恋にもがく中学生

折原さゆみ

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1加藤紗那(かとうさな)②

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「ねえねえ、確か今日って、季節外れの転校生が来るって話だよね。担任のミーちゃんが言ってたよ」

「転校生ねえ。別に来ても来なくてもオレには関係ない」

「関係あるよ。かわいい女の子だったら、なお君うれしいでしょう。まあ、なお君に限って、かわいいってだけでなびくことはないと思うけど」

 一緒に登校している最中、私は昨日、担任のミーちゃんが話していたことを思い出した。私となお君は中学校に入って同じクラスとなった。小学一年生から四年生までは、同じクラスだった。しかし、小学五年生と六年生は違うクラスだったので、三年ぶりの同じクラスだ。

 中学校に入ってまで、男女が一緒に仲良く学校に登校している生徒はあまりいない。それでも、私はなお君と一緒に学校に登校したいし、これからも同じ学校である限り一緒に登校したい。なお君も同じ気持ちで会ってほしいが、こればかりは私にはどうしようもないことだ。とりあえず、今はまだ一緒に登校してくれるようだ。文句を言いながらも、一緒に通学路を歩いてくれる。


 それにしても、私がなお君に振った話題だが、本当に転校生がかわいくて、なお君のタイプの女子だったらどうしよう。もし、私よりかわいくて、なお君がその子に興味を示したら。   

 私の通っている中学校は転校生があまり来ない。さらに、二つの小学校が中学校に上がってくるだけなので、学年のほとんどは小学校からの知り合いだ。二つの小学校といっても、私の通っていた小学校が学年の四分の三以上を占めているので、ほとんどが知り合いというわけだ。だからこそ、クラスメイトも学年もみんな、私たちが幼馴染カップルとして付き合っていると公認してくれていた。誰も、なお君に告白はしない、暗黙の了解があった。

「私だけのなお君でいてね」

「なんだよ。急に」

「言ってみただけ。それより、本当に転校生が楽しみだね」

 私は自分の醜い顔を見られないように、なお君の少し先を歩いていく。今日来る転校生がかわいくありませんように。そう祈るばかりだった。


 ふと空を見上げると、どんよりとした曇り空。私の心の中を映し出したみたいな天気で、はあとため息をついてしまった。私は、その様子をじっと見つめるなお君の視線に気づくことはなかった。

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