17 / 25
3小山内詩衣(おさないしい)~高橋澪(たかはしみお)④~
しおりを挟む
「詩衣って、もしかして、澪のことが好きなの?」
こっそりとしていたつもりだったが、すぐに澪のことを観察していることがばれてしまった。休み時間によく話すようになった、同じ陸上部のクラスメイトの女子、足助智樹(あすけともき)に指摘されてしまった。今は、部活が終わって、終わりの整理体操をしている最中だ。
「そ、そんな馬鹿な。だって、澪には好きな人がいるんだよ。私は別に好きでもないから。そう、好きな人がいるのを知って、好きになるバカいないでしょう!」
図星をつかれて、言い訳じみた否定をすると、意味深に笑われてしまった。
「まあ、あんなに性格よさそうな男子はなかなかいないからね。それにかっこいいし、女子に優しいし、陸上部で足も速い。モテるのは当たり前か。詩衣も乙女だったのねえ」
「なんで、みんなして私を改めて、『女子』って思うのかな。私は最初から女子だったでしょう」
どこかで同じようなセリフを言われた気がしたが、どこだったか。そんなに私は女子と思われない要素があるのだろうか。そんなことを言われて、ショックを受ける自分に苦笑する。思いのほか、私の心はその言葉に傷ついているようだ。
「別に女子だってことは知っているけど、なんていうか、雰囲気が女子らしくないというか。体型とか容姿とかは女子にしか見えないから安心してよ。むしろ、普通の女子よりかわいいよ」
私が傷ついていることに慌てた彼女があわてて弁明する。
「雰囲気が男みたいにさっぱりさばさばしているというか、女子特有のねちねち感がないから話しやすいというか。それに、一人でも平気みたいな感じとか。後は、男子に交じってもなぜか違和感がないところかな。ふつう、男子の集団に女子が混じったら違和感半端ないけど、それが詩衣にはないからかな?」
「それって、やっぱり、私は女子じゃないってことだよね。ぎゃっつ!」
「いやあ、それはない。背も男子みたいに高くないし、こんなに華奢だし、何より」
智樹は、陸上部で短距離を専門としている。背が高く、すらっとした体格は女子として羨ましい限りだ。髪も短くショートにしているが、それがとても似合っている。そんな彼女が私を突然、抱きしめてきた。ぎゅうぎゅう抱きしめてくるので、苦しいと訴えるとようやく解放してくれた。
「詩衣は、いい匂いがするから、女子だよ」
「そ、そんなことはないけど、女子だって何度も言っているから!」
「小山内に足助、体操をさぼるな!」
私たちのやり取り見ていた部活の顧問に叱られてしまった。
「アハハハハ。詩衣は面白いな」
部活が終わり、ジャージ姿から制服に着替えて帰る支度をしていると、笑い声が聞こえた。振り返ると、そこには澪がいた。
「あれは傑作だった。足助のいうことは、もっともだなと思ったよ。詩衣にならいつか、オレの秘密を話してもいいかもな」
「それって……」
澪が私に自分の秘密を教えるとはいったいどういうことだろう。それを聞こうと口を開いたところで、邪魔が入った。
「ええええ!詩衣に話すなら、私にも澪の秘密、教えてよ!大丈夫、私はこう見えて、口が堅いと評判だから!」
「やだよ。お前みたいな、女子代表みたいなやつに教えたら、オレの株が大暴落する」
私と澪の会話に入ってきた智樹に怒りを覚えた。澪は私に何を言いたかったのか、邪魔が入らなかったら聞けたかもしれないのに。急に胸がドキドキしてきた。二人は私のことを気にすることなく、喧嘩を始めていた。
澪の秘密とはいったい何だろうか。好きな人を特別に教えてくれるとでもいうのだろうか。考えても、澪の秘密が何なのか見当がつかなかった。
こっそりとしていたつもりだったが、すぐに澪のことを観察していることがばれてしまった。休み時間によく話すようになった、同じ陸上部のクラスメイトの女子、足助智樹(あすけともき)に指摘されてしまった。今は、部活が終わって、終わりの整理体操をしている最中だ。
「そ、そんな馬鹿な。だって、澪には好きな人がいるんだよ。私は別に好きでもないから。そう、好きな人がいるのを知って、好きになるバカいないでしょう!」
図星をつかれて、言い訳じみた否定をすると、意味深に笑われてしまった。
「まあ、あんなに性格よさそうな男子はなかなかいないからね。それにかっこいいし、女子に優しいし、陸上部で足も速い。モテるのは当たり前か。詩衣も乙女だったのねえ」
「なんで、みんなして私を改めて、『女子』って思うのかな。私は最初から女子だったでしょう」
どこかで同じようなセリフを言われた気がしたが、どこだったか。そんなに私は女子と思われない要素があるのだろうか。そんなことを言われて、ショックを受ける自分に苦笑する。思いのほか、私の心はその言葉に傷ついているようだ。
「別に女子だってことは知っているけど、なんていうか、雰囲気が女子らしくないというか。体型とか容姿とかは女子にしか見えないから安心してよ。むしろ、普通の女子よりかわいいよ」
私が傷ついていることに慌てた彼女があわてて弁明する。
「雰囲気が男みたいにさっぱりさばさばしているというか、女子特有のねちねち感がないから話しやすいというか。それに、一人でも平気みたいな感じとか。後は、男子に交じってもなぜか違和感がないところかな。ふつう、男子の集団に女子が混じったら違和感半端ないけど、それが詩衣にはないからかな?」
「それって、やっぱり、私は女子じゃないってことだよね。ぎゃっつ!」
「いやあ、それはない。背も男子みたいに高くないし、こんなに華奢だし、何より」
智樹は、陸上部で短距離を専門としている。背が高く、すらっとした体格は女子として羨ましい限りだ。髪も短くショートにしているが、それがとても似合っている。そんな彼女が私を突然、抱きしめてきた。ぎゅうぎゅう抱きしめてくるので、苦しいと訴えるとようやく解放してくれた。
「詩衣は、いい匂いがするから、女子だよ」
「そ、そんなことはないけど、女子だって何度も言っているから!」
「小山内に足助、体操をさぼるな!」
私たちのやり取り見ていた部活の顧問に叱られてしまった。
「アハハハハ。詩衣は面白いな」
部活が終わり、ジャージ姿から制服に着替えて帰る支度をしていると、笑い声が聞こえた。振り返ると、そこには澪がいた。
「あれは傑作だった。足助のいうことは、もっともだなと思ったよ。詩衣にならいつか、オレの秘密を話してもいいかもな」
「それって……」
澪が私に自分の秘密を教えるとはいったいどういうことだろう。それを聞こうと口を開いたところで、邪魔が入った。
「ええええ!詩衣に話すなら、私にも澪の秘密、教えてよ!大丈夫、私はこう見えて、口が堅いと評判だから!」
「やだよ。お前みたいな、女子代表みたいなやつに教えたら、オレの株が大暴落する」
私と澪の会話に入ってきた智樹に怒りを覚えた。澪は私に何を言いたかったのか、邪魔が入らなかったら聞けたかもしれないのに。急に胸がドキドキしてきた。二人は私のことを気にすることなく、喧嘩を始めていた。
澪の秘密とはいったい何だろうか。好きな人を特別に教えてくれるとでもいうのだろうか。考えても、澪の秘密が何なのか見当がつかなかった。
0
あなたにおすすめの小説
わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...
MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。
ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。
さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?
そのほかに外伝も綴りました。
二重のカーテン (スカートの下の黒い意志)
MisakiNonagase
青春
洗濯物の隙間に隠したのは、母としての祈りと、娘のプライド。
かつて、女子高生という生き物はもっと無防備で、自由だった。
44歳の主婦、愛子が朝のベランダで手にするのは、娘たちが毎日履き替える漆黒のオーバーパンツ、通称「黒パン」。それは、令和を生きる娘たちが自らの尊厳を守るために身に着ける、鉄壁の「鎧」だった。
小学校時代のママ友たちとのランチ会。そこで語られるのは、ブルセラショップに下着を売っていた奔放な50代、無防備なまま凛と歩くしかなかった40代、そして「見せないこと」に命を懸ける10代の、あまりに深い断絶。さらには、階段で石像のように固まる父、生徒の背後に立たないよう神経を削る教師……。
一枚の黒い布を通して浮き彫りになる、現代社会の歪さと、その根底にある不器用なまでの「優しさ」。
ベランダに干された黒いカーテンの向こう側に、あなたは何を見ますか?
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
久々に幼なじみの家に遊びに行ったら、寝ている間に…
しゅうじつ
BL
俺の隣の家に住んでいる有沢は幼なじみだ。
高校に入ってからは、学校で話したり遊んだりするくらいの仲だったが、今日数人の友達と彼の家に遊びに行くことになった。
数年ぶりの幼なじみの家を懐かしんでいる中、いつの間にか友人たちは帰っており、幼なじみと2人きりに。
そこで俺は彼の部屋であるものを見つけてしまい、部屋に来た有沢に咄嗟に寝たフリをするが…
母の下着 タンスと洗濯籠の秘密
MisakiNonagase
青春
この物語は、思春期という複雑で繊細な時期を生きる少年の内面と、彼を取り巻く家族の静かなる絆を描いた作品です。
颯真(そうま)という一人の高校生の、ある「秘密」を通して、私たちは成長の過程で誰もが抱くかもしれない戸惑い、罪悪感、そしてそれらを包み込む家族の無言の理解に触れます。
物語は、現在の颯真と恋人・彩花との関係から、中学時代にさかのぼる形で展開されます。そこで明らかになるのは、彼がかつて母親の下着に対して抱いた抑えがたい好奇心と、それに伴う一連の行為です。それは彼自身が「歪んだ」と感じる過去の断片であり、深い恥ずかしさと自己嫌悪を伴う記憶です。
しかし、この物語の核心は、単なる過去の告白にはありません。むしろ、その行為に「気づいていたはず」の母親が、なぜ一言も問い詰めず、誰にも告げず、ただ静かに見守り続けたのか——という問いにこそあります。そこには、親子という関係を超えた、深い人間理解と、言葉にされない優しさが横たわっています。
センシティブな題材を、露骨な描写や扇情的な表現に頼ることなく、あくまで颯真の内省的な視点から丁寧に紡ぎ出しています。読者は、主人公の痛みと恥ずかしさを共有しながら、同時に、彼を破綻から救った「沈黙の救済」の重みと温かさを感じ取ることでしょう。
これは、一つの過ちと、その赦しについての物語です。また、成長とは時に恥ずかしい過去を背負いながら、他者の無償の寛容さによって初めて前を向けるようになる過程であること、そして家族の愛が最も深く現れるのは、時に何も言わない瞬間であることを、静かにしかし確かに伝える物語です。
どうか、登場人物たちの静かなる心の襞に寄り添いながら、ページをめくってください。
還暦の性 若い彼との恋愛模様
MisakiNonagase
恋愛
還暦を迎えた和子。保持する資格の更新講習で二十代後半の青年、健太に出会った。何気なくてLINE交換してメッセージをやりとりするうちに、胸が高鳴りはじめ、長年忘れていた恋心に花が咲く。
そんな還暦女性と二十代の青年の恋模様。
その後、結婚、そして永遠の別れまでを描いたストーリーです。
全7話
17歳男子高生と32歳主婦の境界線
MisakiNonagase
恋愛
32歳の主婦・加恋。冷え切った家庭で孤独に苛まれる彼女を救い出したのは、ネットの向こう側にいた二十歳(はたち)と偽っていた17歳の少年・晴人だった。
「未成年との不倫」という、社会から断罪されるべき背徳。それでも二人は、震える手で未来への約束を交わす。少年が大学生になり、社会人となり、守られる存在から「守る男」へと成長していく中で、加恋は自らの手で「妻」という仮面を脱ぎ捨てていく…
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる