22 / 25
3小山内詩衣(おさないしい)②
しおりを挟む
「じゃあな、部活でまた、ということにならないんだな。早く治せよ。お前がいないと結構寂しいからな。ああ、オレだけじゃないからな、それに、先輩に迷惑かけないためにということもある」
夏休み前最後の登校日、帰りの会が終わり、教室から出ようとしていたところで、澪に話しかけられた。澪にそんなことを言われるとは思ってもいなかったので、つい澪に聞いてしまった。
「澪も私が居なくて寂しいと思っているってことだよね?」
「当たり前だろう。お前は、女子の中でも話しやすいからな」
女子の中でも、とはどう意味に解釈するべきだろうか。
「べちゃ」
澪と別れ、クラスメイトとも別れ、一人で帰宅途中、夏休みの計画を頭の中で練っていたら、嫌な音が足元から聞こえた。あわてて靴底を見ると、そこには誰かが道路にポイ捨てしたガムがべっとりと張り付いていた。
「最悪だ」
どうにも、幸先がよろしくないと思わせる出来事が相次いでいる。このまま何事もなく夏休みが始まって、そのまますぎて欲しいという私の願いは、見事に玉砕することに気付くのは、私が部活に行き始めた一週間後のことだった。
病院から、一週間したら部活に参加していいと言われたので、きっちり一週間後、部活のために学校へ行くと、陸上部の雰囲気が何だかおかしかった。何がおかしいと言われても説明しにくい。ただ、いつも通りの部活はこんな感じだ、と無理に明るく楽しそうにふるまっているような感じがした。
「おはよう」
とりあえず、クラスメイトで同じ陸上部の智樹に声をかけると、違和感の正体を説明してくれた。
「おはよう。ああ、今、部活内の雰囲気が悪い気がするけど、気にしないで。なんせ、あの澪が、好きな人に告白して、振られたらしいからね。いま、部活内はその話題で微妙な雰囲気というわけだ。ちなみに告白を実行したのは、昨日らしい」
澪に好きな人がいるのは知っていたが、告白していたとは衝撃だった。なんと答えていいかわからず、あいまいに話を聞いていたら、笑って慰めてくれた。
「ああ、詩衣もあいつのこと好きだったっけ?」
「私もということは……」
「知らなかったの?澪って結構女子にモテるでしょう。でも、本人にその気がないから、誰のものにならないという意味で、女子からのバランスが取れていたみたい。でも、澪が好きな人に告白したことで、そのバランスが崩れた。今は、澪がだれに告白したのか、みんなで推測している最中だよ」
「でも、なんで澪が告白したのをみんなが知っているの?澪がみんなに言いふらすとは思えないけど……。」
「それがさあ、意外にも本人の口から出たんだよ。本人が軽いノリで、好きな人に告白したけど、振られたってさ。軽いノリで言ったにしては、ずいぶんと暗い表情だったのが気になったから、みんな気になるし、心配で雰囲気が悪くなっていったわけ。」
その日は、澪が誰に告白したのか気になって気になって、部活に集中できず、部員の役に立つことができていなかった。マネージャー失格である。話題の中心である澪は、すでに告白から立ち直ったのだろうか。黙々と練習メニューをこなす様子は、いつもと変わらないように見えた。
そんな中、ふと校庭を見渡すと、隣では野球部が練習をしていた。たまたま私が視線を向けた先に次郎がいた。次郎と目が遭ったが、なぜか向こうから視線をそらされてしまった。さて、次郎に嫌われることをした記憶がない。
夏休み前最後の登校日、帰りの会が終わり、教室から出ようとしていたところで、澪に話しかけられた。澪にそんなことを言われるとは思ってもいなかったので、つい澪に聞いてしまった。
「澪も私が居なくて寂しいと思っているってことだよね?」
「当たり前だろう。お前は、女子の中でも話しやすいからな」
女子の中でも、とはどう意味に解釈するべきだろうか。
「べちゃ」
澪と別れ、クラスメイトとも別れ、一人で帰宅途中、夏休みの計画を頭の中で練っていたら、嫌な音が足元から聞こえた。あわてて靴底を見ると、そこには誰かが道路にポイ捨てしたガムがべっとりと張り付いていた。
「最悪だ」
どうにも、幸先がよろしくないと思わせる出来事が相次いでいる。このまま何事もなく夏休みが始まって、そのまますぎて欲しいという私の願いは、見事に玉砕することに気付くのは、私が部活に行き始めた一週間後のことだった。
病院から、一週間したら部活に参加していいと言われたので、きっちり一週間後、部活のために学校へ行くと、陸上部の雰囲気が何だかおかしかった。何がおかしいと言われても説明しにくい。ただ、いつも通りの部活はこんな感じだ、と無理に明るく楽しそうにふるまっているような感じがした。
「おはよう」
とりあえず、クラスメイトで同じ陸上部の智樹に声をかけると、違和感の正体を説明してくれた。
「おはよう。ああ、今、部活内の雰囲気が悪い気がするけど、気にしないで。なんせ、あの澪が、好きな人に告白して、振られたらしいからね。いま、部活内はその話題で微妙な雰囲気というわけだ。ちなみに告白を実行したのは、昨日らしい」
澪に好きな人がいるのは知っていたが、告白していたとは衝撃だった。なんと答えていいかわからず、あいまいに話を聞いていたら、笑って慰めてくれた。
「ああ、詩衣もあいつのこと好きだったっけ?」
「私もということは……」
「知らなかったの?澪って結構女子にモテるでしょう。でも、本人にその気がないから、誰のものにならないという意味で、女子からのバランスが取れていたみたい。でも、澪が好きな人に告白したことで、そのバランスが崩れた。今は、澪がだれに告白したのか、みんなで推測している最中だよ」
「でも、なんで澪が告白したのをみんなが知っているの?澪がみんなに言いふらすとは思えないけど……。」
「それがさあ、意外にも本人の口から出たんだよ。本人が軽いノリで、好きな人に告白したけど、振られたってさ。軽いノリで言ったにしては、ずいぶんと暗い表情だったのが気になったから、みんな気になるし、心配で雰囲気が悪くなっていったわけ。」
その日は、澪が誰に告白したのか気になって気になって、部活に集中できず、部員の役に立つことができていなかった。マネージャー失格である。話題の中心である澪は、すでに告白から立ち直ったのだろうか。黙々と練習メニューをこなす様子は、いつもと変わらないように見えた。
そんな中、ふと校庭を見渡すと、隣では野球部が練習をしていた。たまたま私が視線を向けた先に次郎がいた。次郎と目が遭ったが、なぜか向こうから視線をそらされてしまった。さて、次郎に嫌われることをした記憶がない。
0
あなたにおすすめの小説
あるフィギュアスケーターの性事情
蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。
しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。
何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。
この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。
そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。
この物語はフィクションです。
実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。
ちょっと大人な体験談はこちらです
神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な体験談です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
久々に幼なじみの家に遊びに行ったら、寝ている間に…
しゅうじつ
BL
俺の隣の家に住んでいる有沢は幼なじみだ。
高校に入ってからは、学校で話したり遊んだりするくらいの仲だったが、今日数人の友達と彼の家に遊びに行くことになった。
数年ぶりの幼なじみの家を懐かしんでいる中、いつの間にか友人たちは帰っており、幼なじみと2人きりに。
そこで俺は彼の部屋であるものを見つけてしまい、部屋に来た有沢に咄嗟に寝たフリをするが…
壊れていく音を聞きながら
夢窓(ゆめまど)
恋愛
結婚してまだ一か月。
妻の留守中、夫婦の家に突然やってきた母と姉と姪
何気ない日常のひと幕が、
思いもよらない“ひび”を生んでいく。
母と嫁、そしてその狭間で揺れる息子。
誰も気づきがないまま、
家族のかたちが静かに崩れていく――。
壊れていく音を聞きながら、
それでも誰かを思うことはできるのか。
思い出さなければ良かったのに
田沢みん
恋愛
「お前の29歳の誕生日には絶対に帰って来るから」そう言い残して3年後、彼は私の誕生日に帰って来た。
大事なことを忘れたまま。
*本編完結済。不定期で番外編を更新中です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる