恋にもがく中学生

折原さゆみ

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3小山内詩衣(おさないしい)~三谷裕次郎(みたにゆうじろう)②~

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 話を聞ける機会はすぐにやってきた。たまたま、次郎と日直が一緒になった日があり、二人きりになれる時間があった。日直の仕事である学級日誌を書くために、教室で二人居残りをしている最中、ふと思いついたことのように尋ねてみた。

「次郎ってさ、好きな人はいるの?」

 いきなり核心についた質問をするのはどうかと思い、世間話という形の質問から始めることにした。それでも、突然の質問に次郎は戸惑っていた。

「珍しいな。小山内がそんな女子みたいなことを聞いてくるのは」

「私って、そんなに女子として見られていないのね……」

「やっぱりおれ以外もそう思っている奴がいるんだ」

「いやいや、そんなわけないこともないけど、まあ、次郎が三人目だよ。それは別の機会にじっくりと話したいところだけど、それで、好きな人はいるの?」

 このまま、私自身の女子についての話をしてもかまわないが、それは二人きりの時でなくてもできる話だ。強引に話を戻そうとしたら、次郎にバカにしたような笑い方をされた。


「ハハっ、本当に興味があるんだ。そりゃあ、俺だって男だから、好きな人くらいいるけど、それを小山内に教える筋合いはないな。教えて欲しいなら、小山内も教えてくれないと。こんな質問するってことは、こういう話に興味があるって以外にも、理由があるんだろう?もしかして、好きな人って俺のことだったりして」

 いつもはおちゃらけキャラのはずの次郎が、やけに突っ込んだことを言ってくるが気にしないことにした。よって、私自身が次郎の質問に答える義理はない。

「残念だけど、私の好きな人は次郎ではないから。教えてくれないなら、それでもいいけど。ただ、単純にモテル男にも、好きな人で苦労していることがあるのかなと思っただけ。それで、話は変わるけど、モテると言えば、次郎と同じくらい澪ってモテるよね。澪のことは同じ男として、どう思う?やっぱり、ライバルみたいな存在?」

 強引すぎるが、話題を転換しようと試みる。

「なんでここで澪の話が出るんだよ。今の感じだと、小山内が俺のことが好きで、好きな人が誰のことを好きか確認する流れみたいな感じだよな。それで、そのままお互いの好きな人を教えあう、みたいな。まあ、俺も小山内のことは嫌いじゃないけど、恋愛感情としての好きはないから、この流れになったら、気まずいだけだけど」

「そんなことはどうでもいいから、答えてよ。澪のことはどう思う?」

 私たちは今、机に向かい合って、学級日誌を見つめている。私が学級日誌に文字を書き、その内容を次郎が確認していく。今日の分の日誌の中身は少しずつ埋まっていく。そろそろ、学級日誌の記入事項がすべて埋まる頃だ。すべて埋まって、一緒に職員室に提出し終わるまでが、澪のことを聞けるタイムリミットだ。

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