はあるんですけど、連続服用はあまりしない方がいいみたいです」

「連続服用がダメ……」

　有給を取って抜いたのはいいが、午前中に抜いて麻酔が切れた直後からすぐに痛み出した。そこですかさず処方してもらった痛み止めを飲んだわけだが、それも４時間きっかりで効果が切れてしまった。その時は特に何も考えずにすぐに新たに痛み止めを飲んでしまったわけだが。

「私、これで一日に３回目の服用になるんですが、ああ、寝る前も含めると4回になりそうです」

「一応、一日に4回くらいはギリ大丈夫かとは思いますけど、紗々さんがもらった痛み止めってロキソニンですよね？確か、胃に副作用が出るので、明日からは4回はやめておいた方がいいかもですね」

　苦笑する大鷹さんだが、私にとっては死活問題だ。4～６時間で薬の効果が切れるなら、６時間と考えても、４回は飲みたいところだ。しかし、副作用の関係もあるので回数を減らせという。週明けは痛いのを我慢して仕事をしろということか。

「そんな嫌そうな顔をしないでください。今は痛いかもしれないですけど、大抵は２～３日もすれば、痛みは治まるみたい、ですよ。確か僕もそうだった……はず？」

　どうやら、心の中の本音が表情に出てしまっていたらしい。大鷹さんが子供を見るような生温かい目で見てくる。そしてなぜ、自分の事なのに語尾にはてながついた話し方をするのか。ますます不安になってくる。

　こうして、私の親知らず抜歯後生活が幕を開けた。


　抜歯後の週末はおとなしく家で過ごした。いや、そもそも私は基本的に土日引きこもりの陰キャなので、【安静に】いう言葉を常に実行しているわけである。

「痛い……」

　夜に痛み止めを飲み、就寝時は痛みで起きることなく普段通りの睡眠を取ることができた。しかし、起床して活動を始めると、じくじくと親知らず抜歯後の部分が痛み出す。仕方ないので、朝食後に一度、痛み止めを飲む。

　その後、薬の効果で昼前までは痛みが治まる。４～６時間という効果が切れるとまた痛み出す。とはいえ、４回はやめておいた方がいいという大鷹さんの助言を守り、昼食後の服用は我慢する。そして、何とか就寝前まで我慢して、寝る前に服用する。つまり、一日二回の服用に抑えたのだ。午後からは痛みに耐えるしかなかった。

　土曜日と同じように日曜日も過ぎていく。痛みは一向に治まる気配がなかった。

「顔は……。微妙に腫れてるな」

　下の親知らずを抜糸すると顔が腫れるとネットで見かけたが、その症状は私にも当てはまった。土曜日の朝、洗面所の鏡で自分の顔を確認する。見事にパンパンに腫れてみっともないということはなかったが、それでも普段よりもなんとなく抜歯した左側が腫れている気がした。