恋にもがく中学生

折原さゆみ

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3小山内詩衣(おさないしい)~高橋澪(たかはしみお)④~

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「詩衣って、もしかして、澪のことが好きなの?」

 こっそりとしていたつもりだったが、すぐに澪のことを観察していることがばれてしまった。休み時間によく話すようになった、同じ陸上部のクラスメイトの女子、足助智樹(あすけともき)に指摘されてしまった。今は、部活が終わって、終わりの整理体操をしている最中だ。

「そ、そんな馬鹿な。だって、澪には好きな人がいるんだよ。私は別に好きでもないから。そう、好きな人がいるのを知って、好きになるバカいないでしょう!」

 図星をつかれて、言い訳じみた否定をすると、意味深に笑われてしまった。

「まあ、あんなに性格よさそうな男子はなかなかいないからね。それにかっこいいし、女子に優しいし、陸上部で足も速い。モテるのは当たり前か。詩衣も乙女だったのねえ」

「なんで、みんなして私を改めて、『女子』って思うのかな。私は最初から女子だったでしょう」

 どこかで同じようなセリフを言われた気がしたが、どこだったか。そんなに私は女子と思われない要素があるのだろうか。そんなことを言われて、ショックを受ける自分に苦笑する。思いのほか、私の心はその言葉に傷ついているようだ。

「別に女子だってことは知っているけど、なんていうか、雰囲気が女子らしくないというか。体型とか容姿とかは女子にしか見えないから安心してよ。むしろ、普通の女子よりかわいいよ」

 私が傷ついていることに慌てた彼女があわてて弁明する。

「雰囲気が男みたいにさっぱりさばさばしているというか、女子特有のねちねち感がないから話しやすいというか。それに、一人でも平気みたいな感じとか。後は、男子に交じってもなぜか違和感がないところかな。ふつう、男子の集団に女子が混じったら違和感半端ないけど、それが詩衣にはないからかな?」

「それって、やっぱり、私は女子じゃないってことだよね。ぎゃっつ!」

「いやあ、それはない。背も男子みたいに高くないし、こんなに華奢だし、何より」

 智樹は、陸上部で短距離を専門としている。背が高く、すらっとした体格は女子として羨ましい限りだ。髪も短くショートにしているが、それがとても似合っている。そんな彼女が私を突然、抱きしめてきた。ぎゅうぎゅう抱きしめてくるので、苦しいと訴えるとようやく解放してくれた。

「詩衣は、いい匂いがするから、女子だよ」

「そ、そんなことはないけど、女子だって何度も言っているから!」



「小山内に足助、体操をさぼるな!」

 私たちのやり取り見ていた部活の顧問に叱られてしまった。

「アハハハハ。詩衣は面白いな」

 部活が終わり、ジャージ姿から制服に着替えて帰る支度をしていると、笑い声が聞こえた。振り返ると、そこには澪がいた。

「あれは傑作だった。足助のいうことは、もっともだなと思ったよ。詩衣にならいつか、オレの秘密を話してもいいかもな」

「それって……」

 澪が私に自分の秘密を教えるとはいったいどういうことだろう。それを聞こうと口を開いたところで、邪魔が入った。

「ええええ!詩衣に話すなら、私にも澪の秘密、教えてよ!大丈夫、私はこう見えて、口が堅いと評判だから!」

「やだよ。お前みたいな、女子代表みたいなやつに教えたら、オレの株が大暴落する」

 私と澪の会話に入ってきた智樹に怒りを覚えた。澪は私に何を言いたかったのか、邪魔が入らなかったら聞けたかもしれないのに。急に胸がドキドキしてきた。二人は私のことを気にすることなく、喧嘩を始めていた。

 澪の秘密とはいったい何だろうか。好きな人を特別に教えてくれるとでもいうのだろうか。考えても、澪の秘密が何なのか見当がつかなかった。
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