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39お願い
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光詩と夜奏楽はよく似た兄妹である。色素の薄い髪と瞳に色白の肌。ともに細身の体型ではたから見たら大抵は兄妹だと思われる。しかし、たまにそうは思わない人たちもいた。
『体育祭の準備で、よ゛そら゛とい゛っしょに゛いるところをみて、兄妹だと思わなかった人がいたんだ。それ゛で勘違いしたやつがいたのかもしれない』
きっと、そのことを夜奏楽は知っていたに違いない。妹は昔から察しが良すぎて困る。自分たち兄妹が恋人同士だと勘違いしていたことを利用して、兄と親友の仲を深めようとしたのだろう。この場にいない、妹のどや顔が頭に浮かぶ。
『そう゛いえば、よ゛そら゛は』
ここでようやく、光詩は妹の夜奏楽の安否を心配していたことを思い出す。アリスと両想いだったことを確認できたことに感謝だが、それで妹に何かあっては意味がない。
【ふふふふ】
『ど、どう゛した?』
一気に現実に引き戻された光詩はアリスの場違いに笑いに驚いた。
【大丈夫だと思いますよ。何なら、今から夜奏楽ちゃんに電話でもしてみますか?】
どうやら、光詩が妹の心配をしていることが杞憂だと言いたいらしい。
【夜奏楽ちゃんには感謝しなくてはいけません。一度だけでなく、二度も助けてもらったんですから】
笑っている顔に悲壮感はない。ただただ妹に完敗して、悔しそうで、それなのに嬉しそうな複雑な表情をしていた。
「アリスじゃん。ドウシタノ?私のことなら心配らないって」
【光詩先輩が夜奏楽ちゃんのことが心配だって言っていたから】
「ふうん。その声の感じだと、お兄ちゃんとはちゃんと話し合えたみたいだね」
「夜奏楽、次はあんたの番だけど、何歌うの?」
「歌わないのなら、私が歌うけど」
【お゛まえ、何処にいるんだ?】
アリスは妹のことが心配な光詩のために、すぐに自分の携帯で夜奏楽に電話をかけた。すぐに電話はつながった。電話越しに聞こえる会話や音楽が流れているところから、夜奏楽はカラオケにいることがわかった。とはいえ、きちんと妹の口からどこで何をしているのか聞いておきたい。
「はあ。お兄ちゃんは心配性だなあ。まあ、その様子だとアリスとはうまく行ったみたいだから、そろそろ家に帰ることにするわ」
電話したのはアリスだが、夜奏楽は一方的に電話を切ってしまった。
【夜奏楽ちゃんらしいですね。言葉通り、すぐに家に帰ってきますよ】
電話の切れた携帯を床に置かれたテーブルに置くと、アリスは正面に座る光詩に視線を合わせる。何を言われるのだろうかと身構えてしまう。先ほどの告白で、自分たちは両想いになったのだ。とてもうれしいことなのに、同時にアリスとの接し方に戸惑ってしまう。
【ねえ、先輩。先輩とこうして両想いになれたんですから。一つ、お願いをしてもいいですか?】
可愛らしい声と、クールな見た目で光詩に詰め寄ってきた少女は、とても魅力的で何も言われなくても、すぐにでも願いを聞き入れてしまいそうな、魔性の女だと光詩は思った。
「ただいまあ」
夜奏楽はそれから20分ほどで家に帰ってきた。アリスはその後、夜奏楽にあうことなく家を出ていった。
『お゛かえ゛り』
両親は帰宅していないため、光詩が一人で夜奏楽を玄関で出迎える。夜奏楽は光詩一人なことに不審な目を向けていたが、勝手に納得して自分の部屋がある二階に向かっていく。
(アリスがいないことを聞かないんだな)
妹のことなので、アリスが自分が帰る前に光詩の家からいなくなることまで想定済みだったのだろうか。
「ねえ、お兄ちゃん。私に何か、言うことがあるんじゃないの?」
考え事をしていたら、反応に遅れてしまった。
「とはいえ、今日はもう疲れたし、おいおい、二人のことは聞くことにするよ。体育祭が楽しみだねえ」
光詩の戸惑うような反応に気をしたのか、夜奏楽はそのまま上機嫌で二階に上がっていった。
『体育祭の準備で、よ゛そら゛とい゛っしょに゛いるところをみて、兄妹だと思わなかった人がいたんだ。それ゛で勘違いしたやつがいたのかもしれない』
きっと、そのことを夜奏楽は知っていたに違いない。妹は昔から察しが良すぎて困る。自分たち兄妹が恋人同士だと勘違いしていたことを利用して、兄と親友の仲を深めようとしたのだろう。この場にいない、妹のどや顔が頭に浮かぶ。
『そう゛いえば、よ゛そら゛は』
ここでようやく、光詩は妹の夜奏楽の安否を心配していたことを思い出す。アリスと両想いだったことを確認できたことに感謝だが、それで妹に何かあっては意味がない。
【ふふふふ】
『ど、どう゛した?』
一気に現実に引き戻された光詩はアリスの場違いに笑いに驚いた。
【大丈夫だと思いますよ。何なら、今から夜奏楽ちゃんに電話でもしてみますか?】
どうやら、光詩が妹の心配をしていることが杞憂だと言いたいらしい。
【夜奏楽ちゃんには感謝しなくてはいけません。一度だけでなく、二度も助けてもらったんですから】
笑っている顔に悲壮感はない。ただただ妹に完敗して、悔しそうで、それなのに嬉しそうな複雑な表情をしていた。
「アリスじゃん。ドウシタノ?私のことなら心配らないって」
【光詩先輩が夜奏楽ちゃんのことが心配だって言っていたから】
「ふうん。その声の感じだと、お兄ちゃんとはちゃんと話し合えたみたいだね」
「夜奏楽、次はあんたの番だけど、何歌うの?」
「歌わないのなら、私が歌うけど」
【お゛まえ、何処にいるんだ?】
アリスは妹のことが心配な光詩のために、すぐに自分の携帯で夜奏楽に電話をかけた。すぐに電話はつながった。電話越しに聞こえる会話や音楽が流れているところから、夜奏楽はカラオケにいることがわかった。とはいえ、きちんと妹の口からどこで何をしているのか聞いておきたい。
「はあ。お兄ちゃんは心配性だなあ。まあ、その様子だとアリスとはうまく行ったみたいだから、そろそろ家に帰ることにするわ」
電話したのはアリスだが、夜奏楽は一方的に電話を切ってしまった。
【夜奏楽ちゃんらしいですね。言葉通り、すぐに家に帰ってきますよ】
電話の切れた携帯を床に置かれたテーブルに置くと、アリスは正面に座る光詩に視線を合わせる。何を言われるのだろうかと身構えてしまう。先ほどの告白で、自分たちは両想いになったのだ。とてもうれしいことなのに、同時にアリスとの接し方に戸惑ってしまう。
【ねえ、先輩。先輩とこうして両想いになれたんですから。一つ、お願いをしてもいいですか?】
可愛らしい声と、クールな見た目で光詩に詰め寄ってきた少女は、とても魅力的で何も言われなくても、すぐにでも願いを聞き入れてしまいそうな、魔性の女だと光詩は思った。
「ただいまあ」
夜奏楽はそれから20分ほどで家に帰ってきた。アリスはその後、夜奏楽にあうことなく家を出ていった。
『お゛かえ゛り』
両親は帰宅していないため、光詩が一人で夜奏楽を玄関で出迎える。夜奏楽は光詩一人なことに不審な目を向けていたが、勝手に納得して自分の部屋がある二階に向かっていく。
(アリスがいないことを聞かないんだな)
妹のことなので、アリスが自分が帰る前に光詩の家からいなくなることまで想定済みだったのだろうか。
「ねえ、お兄ちゃん。私に何か、言うことがあるんじゃないの?」
考え事をしていたら、反応に遅れてしまった。
「とはいえ、今日はもう疲れたし、おいおい、二人のことは聞くことにするよ。体育祭が楽しみだねえ」
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