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1加藤紗那(かとうさな)③
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「今日は、昨日の帰りの会でお話しした転校生を紹介します。」
担任のミーちゃんが朝の会で転校生を紹介した。ミーちゃんと呼んでいる理由は、背が小さくて、吊り上がったアーモンド形の瞳が猫に似ているからだ。本人も猫に似ているが、無類の猫好きでもあるらしい。家で猫を飼っているらしい。
ちなみに、季節外れと言っているが、今は六月最初の月曜日。転校生が来るなら、学年の変わる四月か、夏休み明けの九月とかが多いのかなと勝手に想像していた。まあ、いつ転校生が来ても、珍しいのは確かである。
教室は梅雨時ということもあり、ムシムシして、不快な暑さだった。天気のせいもあり、クラスメイトは、朝からだるそうに転校生が教室に入ってくるのを待つ。窓の外を見ると、朝は降っていなかった雨が降り始め、雨が地面をたたきつける音がしていた。
「じゃあ、小山内さん。教室に入ってきて。自己紹介をしてちょうだい」
『小山内詩衣(おさないしい)です。よろしくお願いします』
「かわいい……」
転校生がミーちゃんに呼ばれて教室に入ってきた。転校生は、私の祈りが通じず、とてもかわいらしかった。小学生と間違えられるくらいの低い身長に細い身体。とはいえ、ガリガリで貧相な感じにはならない。顔がふっくらとしているためだろう。瞳はぱっちりの二重。唇はつやつやと色づいている。女ながらに思わず見とれてしまった。声は外見に反して低い声だったのが意外性を出していて、魅力を倍増させていた。
「席は、一番後ろの席が空いているから、そこに座ってくれるかな」
「ハイ」
「加藤さん、あなたが隣の席になるから、小山内さんのことをよろしく頼みますよ」
「なっ!」
思わず声に出てしまった。季節外れの転校生ということで、転校生の席は、空いたスペースに急きょ作ることになった。たまたま、私の席は窓際の一番後ろに位置していた。私のクラスは奇数で、二人一組での机の並びではどうしても端数が出る。その端数の席が私の席だった。隣の席がちょうどよく空いているというわけだ。そこを転校生の席にしようということらしい。それ自体は、仕方ない。隣に相手がいないのは、私だけなのだから。転校生が隣に来るのは必然ともいえる。
私が声を出してしまったのには、もちろん理由がある。六月の初めに席替えをして、私の斜め前にはなお君が座っていたからだ。くじ引きで決めた席で、なお君と近くでラッキーと浮かれていた自分を殴りたい。この席を存外気に入っていた私は、先生の一言で、一気に気分が落ち込んでしまった。
だって、どう考えても、転校生は可愛らしい女子だった。女子として勝てる要素が私にあるだろうか。そんな転校生がなお君の近くに来てしまうのだ。嫌でも、なお君と転校生の接点が生まれてしまう。
「おまえ、まさかうちの学校に来るとは……」
私は、自分のことで頭がいっぱいで、ぼそりとつぶやいたなお君の言葉を聞いていなかった。
担任のミーちゃんが朝の会で転校生を紹介した。ミーちゃんと呼んでいる理由は、背が小さくて、吊り上がったアーモンド形の瞳が猫に似ているからだ。本人も猫に似ているが、無類の猫好きでもあるらしい。家で猫を飼っているらしい。
ちなみに、季節外れと言っているが、今は六月最初の月曜日。転校生が来るなら、学年の変わる四月か、夏休み明けの九月とかが多いのかなと勝手に想像していた。まあ、いつ転校生が来ても、珍しいのは確かである。
教室は梅雨時ということもあり、ムシムシして、不快な暑さだった。天気のせいもあり、クラスメイトは、朝からだるそうに転校生が教室に入ってくるのを待つ。窓の外を見ると、朝は降っていなかった雨が降り始め、雨が地面をたたきつける音がしていた。
「じゃあ、小山内さん。教室に入ってきて。自己紹介をしてちょうだい」
『小山内詩衣(おさないしい)です。よろしくお願いします』
「かわいい……」
転校生がミーちゃんに呼ばれて教室に入ってきた。転校生は、私の祈りが通じず、とてもかわいらしかった。小学生と間違えられるくらいの低い身長に細い身体。とはいえ、ガリガリで貧相な感じにはならない。顔がふっくらとしているためだろう。瞳はぱっちりの二重。唇はつやつやと色づいている。女ながらに思わず見とれてしまった。声は外見に反して低い声だったのが意外性を出していて、魅力を倍増させていた。
「席は、一番後ろの席が空いているから、そこに座ってくれるかな」
「ハイ」
「加藤さん、あなたが隣の席になるから、小山内さんのことをよろしく頼みますよ」
「なっ!」
思わず声に出てしまった。季節外れの転校生ということで、転校生の席は、空いたスペースに急きょ作ることになった。たまたま、私の席は窓際の一番後ろに位置していた。私のクラスは奇数で、二人一組での机の並びではどうしても端数が出る。その端数の席が私の席だった。隣の席がちょうどよく空いているというわけだ。そこを転校生の席にしようということらしい。それ自体は、仕方ない。隣に相手がいないのは、私だけなのだから。転校生が隣に来るのは必然ともいえる。
私が声を出してしまったのには、もちろん理由がある。六月の初めに席替えをして、私の斜め前にはなお君が座っていたからだ。くじ引きで決めた席で、なお君と近くでラッキーと浮かれていた自分を殴りたい。この席を存外気に入っていた私は、先生の一言で、一気に気分が落ち込んでしまった。
だって、どう考えても、転校生は可愛らしい女子だった。女子として勝てる要素が私にあるだろうか。そんな転校生がなお君の近くに来てしまうのだ。嫌でも、なお君と転校生の接点が生まれてしまう。
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